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医師の自学自習のためのブログ

インフルエンザの患者さんに本当は伝えたいこと

昨日の夕方から発熱と関節痛ということで、今も38℃と……それは大変おつらいでしょう。他の症状はどうですか……軽いのどの痛みと鼻水、あとは大丈夫、と……。診察しますね……のどは少し赤いようですが、他にこれといった所見はないようですね。

ニュースでもやっていましたが、インフルエンザの流行に入っておりまして、ここの病院でも患者さんが増えています。

検査はどうしましょうか? インフルエンザの検査―鼻から細い綿棒を入れる検査ですが、約3000円(自己負担3割で約1000円)かかります。陽性であればほぼインフルエンザに違いないだろうと言えますが、本当はインフルエンザなのに陽性に出ないこともあります(偽陰性)。特に今回はまだ発症から24時間経っていないようですので、偽陰性となる可能性も高いですね……

あなたの症状・経過と、今が流行期であることを考えると、インフルエンザである可能性は相当高いと思います。

診断書ですか? 検査などしなくても「インフルエンザ」と書きますが……

そうですか、検査ご希望と……またお呼びしますのでしばらくお待ちください。

 

お待たせしました。検査は陽性です。インフルエンザでしょう。

インフルエンザは人にうつる力が強いですので、外出する際にはできるだけマスクをして、手洗いを徹底してください。よく栄養を取ってしっかり休んでください。解熱しても数日は人にうつす力があると考えられていますので注意してくださいね。

 

薬はどうしましょうか?

インフルエンザのためのお薬(抗インフルエンザウイルス薬)がありますが、もともとインフルエンザは自然に治る病気です。あなたは若くて何の病気もない健康な大人ですから、よく栄養と休養を取ればそれで充分です。

入院患者、高齢者、2歳未満の子ども、妊婦、免疫不全、慢性の肺や心臓の疾患のある方などでは抗インフルエンザ薬投与が勧められますが、インフルエンザ患者全員に必要なわけではありません。

抗インフルエンザ薬を使うと、解熱するのが1日程度早くなるというデータはあります。他の症状を和らげたり、インフルエンザが重症化する(=肺炎や脳症になったり、入院したりする)のを防いだり、他の人にうつす力を弱めたりする効果に関して、定説はありません。

また今回は該当しませんが、発症から48時間経過していると投与の意味はないと考えられています。

 

ああ、ご使用になりたいと……いいですよ。

飲み薬と吸入する薬とがありまして、タミフルだと1日2回、朝晩5日間飲む薬で、3000円弱(後発品だとその半額)です。リレンザは1日2回5日間吸入する薬でこれも3000円弱、イナビルは1回だけ吸入する薬で約4000円です。

吸入するリレンザやイナビルは喘息があると発作を誘発する可能性が指摘されていますが、あなたは大丈夫ですね。

 

ゾフルーザですか? 新しい薬ですね。

私も数回しか使ったことがないのですが、1回だけ内服する薬で、使い勝手はよさそうです。約5000円で他の薬は少し高めです。

新しい薬だけあって、まだどれくらいメリットのある薬が分かっていないようで、学会では「現時点では推奨/非推奨は決められない」と言っています。個人的にはあまり処方したくないのですが……

はあ、ゾフルーザをご希望と……それでは出しておきますね……

 

解熱薬は必要ですか? 手持ちがある? ロキソニンですか。ロキソニンはインフルエンザのときに使うと危ないこともあるので、まあ大人では大丈夫でしょうが、一応カロナールアセトアミノフェン)を出しておきます。

お大事に……

 


 【現実】 ※極端な例です

(問診票を見て看護師がインフルエンザ迅速検査をすでに行っている→陽性)

先ほどインフルエンザの検査をしていただいて陽性でしたのでインフルエンザですね。

お薬出しておきます。飲み薬と吸入の薬とどちらがよいですか? 飲み薬は5日間、吸入なら1回ですが……では吸入の薬で。

お大事に……