薬剤性肺障害の原因薬剤―臨床病型からみた分類
参考:薬剤性肺障害の診断・治療の手引き2018
間質性肺炎
・発症の危険因子は、男性、高齢、喫煙歴、既存のIP、化学療法歴、放射線治療歴、腎障害、低肺機能などが様々な薬剤に共通する。
・総投与量は一部の薬剤で肺障害発症と関連する。ブレオマイシン、アミオダロンなど。
・予後不良因子はいくつかの薬剤では検討されている。ゲフィチニブでは男性、喫煙、PS2以上。
・IIPに準じて分類される。DAD、OP、NSIP、HPの4つのパターンが代表的(HPはIIPではないが)。
・通常は数週から数か月後に発症する。シクロフォスファミドやアミオダロンでは数年後に発症することも多い。
・炎症反応上昇、好酸球増多が見られることがある。KL-6は病型によって異なり、DADでは高いが、OPでは上がりにくい。肺機能では拘束性障害と拡散能低下がある。
肺水腫
・心原性(cardiologenic pulmonary edema:CPE)と非心原性(NCPE)を鑑別する。身体所見、画像、エコー、BNPなどを参考にする。
・ARDSは臨床的な分類で、定義としてCPEは除く。病理学的にDADを想定した概念だが、ARDS診断基準を満たした症例のうち病理でDADであったのは40%という報告がある。ほかに感染、肺胞出血、OPなどがある。
・薬剤性肺障害による肺水腫といえば普通はARDSを含めたNCPEをいうが、広義には例えばカテコラミン投与や輸液過剰によるCPEも薬剤性である。
・薬剤性ARDSでは、ゲフィチニブ、シタラビン(Ara-C)、アミオダロン、生物学的製剤などが有名。
好酸球性肺炎
・末梢血の好酸球増多、BALF中の好酸球増多(ATSガイドラインでは25%以上)、肺生検における好酸球浸潤のいずれかを認める。
・EPの鑑別では薬剤性のほかに、寄生虫、アレルギー、癌、真菌、粉塵、喫煙を考慮する。
・AEPでは1週間以内の症状、CEPでは1ヶ月以上持続する症状を認める。胸水や胸痛を伴うこともある。ARDS、HP、心不全との鑑別はときに難しい。
報告数が多い薬剤
メソトレキセート、メサラジン
ミノサイクリン、レボフロキサシン、クラリスロマイシン、アジスロマイシン
ダプトマイシン、セフトリアキソン、メロペネム
ロキソプロフェン、ほかNSAIDs
クロピドグレル(プラビックス)
・ほかに金製剤やブレオマイシンが有名だが使用頻度自体が減少している。
・生物学的製剤、分子標的薬、DOACなどの報告が増えている。
気道系病変
・気管支攣縮/気管支喘息:β遮断、NSAIDs(アスピリン喘息)、アナフィラキシー、職業性の薬剤粉末吸入
・ACE阻害薬による咳嗽:カプトプリル(カプトリル)、エナラプリル(レニベース)で多い
・NSAIDs、ACE阻害薬、ペニシリンなどによる血管性浮腫は喉頭浮腫をきたすことがある。
・閉塞性細気管支炎(bronchiolitis obliterans:BO):ペニシラミン、金、サラゾスルファピリジンなど。
肺血管病変
・肺胞出血:薬剤性のANCA誘導が問題になる。抗甲状腺薬、ペニシリン、テトラサイクリン、ペニシラミン、ヒドララジン、アロプリノールなど。肺胞・間質領域の薬剤性肺胞出血の原因は、悪性腫瘍薬、免疫抑制薬など多岐にわたる。
・肺高血圧:ニース分類2013では肺動脈性肺高血圧(1群)に含まれる(特発性、遺伝性、薬剤、各種疾患(結合組織病、HIV、門脈圧亢進、先天性、住血吸虫)。
・食欲抑制薬(アミノレックス、フェンフルラミン)は「確実な関連性あり」とされる。
・ほかにダサチニブ(スプリセル)、インターフェロンが知られる。
胸膜病変
・薬剤性ループス:発熱・関節痛・ANA陽性などが出現。50-80%で胸水がみられるが、胸水中の糖はSLEとは異なり正常。抗dsDNA抗体は陰性。
・胸水をきたす薬剤にバルプロ酸、ダントロレン、イミダプリル、プロピオチオウラシル、補中益気湯が知られる。
・サラゾスルファピリジンやメサラジンの胸膜炎報告あり。
・BCR/ABL-TKIは胸水など体液貯留あり。ダサチニブは頻度高い。
・生物学的製剤の頻度増えている。