気管支喘息治療薬一覧
参考:難治性喘息診断と治療の手引き2019
吸入ステロイド
●JGLでは、保険承認の最高用量を「高用量」、その半量を「中用量」、その半量を「低用量」としている。
●GINAでは最高用量の上限が設定されていない。
BDP:キュバール(エアゾール;大日本;50、100)
成人は100/回・1日2回 max 800/日
FP:フルタイド(ディスカス、エアゾール;GSK;100、200)
成人は100/回・1日2回 max 800/日
CIC:オルベスコ(インヘラー;帝人;50、100、200)
成人は100-400/回・1日1回 max 800/日
MF:アズマネックス(ツイストヘラー;MSD;100、200)
成人は100/回・1日2回 max 800/日
BUD:パルミコート(タービュヘイラー;アストラ;100、200)
成人は100-400/回・1日2回 max 1600/日
FF:アニュイティ(エリプタ;GSK;100、200)
成人は100-200/回・1日2回 max 200/回
吸入ステロイド+LABA
FP/SM:アドエア(ディスカス、エアゾール;GSK)
BUD/FM:シムビコート(タービュヘイラー;アストラ)
FP/FM:フルティフォーム(エアゾール;杏林)
FF/VI:レルベア(エリプタ;GSK)
※COPDでの適応
アドエア ディスカス250を1回1吸入・1日2回、エアゾール125を1回2吸入・1日2回
シムビコート 1回2吸入・1日2回
レルベア 100を1回1吸入・1日1回
フルティフォームは適応なし
テオフィリン徐放製剤
・機序:非特異的PDE阻害作用、ヒストン脱アセチル化酵素2活性化作用、炎症細胞の浸潤抑制など。
・LABAより劣る、LTRAと同等かやや劣る、LABAに上乗せ効果がある。
ロイコトリエン拮抗薬
・中等症~重症喘息でLTRAを加えると増悪が抑制され、呼吸機能・コントロールが改善したする報告がある。
・ICSに追加する薬剤としてLABAのほうがLTRAよりもよい。
・アレルギー性鼻炎合併、運動誘発、アスピリン喘息では特に有効。
抗コリン薬
・中高用量ICS/LABAへのチオトロピウム上乗せの有効性報告あり(NEJM 2012;367:1198)
・当初は重症喘息に対する併用であったが、現在ではステップ2以降で使用可能。
経口ステロイド
・JGL2018ではステップ4の治療。
・原則はPSL 0.5mg/kg前後を1週間以内。連用する場合はPSL 5mg/d程度。GINA2017ではPSL 7.5mg/d以下を勧めている。
抗体製剤
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商品名 |
標的 |
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その他の適応 |
オマリズマブ |
ゾレア |
IgE |
体重と血清IgE |
特発性慢性蕁麻疹 |
メポリズマブ |
ヌーカラ |
IL-5 |
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EGPA |
ベンラリズマブ |
ファセンラ |
IL-5受容体α鎖 |
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Reslizumab |
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IL-5 |
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Tralokinumab |
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IL-13 |
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Dupilumab |
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IL-4受容体α鎖 |
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Tezepelumab |
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TSLP |
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TSLP:thymic stromal lymphopoietin(胸腺間質性リンパ球新生因子)
ランナーと貧血
長距離を専門とする中高生に鉄製剤を静注する。
いまだにやらせている指導者がいるとはにわかに信じられません。投与に応じる医者も同罪。怒りを覚えます。
さて、昔からある古いテーマのようですが、pubmedで「runner, anemia」で検索しても30ほどしか出ず、「athlete, anemia」でも300ちょっと。
トップレベルのアスリートでは、貧血は減っている。
日本人のユニバーシアード参加者のデータを検討した報告がありました*1。
ユニバーシアードは2年毎に開かれる、大学生の世界大会。日本からの選手は全員がpre-participation medical examinations (PPMEs: 参加前メディカルチェック)を受けており、これには貧血治療歴、身体所見、心電図、胸部X線、尿検査、血液検査などが含まれます。
1977年から2011年まで調べたところ、貧血は13.3% (1977年)から1.7% (2011年)と減っており、厚生労働省のデータから抽出した一般人の貧血有病率と比較しても、近年は有意に低いという結果。女性だけで比較しても同様の傾向です。医学的サポートが重要、というよりも、しっかりとモニタリングすれば貧血はなくせるということでしょう。
貧血の原因*2
まずはpseudoanemiaと言われる現象があるようです。pseudo-は「うその、偽の」、anemiaは「貧血」ですから「偽貧血」と呼んでもよいのでしょうか。あまり聞いたことはない。
持久力を鍛えるようなトレーニングをすると、血液(正確には血漿)が増え、その分相対的にヘモグロビン濃度が下がる(=貧血)。この「偽貧血」自体はパフォーマンスに影響しないようです。4ヶ月のトレーニングプログラムで、ヘモグロビン濃度が5%低下、血漿量が10%上昇したとするデータがあります。
真の貧血で重要なのは、一つは溶血、もう一つが慢性出血などによる鉄欠乏性貧血です。
溶血とは赤血球が破壊されること。様々な疾患で引き起こされますが、ランナーではfoot strike、つまり走行時の足への衝撃が原因となります。
ホントかよ、という気もしますが、実際溶血を示すハプトグロビンの低下や、網状赤血球の増加が観察されたり、足への衝撃を和らげると溶血しにくくなったりするようです。
他の競技ではあまり見られないとか。バレーボールではあるらしい。手でボールを打つから。ホントか?
出血について。
長距離走を行うと消化管への血流が相対的に減少し「虚血」の状態になりますが、これが消化管粘膜からの出血の原因となります。実際、虚血性腸炎などの疾患では下血のように大量に出血することがありますが、ランニング(に限らず長時間の運動)ではこれに近い状況になると。ホントかな……
尿や汗から鉄そのものも失われます。
無理をすると血尿が出ると言われますが、腎臓が正常な人の場合、出ているのは血液(赤血球)ではありません。ヘモグロビンやミオグロビンといった色素成分なのですが、これらが鉄を含みます。運動しすぎると筋肉が破壊されますので、成分が流出する。肉眼的に赤くなくても、尿へ失われる鉄は増えているものと考えられます。
どのくらいというのはなかなか測定できないでしょうが、放射性同位元素の鉄を用いた昔の実験では、50%の放射性鉄が失われる時間が、ランナーでは1000日、非ランナーでは2100日だったとか。
ランナーはどのくらい鉄を摂取すればよいのか?
溶血は止めようがありませんが、失われた鉄は補いたいものです。
教科書的には、鉄は1日1mgが自然に失われ、摂取した分の10%が吸収されるとありますので、非ランナーで1日10mgが推奨量です。月経のある女性ではこれより多く14mgという数値があります。
ランナーでは最低でもこれの1.5-2倍くらいは求められそうです。
日本人の鉄摂取が少ないというのは有名ですが、「日本人の食事摂取基準(2015年版)」では、鉄の推奨量は18-29歳男性で7.0mg、女性で10.5mg、30-49歳男性で7.5mg、女性10.5mgなどとなっています。上に挙げた教科書の値よりかなり少ないですが、ふつうの日本人の食生活では、この推奨量にさえ届いていないのだろうと推測されます……
つまり、ランナーには、ふだんの食事+10mgくらいの鉄が必要になってくるはず。
手頃なサプリメントや栄養強化食品の表示を見てみると、この10mgの鉄というのが相当多いことがわかります。
摂りすぎはよくないのでは?
鉄が体内に蓄積する疾患をヘモクロマトーシス、鉄過剰症などと言います。遺伝性のものもありますが、多いのは血液疾患で大量・長期間輸血を受けた方にみられるものです。
健康な人が、鉄の経口摂取により過剰症になることはまずないでしょう。吸収しきれないからです。「日本人の食事摂取基準」にも鉄の「耐用上限量」は50mgです。
鉄剤の静注? 普通の人は絶対にやってはいけません。論外です。
ヘモグロビンとフェリチンの定期測定を!
体内にはトータル3000-5000mg程度の鉄が存在し、約3分の2が赤血球(ヘモグロビン)に、残りは肝臓・脾臓・筋肉・骨髄などに分布します。
このうち肝・脾・骨髄にはフェリチンという物質として蓄えられ、体から鉄が減ってくると、ヘモグロビンが減る(=貧血)前にフェリチンが減ってきます。フェリチンは血液検査で簡単に調べられますが、通常の健康診断などでは測定されません。
貧血ではないけれどフェリチンが減っている状態のときに鉄を補充したら、だるさなどの症状が改善したという報告もあります。熱心なランナーは、ヘモグロビンおよびフェリチンを定期的に測るくらいのことが必要でしょう。
ステロイド維持治療が難しければ、必要時シムビコートでもいいかもしれない
原著
Controlled Trial of Budesonide-Formoterol as Needed for Mild Asthma.
(New Engl J Med 2019, May 19)
Novel START trial
気管支喘息に対する治療では吸入ステロイドの定期吸入が必須。しかし「薬を続けるのはちょっと」というのは仕方ない。
そんな人にシムビコートをレリーバーとして使用するのはありなのかもしれない。
★それまでSABAしか使われていなかったmildな気管支喘息患者。1年以内の入院歴、重喫煙者などは除外。
★SABA単独、ステロイド維持+SABA、as-neededのシムビコートで1:1:1にランダム割付。オープンラベル。
★12ヶ月間観察。ただし重症発作があったり治療変更が必要であったりすれば中断。
★as-neededシムビコート群では、SABA群よりも喘息発作が減った(0.195件/人年vs 0.400件/人年;RR 0.49)。ステロイド維持群とは有意差がなかった。
★as-neededシムビコート群は、SABA群だけでなくステロイド維持群と比べても、重症発作が減った。
★ステロイド維持群のほうが、as-neededシムビコート群に比べて、喘息症状は抑制されていた。
●気管支喘息に対して吸入ステロイド薬を投与することで発作のリスクを減らせるが、推奨通り処方されていない場合が多い。医療者側のreluctance、患者側のreluctance(症状がmildあるいはinfrequent)がある。
●「吸入ステロイド+即効性β2アゴニスト」(シムビコート)をレリーバーとしてas-neededに使用するという方法がある。
●維持治療(maintenance)を行われていないmildな喘息に対して、budesonide-formoterol(シムビコート)をレリーバーとして使用する治療法のランダム化二重盲検・プラセボ比較試験が2つ行われた(SYGMA trial 1 and 2:NEJM 2018;378:1865、NEJM 2018;378:1877)。これらの試験は非常に限定的な対象について行われており、外的妥当性が低いとの指摘があった。すなわち、二重盲検のために1日2回吸入(プラセボでも)を12ヶ月求められたこと、低用量の吸入ステロイドやロイコトリエン拮抗薬使用者はこれらを中断させられたこと、SABAを週に2回以上必要な患者が対象であったこと、などである。
●今回の試験では、それまでSABAしか使用していなかったmildな喘息患者について、as-neededのシムビコートが、as-neededのSABA、およびステロイド定期吸入+as-needed SABAよりも、喘息増悪抑制効果が高いかどうか検証した。
【方法】
●ニュージーランド、UK、イタリア、オーストラリアの16のprimary/secondary施設。
●52週、ランダム化、オープンラベル、パラレル。アストラゼネカの資金提供あり。
●試験の詳細なプロトコルは公表済み(Eur Respir J 2016;47:981)。
患者
●18-75歳、「医師から喘息と診断された」と自己申告すれば対象となる。
●過去3ヶ月に「喘息」に対してSABAのみが処方されており、過去4週間にSABAを計2回以上、かつ1日あたり平均2回以下使用している。ただし過去12ヶ月に重症発作がある患者ではSABAの最低使用量制限はなし。
●除外:過去12ヶ月に喘息で入院、喫煙歴(自己申告で20 pack-yearsの者。または10 pack-yearsの喫煙歴のあるcurrent/previous smokerで、呼吸器症状のある40歳以上の者)など。
割付・概略
●1:1:1で割付。国別では均等になるように。
・SABA群(albuterol group):albuterol(Ventolin, GSK; pressurized metered-dose inhaler)をas neededで使用。100 µgを2回/有症状時に。
・ステロイド維持群(budesonide maintenance group):budesonide(Pulmicort Turbuhaler)を1回200 µg・1日2回で、albuterolをas neededで。
・as-neededシムビコート群(budesonide formoterol group):シムビコートをbudesonide 200 µg + formoterol 6 µgを1回、as neededで。
●患者教育:発作時の対応、受診した際や全身ステロイド投与を受けた際に記録を残すこと、など。
●inhalerには電子的なモニター機能が搭載された。
●7回visitあり。Weeks 0(ランダム化)、6、12、22、32、42、52。
●1回の重症発作(severe exacerbation;ATS/ERSの基準あり―3日以上の全身ステロイド、入院、全身ステロイド投与を行った救急外来受診)、お互い7日以上あいた3回以上の発作、治療変更が必要なunstable asthmaの場合は中断。これらがなければ、全期間中フォロー。
アウトカム
●primary outcome:発作の頻度(annualized rate of asthma exacerbations per patient)。発作の定義は、緊急に医療機関受診が必要な喘息症状の悪化、全身ステロイド投与が必要、高用量のβ2アゴニストが必要(24時間以内にalbuterol 16吸入またはシムビコート8吸入)
●secondary outcome:発作回数、初回発作までの時間、発作の回数(=患者数)、試験中断者数、ACQ-5のスコア(5つの質問に0(よい)~6(悪い)の7段階のスコアをつける)、FEV1、呼気NO、budesonide使用量、βアゴニスト使用量、経口ステロイド投与量、副作用。
統計
●省略
【結果】
●2016年3月から2017年8月に675人がランダム化された。患者背景はTable 1。
●過去12ヶ月に重症発作があったのは7.3%。54%は過去4週間にSABAを週2回以下だけ使用していた。
アウトカム
●発作頻度は、シムビコート群vs SABA群でシムビコート群が優れていた(1患者・年あたり、0.195件 vs 0.400件;RR 0.49 [95%CI 0.33-0.72], p<0.001)。シムビコート群vs ステロイド維持群では有意差なし(0.195件vs 0.175件;RR 1.12 [95%CI 0.70-1.79], p=0.65)。Fig 1B
●この傾向は、試験が中断された患者について補正しても同様であった。
●シムビコード群はSABA群に比較して、初回発作までの時間が優れており、ステロイド維持群と比較して有意差がなかった。Fig 2A
●重症発作は、シムビコート群がSABA群にもステロイド維持群にも勝っていた。
●試験が中断された患者数は、シムビ群はSABA群より優れ、ステロイド維持群とは有意差がなかった。
●ACQ5スコアは、全てのタイムポイントで、シムビコート群はSABA群よりは低く、ステロイド維持群よりは高かった。
●FEV1は、全てのタイムポイントで、シムビコート群はSABA群ともステロイド維持群とも有意差がなかった。
●12ヶ月時点でのFENOは、シムビコート群はSABA群よりは低く、ステロイド維持群よりは高かった。
●budesonide使用量(mean±SD)はシムビコート群で107±109 µg/day、ステロイド維持群で222±113 µg/day。Table 2
●B群での1日2回吸入のアドヒアランスは56%。
●副作用はTable 3。
Discussion
結果まとめ
●as-neededシムビコート群では、SABA群よりも喘息発作が減った。
●as-neededシムビコート群は、SABA群だけでなくステロイド維持群と比べても、重症発作が減った。
●ステロイド維持群のほうが、as-neededシムビコート群に比べて、喘息症状は抑制されていた。
●SYGMA trialよりも、実際の臨床に近い状況で行われた。
●SYGMAではas-needed SABAよりもas-neededシムビコートが喘息発作を64%減らしていたが、本試験でもおおむね同じような結果であった。
●一方、SYGMAでは、as-neededシムビコートとbudesonide maintenanceとの差はみられなかったが、本試験では重症発作を減らした。これは、オープンラベルで行ったメリットかもしれない。SYGMAではas-needed群でもプラセボのinhalerが使用された。
●今回、as-needed SABA群とbudesonide maintenance群との間で重症発作に差がなかった。これは、as-needed SABA群で「重症発作以外の理由で中断された患者が多かった」ためかもしれない。
limitation
●実際の臨床よりも通院頻度は多いかもしれない。
●電子的にモニターされることを患者が知っている。
●secondary outcomeの結果は補正されておらず、治療法の違いによらないかもしれない。
脊椎カリエスの特徴・診断
・慢性の炎症により骨・歯牙が腐った状態をカリエス(独語Karies、英語caries)と呼ぶ。虫歯もカリエス。
・日本では伝統的に結核性の骨病変を指してカリエスと呼んでおり、かつては脊椎カリエスのほか、肋骨のカリエス、骨盤のカリエスなどよく見られたはずだが、21世紀ともなるとレアな疾患である。
・骨病変の中で脊椎炎は最も頻度が高く、単にカリエスと言えば結核性脊椎炎のこと。
Spinal tuberculosis
Bone Joint J 2018;100-B:425
・脊椎結核は紀元前3300年のエジプトのミイラでも見られ、古くから存在していたことが確認されている。
・1779年、Percival Pottが脊椎結核に伴う対麻痺paraplegiaと脊柱後弯kyphosisの症例を記述したため、Pott’s diseaseと呼ばれることがある。
Epidemiology
- 脊椎結核はa diseases of povertyとも呼ばれ、途上国、特に貧困層の若年成人や小児によくみられる。HIV合併も重要な因子である。
- 結核の10%に肺外結核が見られるが、このうち半分が筋骨格系の結核である。脊椎は筋骨格系の中で最も侵されやすく、結核全体の1-2%に合併するとするデータがある。
- 前脊髄動脈・後脊髄動脈から流れ込む血流が密な血管網を形成し、各椎骨の軟骨下組織に還流する。血流がリッチなため脊椎には血行播種が起きやすい。
- discを保ったまま椎体が破壊されることで後弯を呈しやすい。後弯に加えて、硬膜外の膿および椎間板と骨のdebrisによって脊髄が圧迫されることで神経症状を呈する。
- up to dateより:椎体・椎間板炎は椎骨の前側の椎間関節から発症してくる。前縦靭帯の裏から椎骨に炎症が波及する。隣り合った椎骨が炎症を起こすと、間の椎間板にも炎症が及ぶ。結核では、化膿性感染よりもこの経過が遅い。
- 病勢がコントロールできても、後弯の進展によるlate-onsetの対麻痺をきたすことがある。後弯を早期から認識・是正しなければならない。
Clinical features
- 進行は緩徐で4-11ヶ月程度かけて悪化する。医療アクセスの悪い途上国などでは治療の遅れが起きやすい。
- 体重減少、倦怠感、発熱、盗汗は頻度が高い。局所の疼痛は軽いものから激烈なものまで様々である。
- 後弯が激しくなるとgibbus(亀背、突背、傴僂)を呈する。
- 傍脊柱膿瘍が顕著な場合もある。
- 頸部の脊椎結核では嗄声、呼吸不全、嚥下障害などを呈するかもしれない。
- 神経障害はcommonで、23-76%の症例で呈するというデータがある。頸椎・胸椎の病変では起きやすい。腰椎でも起きるが、腰椎では痛みが前面に出ることが多い。
Imaging
- 傍脊柱膿瘍が最も早期からみられる画像所見である。腰椎では腸腰筋膿瘍があるかもしれない。椎間板の高さ・形状が保たれやすい点が化膿性感染との主な違いである。
- 侵された椎骨の数は、将来的な後弯の程度と関連するが、過小評価されやすい。
- 石灰化は結核らしい所見。
- MRIは骨・神経病変を描出しやすい。全脊椎MRIではnon-contiguous(連続していない)病変を検出できる。16%の患者では非連続性病変が存在する。
- PETは病変の検索、経過観察、生検部位の決定などに有用かもしれない。
Diagnosis
- 血沈は平均70 s
- WBCはusually normal。リンパ球増多が多い。
- 膿や組織の採取が重要。
- 膿の抗酸菌塗抹の感度は38%。
- 組織における肉芽種、巨細胞、抗酸菌の所見は診断につながるが、サルコイドーシスや猫ひっかき病で似た所見を呈することがある。組織診の感度は60%程度で可能。
- PCRは感度80-90%というデータがある。
以下省略
ウイルスがコントロールされたHIV患者からHIVは伝播しない「U=U」
U=U taking off in 2017
Lancet HIV 2017;4(11):e475
Editorial
●ウイルス学的にコントロールされたHIV感染患者は、性的接触によって他人にHIVを感染させることはないらしい。
●2016年に「the Undetectable=Untranmissable (U=U) slogan」がPrevention Access Campaignから提唱され、2017年にはアメリカCDCもこれにならっている。
●HIV-positive患者と、HIV-negativeのパートナーとの間の伝播に関する3つの大規模な試験が行われている。
HPTN052 interim analysis
(N Engl J Med 2011;365:493)
・9ヶ国、1763のserodiscordantのカップル。54%はアフリカ。患者の50%が男性。
・CD4 350-550の患者を、early群(すぐにART開始)とdelayed群(CD4が2回連続250未満またはHIVに関する症状出現後(AIDS発症など)にART開始)にランダムに分けた。Primary prevention end pointを非患者への伝播、primary clinical end pointを肺結核発症・重症細菌感染症・WHO stage 4 event・死亡のいずれかとした。
・2011年2月時点で、非患者のうち39人がHIV-1に感染していた(発生率1.2/100人年)。このうち28人がパートナー(患者)からの伝播と考えられ(発生率0.9/100人年)、27人がdelayed群、1人がearly群であった。Early群ではclinical end point発生も少なかった(HR 0.59; 95% CI, 0.40-0.88)。
・試験打ち切り。
HPTN052 final results
(N Engl J Med 2016;375:830)
・HPTN052試験の中間解析後に、delayed群でもARTが開始され、2015年まで追跡された。
・非患者のうち計78人がHIV-positiveとなった。このうち遺伝子を解析できた72人において、46人がパートナーからの伝播と考えられ、3人がearly群、43人がdelayed群であった。46人のうち8人はパートナーがARTを開始してからの感染であった。この8人の中で、4人はパートナーのウイルス学的抑制の前に伝播が起きており、4人はパートナーのARTがウイルス学的抑制を達成できなかったカップルであった。
・パートナーからの伝播でなかった26人では、14人がearly群、12人がdelayed群だった。
PARTNER study
(JAMA 2016;316:171)
・前向き観察研究。14ヶ国75施設。HIV患者側はART中で、HIV-1 RNA<200コピー、コンドーム不使用の性交渉を行っていると自己申告したカップル1166組を登録した。888組(548がヘテロ、340がMSM)が1238 couple-years観察された(観察期間中央値1.3年)。
・パートナー以外とのコンドームなしセックスを申告した非患者側はMSMで108人(33%)、ヘテロで21人(4%)。観察期間中、カップルは中央値37回/年のコンドームなしセックスを申告し、MSMカップルで約22000セックス、ヘテロカップルで36000セックスが解析対象となった。
・11人の非患者がHIV-positiveとなったが(10人がMSM、1人はヘテロ;8人はパートナー以外とのコンドームなしセックスを申告)、遺伝子学的にパートナーからの伝播と考えられた例はゼロだった。95%信頼区間の上限は0.30/100 couple-yearsとなった。コンドームなし肛門性交のみで計算すると95%信頼区間の上限は0.71/100 couple-yearsとなった
Opposites Attract study
(2017年国際エイズ学会で報告)
(Lancet HIV 2018;5(8):e438)
・観察コホート研究。オーストラリアの13施設、ブラジルの1施設、タイの1施設からserodiscordantの男性ホモセクシャルカップルをリクルート。試験参加時にカップルには教育が行われた。Viral suppressionはウイルス量が200コピー/mLと定義。自己申告のコンドームなし肛門性交(condomless anal intercourse(CLAI))、dailyのPrEPは行われていない状況での伝播について検討した。
・358組のうち343組が1回以上フォローアップされ、計588.4 couple-years観察された。258人(75%)のHIV患者側で一貫してウイルス量が抑制され、115人(34%)のHIV非患者側がdaily PrEPを行った。258組(75%)がフォローアップ期間中のカップル間でのCLAIを申告し、計16800回CLAIが行われた。
・結果、HIV非患者のうち3人が新たにHIV陽性となったが、遺伝子学的にはリンクしていなかった。CLAIがあり、HIV患者側のウイルス量が抑制され、HIV非患者側でPrEPが行われていなかったもののみ検討すると、計232.2 couple-yearsあり、12447回CLAIが行われた。95%信頼区間の上限は1.59/100 couple-yearsと計算された。