心房細動合併冠動脈疾患の治療―エビデンスまとめ
冠動脈疾患合併の際の注意点
安田聡・浅海泰栄
日本内科学会雑誌 2019;108:242
特集 Common diseaseとしての心房細動
【エビデンスまとめ】
WOEST trial(Lancet 2013;381:1107)
・2008-2011年、抗凝固薬を必要とするPCI症例573例(AFは69%)
・ワルファリン+クロピドグレル75mg vs ワルファリン+クロピドグレル+アスピリン80mg
・金属ステントでは1ヶ月、DESでは12ヶ月フォロー
・primary outcomeの出血イベント(大出血+小出血)は19.4% vs 44.4%と倍も違った。大出血だけでは差なし。
・総死亡率も2.5% vs 6.4% (p=0.027)。←出血のせいか
→2剤でよいのでは??
PIONEER AF-PCI trial(NEJM 2016;375:2423)
・次の3群に割付し1年フォロー
・リバロキサバン15mg(低用量)+P2Y12阻害薬 12ヶ月継続
・リバロキサバン2.5mg 1日2回(超低用量)+ DAPT DAPTは1, 6, 12ヶ月
・ワルファリン+ DAPT DAPTは1, 6, 12ヶ月
・大小出血はリバロキサバンを含む群がワルファリンを含む群より少なかった。
・efficacy (心臓血管死、心筋梗塞、ステント血栓、脳梗塞)は有意差なし
RE-DUAL PCI trial(NEJM 2017;377:1513)
・次の3群に割付し平均14ヶ月フォロー
・ダビガトラン150mg2T + PSY12阻害薬
・ダビガトラン110mg2T + P2Y12阻害薬
・ワルファリン + DAPT ベアメタルなら1ヶ月、DESなら3ヶ月でアスピリンoff
・出血イベントはダビガトランを含む群でワルファリンを含む群より少なかった。
・血栓イベントを含むエンドポイントは、2剤が3剤に非劣性
→新規抗凝固薬はさらによい。
【心房細動合併冠動脈疾患における現時点でのコンセンサス】
・まずCHA2DS2-VAScで男性1点以上・女性2点以上で禁忌がなければ原則抗凝固療法
・出血リスクをHAS-BLEDスコアで評価。
・triple therapyは行うにしても短期間で。
・欧州ガイドライン(Eur Heart J 2018)では、虚血リスクが高ければ6ヶ月、出血リスクが高ければ0または1ヶ月
・米国ガイドライン(Circulation 2018;138:527)では、"default"で2剤(抗血小板薬はアスピリンかP2Y12。できればP2Y12。P2Y12の中ではクロピドグレルが望ましい)。抗血栓リスクかつ低出血リスクでのみ1ヶ月のtriple therapyを考慮。
【PCI施行1年以降】
・欧・米のガイドラインでは、1年経過したのちは抗凝固薬単独でいいとしている。
・現実には2剤がよく用いられている。