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気管支喘息 抗体医薬一覧

気管支喘息に用いられる抗体医薬

【基本知識】

●アレルゲンなどの抗原が提示されることで、Th0細胞(ナイーブヘルパーT細胞)はTh2細胞へ分化する。この分化にはIL-4が関わる。

●Th2細胞からIL-4、IL-5、IL-13などが分泌され、IL-4/IL-13はB細胞を刺激してIgE型抗体を増加させ、IL-5は好酸球を刺激、IL-13は気道上皮や平滑筋細胞を刺激する。

●IgEはマスト細胞や好塩基球の受容体(高親和性IgE受容体:FcεRI)に結合して脱顆粒を起こし、ヒスタミンやロイコトリエンを遊離させる。

●ウイルス感染やタバコは気道上皮細胞を障害し、上皮からIL-25、IL-33、TSLP(thymic stromal lymphopoietin)を介して、2型自然リンパ球(ILC2)を活性化させる。ILC2はIL-5やIL-13を産生する。IL-5やIL-13は、Th2細胞からも、ILC2からも分泌される。

 

【オマリズマブ(ゾレア)】

●ヒト化抗IgE抗体モノクローナル抗体。2009年に成人の気管支喘息に対する適応取得、2013年に小児にも使用可能となる。特発性慢性蕁麻疹にも適応あり。ノバルティス。

●IgEのFc部分(Cε3)に結合し、マスト細胞や好塩基球の受容体(高親和性IgE受容体:FcεRI)への結合を阻害する。

●血清IgE値(30-1500 IU/mL)と体重によって投与量が決まる。2週または4週毎、皮下注。

●INNOVATE試験(Allergy 2005;60:309)

・欧米での第3相、無作為ランダム化プラセボ比較試験。

・高用量ICS/LABAを使用しても重症持続型の症状あり患者にゾレア上乗せ。28週までの喘息増悪(=全身ステロイド必要)頻度を検討した。

プラセボ(n=210)vsゾレア(n=209)で28週での増悪頻度は0.91回/年 vs 0.68回/年(p=0.042)。

 

【メポリズマブ(ヌーカラ)】

●ヒト化抗IL-5モノクローナル抗体。2016年に気管支喘息に適応取得。好酸球性多発血管炎性肉芽腫症にも適応あり。GSK。

●フリーのIL-5に結合し、IL-5α受容体への結合を阻害する。

●喘息では100 mg、皮下注、4週毎。原則好酸球数を参考に投与を検討する。

MENSA試験(N Engl J Med 2014;371:1198)

・第3相、無作為ランダム化プラセボ比較試験。

・高用量ICS/LABAを使用しても末梢血好酸球増加(開始時に150以上または過去1年に300以上あり)および過去1年に2回以上増悪のあった患者にヌーカラ上乗せ。32週までの喘息増悪(=全身ステロイド必要、入院、救外受診)頻度を検討した。

プラセボ(n=191)vsヌーカラ(n=194)で32週での増悪頻度は1.74回/年 vs 0.83回/年(p<0.001)。

 

【ベンラリズマブ(ファセンラ)】

●抗IL-5受容体α鎖抗体。2018年に気管支喘息に適応取得。アストラゼネカ

●IL-5の抑制だけでなく、NK細胞等を誘導し、ADCC活性によって好酸球が除去される。

●喘息では30 mg、皮下注、初回・4週後・8週後・以降8週毎。原則好酸球数を参考に投与を検討する。

●SIROCCO試験(Lancet 2016;388:2115)

 

【デュピルマブ(デュピクセント)】

●抗IL-4受容体α抗体。2019年に気管支喘息に適応取得。アトピー性皮膚炎でも適応あり。サノフィ。

●IL-4とIL-13はIL-4受容体αを介して作用する。

●QUEST試験(N Engl J Med 2018;378:2486)