MED INFO

医師の自学自習のためのブログ

新型コロナウイルス感染症における嗅覚障害

COVID-19で嗅覚・味覚障害が出るのか?

昨今話題の嗅覚・味覚障害ですが、確かに他の疾患でも出現しうるとはいえ、注目すべき症状かと思います。

嗅覚障害の症例報告です。

 

Letters

Sudden and Complete Olfactory Loss Function as a Possible Symptom of COVID-19.

JAMA Otolaryngol Head Neck Surg. Published online April 8, 2020.

 

症例報告

●40歳女性。急性の嗅覚障害(acute loss of the olfactory function)を主訴に来院。鼻閉(nasal obstruction)はない。

味覚障害(dysgeusia)はない。塩味、甘味、酸味、苦味、すべて問題ない。

●嗅覚障害の出現する数日前に咳、頭痛、筋肉痛があった。発熱や鼻汁はなし。

●耳鏡、鼻鏡では所見なし。

 

●5つの香料を用いたテストでは、phenyl-ethyl-alchole(花)、cyclotene(キャラメル)、isovalenric acid(チーズ)、undecalactone(果物)、skatole(糞便)のいずれも匂いが分からなかった。

●CT、MRIで副鼻腔を撮影したところ、鼻裂に炎症性の肥厚、閉塞を認めた。嗅球には異常は見られなかった。

 

●夫が新型コロナ陽性となったためこの方も検査されたところ陽性であった。

 

discussion

●上気道感染症は嗅覚障害の最多の原因で、22-36%を占める。

●重症の鼻・咽頭感染において鼻裂の閉塞が見られるとされるが、今回の患者では鼻閉や鼻汁の症状はなく、重症の鼻・咽頭感染とは言えない。

●一般にコロナウイルスは篩骨を経て嗅球・嗅細胞に到達し、これを障害することがある。新型コロナウイルスでもそうなのかもしれない。

●Liggetらはcentral cortical neurons、血管平滑筋細胞、気道上皮細胞に発現するolfactory receptor familyを報告しているが、新型コロナウイルスはこの受容体を介して選択的に嗅細胞に感染するのかもしれない。