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医師の自学自習のためのブログ

骨髄炎

 

骨髄炎 Hospitalist 2017;5(3):509

総論

・骨の破壊と腐骨形成を特徴とする。特異的な所見に乏しい。腰痛や不明熱として現れる。

・急性骨髄炎は腐骨(sequestra)形成前。腐骨は椎体炎では遅く、複雑骨折に合併するものでは早く形成する。腐骨が形成されれば慢性骨髄炎で、骨柩(involucrum)を形成したり骨皮質外に感染が達すると瘻孔(sinus tract)がみられる。

・血行性に起きれば単独菌、外傷・手術からの播種や隣接した軟部組織からの感染は複数菌感染しやすい。

・血行性は小児に多い。小児では四肢に多い。成人は椎体に多い。成人では褥瘡、人工関節からの波及もみられる。

・症状:症状はいろいろ。骨盤や椎体では疼痛以外に所見が乏しい。急性骨髄炎では数日間の疼痛を訴える。局所所見以外に発熱、悪寒みられる。亜急性では不明熱でみられるかもしれない。慢性では瘻孔も。脊椎炎では神経所見に注意する。膀胱直腸障害、馬尾症候群など。

 

・画像:椎体炎、椎間板炎ではMRI推奨。MRIが撮れなければ、ガリウムシンチ、Tcシンチ、CT、PETも。以下、感度/特異度(%)。

X線14-54/68-70、CT67/50、MRI78-90/60-90、PET96/91、Tcシンチ82/25

ただしPETは研究によりいろいろ。

・単純写真で異常がみられるのは骨無機質が50%減ってから。超音波は液体貯留の評価にも。

 

・原因菌:50%で血液培養陽性。血液培養が陰性なら骨生検すべき。

 ・真菌・抗酸菌は培養されるのが遅い。時間かける。

 ・末梢動脈疾患の評価。動脈閉塞があれば抗菌薬は届かない。

 ・生検時は病理も。蜂窩織炎、Charcot関節、壊死、痛風、骨折、腫瘍評価を。

 ・生検前に抗菌薬投与してもよいか。48-72時間は避けるとも言われるが、骨髄内には梗塞・虚血があり、抗菌薬投与があってもよいとも言われる。可能であれば避ける。

・病原微生物

 50%以上 黄色ブドウ球菌、CNS

 25%以上 溶血性レンサ球菌、腸球菌(尿路も)、Pseudomonas、Enterobacter、大腸菌(尿路、糖尿病足)、Proteus、Serratia(薬物注射、脊柱手術、免疫不全)、嫌気性菌(Finegoldia、Clostridium、Bacteroides fragilis group)、結核

 まれ MAC(HIV、糖尿病)、Candida、Aspergillus(免疫不全)、Mycoplasma、Brucella(渡航、生乳・動物)、Salmonella(サラセミア、鎌状)、放線菌(下顎骨)

・炎症反応(CRP、血沈)は感度90%以上。繰り返し陰性なら除外できるだろう。

 

・治療:安定していれば抗菌薬は待つ。

 ・投与期間 最低6週間

 ・外科治療 十分なドレナージ、デブリ、アンプタ。十分ドレナージできれば必ずしも6週間不要。軟部組織感染として扱う。

 

MRSA感染症の治療ガイドライン 骨・関節感染症

MRSA感染症の治療ガイドライン 2013

・腐骨以外はどの抗MRSA薬も骨組織への移行は期待できる

MRSA薬同士の治療成績比較は現時点で難しい

MRSA以外での投与期間は4-6週だが、MRSAではそれより長期間必要かもしれない。

RFP、STは感受性よい。RFP、CLDM、MINOは移行性もよい。内服薬として使いやすい。RFP、STを単独では使用しない。

・抗菌薬TDMガイドラインでは、

 ・VCMトラフは15-20μg/mL

 ・TEICトラフは20-30

 ・LZD 600mg q12h

 ・DAP 6mg/kg qd