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CMVアンチゲネミア法(C7-HRP、C10/11)をどう使うか

日常臨床でCMVアンチゲネミア(C7HRPまたはC10/11)が測定されることがある。「CMVアンチゲネミアが陽性」であれば、CMV infectionであると言える。

CMV infection:体液や組織からCMVの抗原や核酸が分離できる状態で、症状・所見の有無を問わない。

 

CMV disease:症状・所見を伴ったCMV infectionのこと。ウイルスによる症候(発熱、血球異常など)またはtissue-invasive syndromeとして表現される。

(UpToDateより)

 

初感染による軽微な症候や伝染性単核球症はともかく、臓器病変を伴うCMV diseaseがあれば治療が必要である。

臓器病変の有無は、組織の病理所見(免疫染色・封入体など)や特徴的な所見(網膜炎など)によってなされる。

 

一方、diseaseに至っていないinfection(=症状・所見はないがCMVアンチゲネミアやqPCRが陽性)に抗CMV薬が必要か議論がある。移植後患者についてはよく検討されており各ガイドラインにも記載があるが、その他の免疫抑制状態(HIV感染、抗リウマチ薬使用など)の場合には定説がない。

なお我が国では、qPCRに保険が適応されないため、通常CMVアンチゲネミア(C7HRPもしくはC10/11)が用いられる。

 


移植後患者のサイトメガロウイルス感染症対策

(参照:UpToDate、検査と技術2012;40:1473、造血細胞移植ガイドライン・ウイルス感染症の予防と治療・サイトメガロウイルス感染症第4版

・移植後の感染症として頻度が高く(20-60%)、移植1-3ヶ月後に好発する。

・移植後に一定期間(100日に設定した研究が多い)抗CMV薬を予防投与する戦略(prophylaxis)と、CMV活動性をCMVアンチゲネミアやPCRによってモニタリングし、基準値を超えた際に抗CMV薬を投与する戦略(preemptive therapy)がある。

 

・米国のガイドライン(Tranplantation 2010;89:779)では、ハイリスク群(ドナーがCMV抗体陽性・レシピエントが陰性など)に対するprophylaxisを推奨している。

・ただしprophylaxisには、

 ・投与終了後にlate onset CMV感染症が増加する、

 ・抗CMV薬による骨髄抑制が他の感染症のリスクを高める

 ・保険適用の問題

といったデメリットがあり、我が国ではpreemptive therapyが採用されるケースが多い。

 

以下、造血細胞移植ガイドライン・ウイルス感染症の予防と治療・サイトメガロウイルス感染症第4版(日本造血細胞移植学会2018年8月)を参照

・「(ガンシクロビルの)全例への予防投与は(中略)推奨されない。ただし、CMV感染症の高リスク群への予防投与については検討する価値がある」とあり、基本的にpreemptive therapyを勧めている。

・患者のリスクに応じてCMVアンチゲネミア・qPCRの基準値が設定され、それを超えた場合にpreemptive therapyが開始される。例えばC7-HRPでは10個/50000個、高リスク群では2個/50000個が基準値に設定されている。

・モニタリングは週1回行う。陽性となった場合、基準値と比較し高値であればpreemptiveにガンシクロビルを開始する(5mg/kg・1日1回または6mg/kg/日・週5回)。開始後も週1回のモニタリングを行い、値が50%以下に減少した場合には減量し、陰性化した場合には終了する。

・preemptive therapyの普及により、特にCMV肺炎の発症はほぼ抑制され、移植後100日以内のCMV感染症の発症は、かつては30%以上であったが、現在は10%未満となっている。CMV胃腸炎の頻度が増加している。

 


HIV感染症に伴うサイトメガロウイルス感染症

CMV感染症はAIDS指標疾患だが、CMV infectionの状態は基本的には治療対象ではない。アンチゲネミアの値が〇〇以上だからガンシクロビルを投与する、〇〇以下だから投与しない、という発想はしない。

ただしCMV infectionであることが、将来CMV diseaseを発症するリスクを高めるのは間違いなく、またCMV infectionにガンシクロビルを投与するとCMV disease発症が抑制されるのも確か。

実際には、CMVアンチゲネミアの値が高ければ臓器病変を探し、あるいは何らかの臓器病変が発覚した際にCMVアンチゲネミアを測定してCMV diseaseを鑑別に挙げる、といったアプローチになると思われる。

網膜炎についてのみ、二次予防・維持治療の推奨がある(3ヶ月以上CD4>200で、かつHIV-RNAが検出されないとき終了)(EACS Guidelines 2017)。

 

CMVの抗原、核酸、抗体の結果をもってCMV diseaseを診断・除外すべきではない。ただし、CMV感染症は再活性化がほとんどであり、CMV seronegativeであればCMV感染症ではない可能性が高まる。

(UpToDate:AIDS-related cytomegalovirus gastrointestinal disease)

  

血液における抗原・核酸の検出は診断の根拠に用いるべきではない。脳脊髄液のCMV-DNA陽性は、CMVの中枢神経感染症を支持する。

(UpToDate:AIDS-related cytomegalovirus neurologic disease)

  

血液における抗原・核酸の検出は網膜炎の診断根拠に用いるべきではない。IgG抗体陰性は、網膜炎のetiologyがCMVではない可能性を高めるが、完全に除外できるとは言えない。

(UpToDate:Pathogenesis, clinical manifestations, and diagnosis of AIDS-related cytomegalovirus retinitis)

  

619人のAIDS患者(median CD4+ 21/µL)を、プラセボかガンシクロビルに割付け、12ヶ月観察(ARTなし)。血清CMV-DNA陰性患者では、CMV発症は14% vs 1%。陽性患者では43% vs 26%。プラセボ群でみると、CMV-DNA陽性はCMV発症リスクを3.4倍高めた。

(J Clin Invest 1998;101:497)

  

日本の施設(ACC)の報告。CD4 100未満のHIV患者で、ART未導入、血清CMV-DNA陽性患者126人を観察し、preemptiveにCMVを治療した場合のCMV発症は3/30人、しないと30/96人に発症した。死亡率には差はなく、治療すれば副作用がある。

(PLoS One 2013;8:e65348)