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医師の自学自習のためのブログ

診断書のハンコについて


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医者が書く書類でハンコを押すものとして「診断書」「処方箋」があります。シャチハタや、ハンコのついたボールペンを携帯している医者がほとんどかと思います。

しかし時にシャチハタを忘れることがあり、そんなとき署名だけでよいのか、シャチハタを取りに行くべきなのか。

 

結論を書くと診断書・処方箋とも署名だけで可です。

署名があればハンコは不要です。

署名がなければハンコが必要です。

 

 

以下、根拠を示します。

 

医師法 第五章 業務より

第十九条2 診察若しくは検案をし、又は出産に立ち会つた医師は、診断書若しくは検案書又は出生証明書若しくは死産証書の交付の求があつた場合には、正当の事由がなければ、これを拒んではならない。

 

第二十二条 医師は、患者に対し治療上薬剤を調剤して投与する必要があると認めた場合には、患者又は現にその看護に当つている者に対して処方せんを交付しなければならない。

 

→診断書、処方箋を交付することは医師の業務と規定されています。

 

 

医師法施行規則 第三章 業務より

第二十条 医師は、その交付する死亡診断書又は死体検案書に、次に掲げる事項を記載し、記名押印又は署名しなければならない。

 

第二十一条 医師は、患者に交付する処方せんに、患者の氏名、年齢、薬名、分量、用法、用量、発行の年月日、使用期間及び病院若しくは診療所の名称及び所在地又は医師の住所を記載し、記名押印又は署名しなければならない。

 

→上記の通り、署名だけでOKです。ハンコがないときに急いでハンコを取りに行く必要はありません。署名しましょう。それでもハンコが必要だ!と言われたらこの条文を示して拒否してもよいと思います。

 

そもそも「記名」とは何かということですが、おそらく印刷した文字や名前のスタンプのようなものを想定しているのだと思われます。その場合、この書類は私が作りましたよ、という意味合いでハンコを押すのは理にかなっているように思います。

 

気になるのは、医師法施行規則内に、死亡診断書については書いてあるのですが、それ以外の(死亡診断書ではない)診断書のことは書いていない。

ふつうに流用して解釈してよいと思いますが。

 

 

ちょっと面倒というか誤解を招きそうなのが、死亡診断書の書式です。

 

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上の画像は死亡診断書の一部ですが、医師の名前を書く欄の横に「印」とまるでハンコを押すことが義務かのような文字があります(死亡診断書に限らず、このような書類が多い)。

ですから本来署名だけでよいのに、家族や役所の人が「あれ?ハンコがないな。押してもらわないと」と思ったりもするのです。

「印」の文字に二重線でも引いて、「押印省略」とでも書けば確実でしょう。

 

 

保険会社などが要求する患者の病状に関する書類も、ハンコの件でもめたりします。ただあれは数枚つづりの複写形式になっていたりするので、やはり「自筆署名のない紙」にはハンコを押す必要があるでしょう。

 

また最近は診断書も電子カルテ上のファイルで作成し、プリントした時点で作った医者の名前も印刷されていることが多いですので、こちらもハンコを押さないと(法令的に)ダメです。印刷された名前の横に自筆署名すれば(法令的に)OKです。