MED INFO

医師の自学自習のためのブログ

新型コロナ患者の入院に関する厚労省の通知

新型コロナウイルス感染症感染症法における位置づけ

前提として、新型コロナウイルス感染症の法的な位置づけを確認します。

 

新型コロナウイルス感染症新型コロナウイルス感染症を指定感染症として定める等の政令に基づき、令和2年2月1日より新型コロナウイルス感染症の名称で感染症法上の「指定感染症に指定されています。

「指定感染症」とは耳慣れないです。

 

感染症法より;

 

第六条 この法律において「感染症」とは、一類感染症、二類感染症、三類感染症、四類感染症、五類感染症新型インフルエンザ等感染症、指定感染症及び新感染症をいう。

 

第六条の8 この法律において「指定感染症」とは、既に知られている感染性の疾病(一類感染症、二類感染症、三類感染症及び新型インフルエンザ等感染症を除く。)であって、第三章から第七章までの規定の全部又は一部を準用しなければ、当該疾病のまん延により国民の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがあるものとして政令で定めるものをいう。

 

第七条 指定感染症については、一年以内の政令で定める期間に限り、政令で定めるところにより次条、第三章から第七章まで、第十章、第十二章及び第十三章の規定の全部又は一部を準用する。

 

今回の「新型コロナウイルス感染症」について、感染症法をどのように適用させるかは新型コロナウイルス感染症を指定感染症として定める等の政令に細かく規定されています。

入院に関わる条文(第十九条・第二十条)も「新型コロナウイルス感染症」に適応されます。第十九条は次のようにありますが、この中の「一類感染症」を「新型コロナウイルス感染症」に読み替えます。

 

感染症法より;

 

第十九条 都道府県知事は、一類感染症のまん延を防止するため必要があると認めるときは、当該感染症の患者に対し特定感染症指定医療機関若しくは第一種感染症指定医療機関に入院し、又はその保護者に対し当該患者を入院させるべきことを勧告することができる。ただし、緊急その他やむを得ない理由があるときは、特定感染症指定医療機関若しくは第一種感染症指定医療機関以外の病院若しくは診療所であって当該都道府県知事が適当と認めるものに入院し、又は当該患者を入院させるべきことを勧告することができる。

 

したがって法的には、

新型コロナウイルス感染症は指定医療機関へ入院させる

●ただし緊急時であれば指定医療機関以外の医療機関への入院も可能

「入院させなければならない」とは書いていないですが、基本的には入院を要するという理解でよいと思われます。

 

とはいえ指定医療機関への入院が望ましい

令和2年2月9日の結核感染症課長事務連絡新型コロナウイルス感染症患者等の入院病床の確保について(依頼) 」では、次の旨が記載されています。

 

●緊急時であれば指定医療機関でなくても入院させてよい(感染症法の確認)

●ただ基本的には指定医療機関に入院させる。感染症病床でなくてもよい。

 

患者が増えれば軽症・無症状は入院しないことも

令和2年3月1日の厚労省新型コロナウイルス感染症対策推進本部の事務連絡「地域で新型コロナウイルス感染症の患者が増加した場合の各対策 (サーベイランス、感染拡大防止策、医療提供体制)の移行について 」では次の通り。

 

患者が大幅に増加し、重症者の入院に支障が出るようになれば

・指定医療機関以外の医療機関でも積極的に受け入れる

・無症状・軽症状者は自宅で安静・療養する(高齢者、基礎疾患がある、免疫抑制剤抗がん剤等を用いている、 妊産婦は除く)。

 

宿泊施設・自宅療養における指針が提示

令和2年4月2日の事務連絡新型コロナウイルス感染症の軽症者等に係る宿泊療養及び自宅療養 の対象並びに自治体における対応に向けた準備について」および「「新型コロナウイルス感染症の軽症者等の宿泊療養マニュアル」について」で宿泊施設・自宅での療養についての指針が示されています。

 

●流行の拡大が前提(入院できるなら入院したほうがよい)

●患者が、感染防止にかかる留意点が遵守できて、無症状・軽症者であれば、入院勧告の対象とならない。

●高齢者、基礎疾患あり、免疫抑制剤抗がん剤等使用中、 妊産婦は除外。またこれらに該当する人と同居する患者もなるべく入院。

●基本的には都道府県の用意した宿泊施設で療養する。宿泊施設がムリなら自宅で療養するが、高齢者と同居している場合や、高齢者と頻繁に接する業務にあたる人(医療・介護従事者など)と同居している場合は優先して宿泊施設へ。

●療養の終了基準は、退院基準と同様(PCR2回陰性など)。

 

東京都で宿泊施設での療養開始

実際、4月7日に東京都で患者のホテルへの移動が始まりました。

以下、東京都、コロナ感染軽症者の療養ホテルを公開 - 社会 : 日刊スポーツより

東京都は7日、無症状や軽症の新型コロナウイルス感染者を入院先から移し、療養や健康観察を受ける都内のホテルを公開した。より症状の重い感染者に病床を優先し、医療崩壊を防ぐ狙いがある。軽症者らは同日から、都が借り上げたホテルに順次移り、最終的に100人程度が収容される。都は同様の取り組みを進め、宿泊施設の1000室確保を目指している。

 

ホテルは中央区の「東横イン東京駅新大橋前」。都は24時間以内に37・5度以上の発熱がない感染者を対象とし、移送や食事、滞在などの費用は公費で賄う。ホテルには都の職員や看護師が交代で常駐し、日中は医師も待機する。職員らと感染者は接触しないようにエレベーターや通路を使い分けるとしている。

 

7日朝、ホテルでは災害派遣要請を受けた陸上自衛隊員が、ビニール手袋など物資を運び込み、受け入れ準備を進めていた。

 

都内では6日までに感染者数が累計1100人を突破した。感染拡大のペースが速く、都は医療機関の協力を得て空き病床の確保を急ぐ。複数の入所者が感染した大田区特別養護老人ホームでは、入院先が決まらずに一時的に待機するケースも出ている。

 

小池百合子知事は6日の記者会見で「今後、宿泊療養施設を1000室まで準備し、重症者の病床を確保したい」と話した。