MED INFO

医師の自学自習のためのブログ

脊椎カリエスの特徴・診断

・慢性の炎症により骨・歯牙が腐った状態をカリエス(独語Karies、英語caries)と呼ぶ。虫歯もカリエス

・日本では伝統的に結核性の骨病変を指してカリエスと呼んでおり、かつては脊椎カリエスのほか、肋骨のカリエス、骨盤のカリエスなどよく見られたはずだが、21世紀ともなるとレアな疾患である。

・骨病変の中で脊椎炎は最も頻度が高く、単にカリエスと言えば結核性脊椎炎のこと。

 

Spinal tuberculosis

Bone Joint J 2018;100-B:425

 

・脊椎結核は紀元前3300年のエジプトのミイラでも見られ、古くから存在していたことが確認されている。

・1779年、Percival Pottが脊椎結核に伴う対麻痺paraplegiaと脊柱後弯kyphosisの症例を記述したため、Pott’s diseaseと呼ばれることがある。

 

Epidemiology

  • 脊椎結核はa diseases of povertyとも呼ばれ、途上国、特に貧困層の若年成人や小児によくみられる。HIV合併も重要な因子である。
  • 結核の10%に肺外結核が見られるが、このうち半分が筋骨格系の結核である。脊椎は筋骨格系の中で最も侵されやすく、結核全体の1-2%に合併するとするデータがある。
  • 前脊髄動脈・後脊髄動脈から流れ込む血流が密な血管網を形成し、各椎骨の軟骨下組織に還流する。血流がリッチなため脊椎には血行播種が起きやすい。
  • discを保ったまま椎体が破壊されることで後弯を呈しやすい。後弯に加えて、硬膜外の膿および椎間板と骨のdebrisによって脊髄が圧迫されることで神経症状を呈する。
  • up to dateより:椎体・椎間板炎は椎骨の前側の椎間関節から発症してくる。前縦靭帯の裏から椎骨に炎症が波及する。隣り合った椎骨が炎症を起こすと、間の椎間板にも炎症が及ぶ。結核では、化膿性感染よりもこの経過が遅い。
  • 病勢がコントロールできても、後弯の進展によるlate-onsetの対麻痺をきたすことがある。後弯を早期から認識・是正しなければならない。

 

Clinical features

  • 進行は緩徐で4-11ヶ月程度かけて悪化する。医療アクセスの悪い途上国などでは治療の遅れが起きやすい。
  • 体重減少、倦怠感、発熱、盗汗は頻度が高い。局所の疼痛は軽いものから激烈なものまで様々である。
  • 後弯が激しくなるとgibbus(亀背、突背、傴僂)を呈する。
  • 傍脊柱膿瘍が顕著な場合もある。
  • 頸部の脊椎結核では嗄声、呼吸不全、嚥下障害などを呈するかもしれない。
  • 神経障害はcommonで、23-76%の症例で呈するというデータがある。頸椎・胸椎の病変では起きやすい。腰椎でも起きるが、腰椎では痛みが前面に出ることが多い。

 

Imaging

  • 傍脊柱膿瘍が最も早期からみられる画像所見である。腰椎では腸腰筋膿瘍があるかもしれない。椎間板の高さ・形状が保たれやすい点が化膿性感染との主な違いである。
  • 侵された椎骨の数は、将来的な後弯の程度と関連するが、過小評価されやすい。
  • 石灰化は結核らしい所見。
  • MRIは骨・神経病変を描出しやすい。全脊椎MRIではnon-contiguous(連続していない)病変を検出できる。16%の患者では非連続性病変が存在する。
  • PETは病変の検索、経過観察、生検部位の決定などに有用かもしれない。

 

Diagnosis

  • 血沈は平均70 s
  • WBCはusually normal。リンパ球増多が多い。
  • 膿や組織の採取が重要。
  • 膿の抗酸菌塗抹の感度は38%。
  • 組織における肉芽種、巨細胞、抗酸菌の所見は診断につながるが、サルコイドーシスや猫ひっかき病で似た所見を呈することがある。組織診の感度は60%程度で可能。
  • PCRは感度80-90%というデータがある。

 

以下省略

 

 

ウイルスがコントロールされたHIV患者からHIVは伝播しない「U=U」

U=U taking off in 2017

Lancet HIV 2017;4(11):e475

Editorial

 

●ウイルス学的にコントロールされたHIV感染患者は、性的接触によって他人にHIVを感染させることはないらしい。

2016年に「the Undetectable=Untranmissable (U=U) slogan」がPrevention Access Campaignから提唱され、2017年にはアメリCDCもこれにならっている。

HIV-positive患者と、HIV-negativeのパートナーとの間の伝播に関する3つの大規模な試験が行われている。

 

HPTN052 interim analysis

 (N Engl J Med 2011;365:493

・9ヶ国、1763serodiscordantカップル。54%はアフリカ。患者の50%が男性。

・CD4 350-550の患者を、early群(すぐにART開始)とdelayed群(CD42回連続250未満またはHIVに関する症状出現後(AIDS発症など)にART開始)にランダムに分けた。Primary prevention end pointを非患者への伝播、primary clinical end pointを肺結核発症・重症細菌感染症WHO stage 4 event・死亡のいずれかとした。

・20112月時点で、非患者のうち39人がHIV-1に感染していた(発生率1.2/100人年)。このうち28人がパートナー(患者)からの伝播と考えられ(発生率0.9/100人年)、27人がdelayed群、1人がearly群であった。Early群ではclinical end point発生も少なかった(HR 0.59; 95% CI, 0.40-0.88)。

・試験打ち切り。

 

HPTN052 final results

 (N Engl J Med 2016;375:830

・HPTN052試験の中間解析後に、delayed群でもARTが開始され、2015年まで追跡された。

・非患者のうち計78人がHIV-positiveとなった。このうち遺伝子を解析できた72人において、46人がパートナーからの伝播と考えられ、3人がearly群、43人がdelayed群であった。46人のうち8人はパートナーがARTを開始してからの感染であった。この8人の中で、4人はパートナーのウイルス学的抑制の前に伝播が起きており、4人はパートナーのARTがウイルス学的抑制を達成できなかったカップルであった。

・パートナーからの伝播でなかった26人では、14人がearly群、12人がdelayed群だった。

 

PARTNER study

 (JAMA 2016;316:171

・前向き観察研究。14ヶ国75施設。HIV患者側はART中で、HIV-1 RNA<200コピー、コンドーム不使用の性交渉を行っていると自己申告したカップ1166組を登録した。888組(548ヘテロ340MSM)が1238 couple-years観察された(観察期間中央値1.3年)。

・パートナー以外とのコンドームなしセックスを申告した非患者側はMSM108人(33%)、ヘテロ21人(4%)。観察期間中、カップルは中央値37/年のコンドームなしセックスを申告し、MSMカップルで約22000セックス、ヘテロカップルで36000セックスが解析対象となった。

・11人の非患者がHIV-positiveとなったが(10人がMSM1人はヘテロ8人はパートナー以外とのコンドームなしセックスを申告)、遺伝子学的にパートナーからの伝播と考えられた例はゼロだった。95%信頼区間の上限は0.30/100 couple-yearsとなった。コンドームなし肛門性交のみで計算すると95%信頼区間の上限は0.71/100 couple-yearsとなった

 

Opposites Attract study

 (2017年国際エイズ学会で報告)

 (Lancet HIV 2018;5(8):e438

・観察コホート研究。オーストラリアの13施設、ブラジルの1施設、タイの1施設からserodiscordantの男性ホモセクシャルカップルをリクルート。試験参加時にカップルには教育が行われた。Viral suppressionはウイルス量が200コピー/mLと定義。自己申告のコンドームなし肛門性交(condomless anal intercourseCLAI))、dailyPrEPは行われていない状況での伝播について検討した。

・358組のうち343組1回以上フォローアップされ、計588.4 couple-years観察された258人(75%)のHIV患者側で一貫してウイルス量が抑制され、115人(34%)のHIV非患者側がdaily PrEPを行った。258組75%)がフォローアップ期間中のカップル間でのCLAIを申告し、計16800CLAIが行われた。

・結果、HIV非患者のうち3人が新たにHIV陽性となったが、遺伝子学的にはリンクしていなかった。CLAIがあり、HIV患者側のウイルス量が抑制され、HIV非患者側でPrEPが行われていなかったもののみ検討すると、計232.2 couple-yearsあり、12447CLAIが行われた。95%信頼区間の上限は1.59/100 couple-yearsと計算された。

破傷風―Review

Tetanus

Seminar

Yen LM, Thwaites CL. Lancet 2019;393:1657

 

Introduction

  • 破傷風tetanusは芽胞形成性spore-formingの細菌のClostridium tetaniが産生する神経毒を原因とするvaccine-preventable diseaseである。C tetaniの芽胞は世界中の環境中に存在し、外傷、minor abrasions、新生児ではumbilical stumpを汚染する。芽胞は嫌気環境でvegetative bacteriaとなり、tetanus toxinを産生して破傷風を引き起こす。
  • すべての哺乳類が発症しうるが、ウマ、類人猿は肉食動物よりsusceptibleである。
  • low-income, middle-incomeな国々ではcommon。High-incomeな国ではrareだが重要。環境中に存在する菌であるため、目標はeradicationではなく、ワクチン接種の徹底によるeliminationである。

 

Epidemiology

  • low, middle-incomeな国ではサーベイランスが確立しておらず、正確なdisease burdenは不明だが、破傷風による死亡の79%はアジアとサブサハラのアフリカで発生しているというデータがある(2015年)。
  • 新生児破傷風neonatal tetanusの疫学データは、破傷風のデータの中ではaccurateである。2015年のデータでは新生児破傷風の死亡数は年間34019件と推計され、これは1980年代の年間80万件の死亡と比較すると相当減っている。母体破傷風maternal tetanusについて信頼できるデータは乏しいが、1993年の年間死亡は15000-30000であり減少傾向とされる。

※用語

・Maternal tetanus:妊娠中、または妊娠終了(出産・流早産・中絶)から6週以内の破傷風

・Neonatal tetanus, suspected:出生3日~28日目の全ての原因不明の死亡、もしくは破傷風であったとreportされるがinvestigateされていないもの

・Neonatal tetanus, confirmed:出生2日目までsuck、cryが正常であったのに、3-28日目に正常なsuckが不可能になった、もしくはstiff、spasmが出現したもの。

 

  • 新生児期以外の破傷風について十分な報告システムやデータを管理している国は少ないが、大規模なグローバルケースシリーズによれば、成人の破傷風も依然として重大な問題である。
  • Global Burden of Disease surveyによると、2015年に破傷風死亡は推計値56743件あり、うち19937件は新生児であった。WHOの発表では同じ年の新生児での死亡は34019件。
  • low, middle-income countriesでも徐々にICUが整備され、mortalityは低下しているかもしれない。

 

  • UKでは2010-2014年にかけて年間2-7件が報告されている。
  • フランスでは2000-2014年の間に70人の患者ICUに入院、中央値80歳、10人(14%)が死亡した。
  • 日本は報告数が多く、2010-2016年に計499人が報告された。中央値74歳、34人(7%)が死亡した。
  • 高齢者はリスクが高いが、これは時間とともにワクチンによる効果が低下する、もしくはワクチン導入前の世代であるためと考えられる。ヨーロッパ6ヶ国の調査で、65歳以上の25%で抗体価がsubprotectiveであった。
  • 注射薬剤使用者がハイリスクであることは100年以上前から知られている。皮下注、筋注は嫌気性菌感染の原因となる。2003-2004年のUKで、注射薬剤(おそらく汚染されたヘロイン)によるoutbreakがあり、24人の破傷風が発生し、2人が死亡した。北米ではlow-purity black tar heroinが現在でも問題となっている。
  • USの破傷風患者における糖尿病合併の割合は、1995-1997年には2%、2009-2015年には13%。糖尿病患者では注射手技があるからかもしれない。非糖尿病患者よりも抗体価が低くなりやすいことも知られている。
  • 自然災害では、住環境の変化・ワクチン不足・外傷増加などにより破傷風が増える。2004年の津波後にインドネシアアチェでは1ヶ月で106人、2005年のKashmir地震後1ヶ月で139人、2006年のインドネシア・Yogyakarta地震後1ヶ月で71人の破傷風が報告されている。一方、2010年のHaiti地震の際には迅速に破傷風プログラムが実施され、破傷風は14件のみに抑えられた。
  • 紛争も重要な因子で、2000-2014年のパレスチナでは紛争が激化するほど、ワクチン接種が不十分になったことが報告されている。2016年には世界で4000万人が紛争による避難を強いられており、破傷風を含むVPDコントロールに影を落としている。例えば、デンマークへの亡命を希望する小児で適切にワクチン接種されていたのは60%であった。一方オランダへの亡命希望をする成人では98%がprotectiveな破傷風抗体価を持っていたというデータがある。

 

Immunisation

  • 破傷風感染は十分な抗体を誘導しない。予防には適切なワクチン接種が必要である。
  • 胎児には母体由来のIgGが移行する。
  • 破傷風の免疫はELISAによるIgG抗体価によって測定され、protectiveな抗体濃度のカットオフは0.1-0.2 IU/mLである。ただし低抗体価ではcross-reactivityがみられ、ゴールドスタンダードはmiceにおけるin-vivo neutralization assayである。
  • 2回目の破傷風ワクチンで2-4週以内に90%の接種者が免疫を得るが、ふつうはshort-livedである。3回目によって接種者のほぼ全員が免疫を得、少なくとも5年は有効。
  • 破傷風トキソイドワクチンは、単独monovalent、diphtheriaまたはreduced diphtheria toxoid contentとの二種混合bivalent、diphtheriaとwhole cellまたはacellular pertussisとの三種混合(DPT)、またhepatitis B、Hib、polioとの混合ワクチンも存在する。
  • primary seriesとして3回のDPT(DPT3)を生後2、3、4ヶ月で打ち、さらに4-7歳と15歳に追加接種を行うのがWHOの推奨である(Expanded Programme on Immunization)。UKでは計5回の接種を推奨。US(Advisary Committee on Immunization Practices (ACIP))やヨーロッパの一部の国では、上記に加えて2歳での追加接種を推奨している。
  • ガイドライン(Public Health England、CDC、WHO)ではワクチン歴が不十分な人や、sustained tetanus-prone woundsのある人にはブースターを推奨している。CDCのガイドラインでは、ワクチン接種が不十分な人について、woundsがdirtyだったり、C tetaniの芽胞を含む可能性のある物質で汚染されていたりするときには、抗毒素antitoxinを打つことが推奨されている。UKのガイダンスではハイリスクのwounds(外科処置が遅れる、devitalized tissueが広範囲にわたる、soilやmanureによる汚染が高度)では全例でantitoxinを推奨している。
  • protective antibodiesを測定する迅速検査があり、ELISAと比較して感度80-100%、特異度70-100%と報告されている。問診によるtetanus-prone woundsの情報よりもcost-effectiveであったという報告がある。
  • neonatal tetanusは母体へのワクチンによって予防できる。ワクチン歴が不十分な妊婦に対して、tetanus toxoidを4週あけて接種することが推奨される。さらに長期予防のために、3回目を2回目の半年後、4回目を5年後、5回目を10年後に打つとよい。母体へのワクチンにより、84%の新生児が破傷風からprotectされると推計される。

 

Global initiatives

  • 1988年のデータでは破傷風によるneonatal deathsが1000出生あたり6.7と非常に高く、World Health Assemblyによるelimination initiativeが始められた。2018年3月時点で、59ヶ国中45ヶ国でelimination status(1000出生あたり1件未満)を達成している。プログラムは清潔な出産環境、サーベイランス、ワクチンの3本立て。
  • Expanded Programme on Immunizationは1974年に始まり、破傷風ジフテリア、百日咳、ポリオ、麻疹、結核について1990年にはすべての小児でavailableになった。初期のDTP3は指標として重要で、2017年には世界の85%のinfantsがDTP3を受けている。

 

Pathophysiology

  • C tetaniは様々な動物の便から同定される。ヒトの便から検出したという報告もあるがconflictingである。
  • C tetaniの芽胞は傷口から侵入し、適切な嫌気環境下でgerminateし、vegetative bacteriaとなる。ゲノムは2799250塩基対の染色体と74082塩基対のプラスミドからなる。染色体にはadhesionやlipid or amino acid degradationに関与する遺伝子(例えばhaemolysinであるtetanolysin)がのる。Tetanus toxinはプラスミド上に存在する。Tetanus toxin遺伝子がどの程度発現するかは、環境シグナルと内因的な制御因子の双方が複雑に関与する。
  • tetanus toxinは非常に強力な神経毒である。合成された単一ポリペプチド鎖(1315アミノ酸)のタンパクは不活性だが、翻訳後のmodification(457Alaから461Aspまでの限定分解)を受けてC末端側の100kDaの重鎖H(857アミノ酸)とN末端側の50kDaの軽鎖L(449アミノ酸)がdisulphide bondで結合する構造となる。重鎖にはさらに受容体との結合に関与するC末端側(HN)と細胞内移行に関与するN末端側(HC)がある。なお、以上の構造名称はボツリヌス毒素に準じたもので、1987年国際破傷風会議による提唱では、軽鎖をFragment A、重鎖N末端側をFrg B、C末端側をFrg Cとしている。
  • toxinは神経筋接合部のpresynaptic membranesに結合する。受容体はいまだ不明。脂質ラフトやクラスリン依存的なエンドサイトーシスが知られる。微小管を通じてaxon内を逆行性に輸送され(retrograde transportation)、さらにシナプスを越えてシナプス前部に達する(transcytosis)。上位抑制性ニューロンに達した毒素の標的タンパクはvesicle-associated membrane protein 2 (VAMP2; synaptobrevin-2とも)である。これはsoluble NSF attachment protein receptor (SNARE) complexを形成するもので、シナプス小胞のdockingとneurotransmitter releaseに必要なものである。VAMPが分解されることで抑制性シナプスにおけるカルシウム依存性exocytosisが阻害され、スパズムやテタヌスが出現する。
  • ボツリヌス毒素(Botulinum neurotoxin B)もVAMP2を分解するが、この毒素は末梢神経にも残存するため、ボツリヌスでは弛緩性麻痺が出現する。
  • 破傷風毒素は、中枢神経のexcitatory synapsesにも活性があり、sympathetic adrenergic neuronsにも作用し、自律神経の異常もきたす。

 

Clinical features

  • 破傷風菌はminorな皮膚の傷から侵入するが、20-50%では明らかなエントリーがわからない。新生児では臍、1ヶ月以上の子供では中耳炎が侵入門戸となりやすい。妊婦、貫通性の外傷、注射薬物使用者の破傷風は重症化しやすい。また進行の早いケースでは重症化しやすい。
  • incubation period(ケガから最初の症状出現まで)が7日未満、period of onset(最初の症状から最初のspasmまで)が48時間未満のケースでは予後が悪いことが知られ、さらに最初の症状出現から入院までの時間や、入院時にspasmがすでにあることは、予後不良因子として重要である。
  • Ablett classification of tetanus severityは広く用いられているスコアリング。Spasmsや自律神経障害の有無によって判断するもので、予後予測をするものではない。
  • 破傷風のspasmは全身性generalized、localized(四肢のみ、頭頚部のみ(cephalic tetanus))などがある。局所のspasmは毒素の量が少ないか、もしくはgeneralized出現の前触れかもしれない。
  • spasmは聴覚auditory、触覚tactile、視覚visualな刺激によって誘発される。
  • trismus(lockjawとも。日本語では牙関緊急。単に開口障害など)、痙笑risus sardonicusは顔面筋のspasmsによるもので、破傷風の初期症状である。Dysphagiaを伴うことが多い。咽頭喉頭のspasmsは、発症早期に起きることがあり、誤嚥・窒息の危険がある。Cephalic tetanusでは、症状は頭頚部に現れ、脳神経麻痺をきたす。Generalized tetanusは、localized tetanusより頻度が高い。初期にはmuscle stiffnessが出現し、prolonged and painful muscle spasmsに進展する。Extensorのspasmsが強く、特徴的な後弓反張opisthotonusを示す。腹部筋のrigidityも特徴で、spasmsにより腹部のtoneは増強する。
  • 重症破傷風では自律神経も影響を受ける。高血圧と頻脈は多く、また血圧のfluctuationsや徐脈も起きうる。他の重症疾患と比較して、アドレナリン、ノルアドレナリン量が高い。腸管、膀胱機能、気道分泌の増加の管理も必要である。

 

Diagnosis

  • 臨床所見・症状による。Toxigenic C tetaniは破傷風ではない患者の傷口からも培養されるため、傷口の培養は参考所見に留まる。破傷風の抗体が防御レベルに達していれば発症はrareであり、破傷風疑い患者の血清抗体がELISAで0.1 IU/mL以上であれば、破傷風はunlikelyである。Bioassayによる血清中のtetanus toxin検出が可能で、抗体価の低い患者であれば有用かもしれない。ただしtetanus toxinが陰性でも除外はできない。
  • mildまたは局所の破傷風では診断は難しい。trismusを呈する患者では、喉頭・口腔・下顎の疾患が鑑別に挙がる。全身性破傷風であれば、strychnine中毒、フェノチアジン・メトクロプラミド中毒におけるジストニアなど。

 

Treatment

  • リソースの乏しいsettingでの発生が多く、適切な治療の検索はそもそも困難である。
  • 傷口は入念に洗浄・デブリする。
  • 2009年のベトナムでの45のC tetani株、および2015年の5つの株では、in vitroにおいてペニシリン、メトロニダゾールへの感受性は保たれていた。2つの症例で、16日間のペニシリン治療にも関わらず培養が陽性になった症例報告があり、傷口のデブリの重要性を強調している。
  • optimalな抗菌薬治療を検討した2つの報告がある。

インドネシア。オープンラベルで173症例をランダム割付。7-10日間、①procaine benzylpenicillin(150万単位8時間毎)vs②メトロニダゾール(500mg 6時間毎内服または1000mg 8時間毎経直腸)。死亡率が①で24%(18/76)、②で7%(7/97)(p<0.01)。

・①benzathine benzylpenicilline 120万単位1回筋注、②benzylpenicillin 200万単位4時間毎10日間、③メトロニダゾール600mg 6時間毎経腸管10日間。死亡率が①で46%(26/56)、②で35%(19/55)、③で44%(22/50)だった。

  • 抗毒素は20世紀前半から使用されていた。当初はhyperimmunisedされたウマから採取したequine heterologous immunoglobulin preparationのみが使用可能だったが、現在では献血血から分離されたhuman tetanus immune globulinが使用できる。
  • 抗毒素のランダム試験は乏しいが、ウマ抗毒素の動物実験およびRCTでは死亡率低下に有用とされている。新生児破傷風のランダム試験では低用量筋注antitoxin 250 IU使用では71.5%(40/55)が死亡、antitoxin不使用では81.8%(45/55)が死亡した。大規模ケースシリーズでは、antitoxin使用群が不使用群より死亡率が低かったが、ウマ由来かヒト由来かでは差は見出されなかった。
  • ヒト由来の抗毒素のほうが半減期が長く、過敏症も少ないためウマ由来の免疫グロブリンより有益な可能性がある。ただし高価で手に入らない国もある。
  • 途上国では抗毒素は筋注で投与されることが多い。アメリカでも筋注が承認されている。UKでは、治療では静注、予防では筋注がPublic Health Englandによる推奨となっているが、現在静注用が品薄であり改訂も検討されている。
  • 抗毒素の投与量は、各国によって推奨量が異なる。UK、アメリカのガイダンスでは以前の推奨量よりも少ない量が記載されている(500 IU。以前は3000-6000 IU程度)。これは、予防投与による防御的血清抗体titreの研究の結果である。
  • 抗毒素の髄腔内投与は古くから検討されている。1970-1980年代には15のランダム試験が行われ、多くは死亡率において有用であったが、バイアスが多かった。2つのメタアナは死亡率について異なる結論に至っている(JAMA1991;266:2262、Trop Med Int Health 2006;11:1075)。
  • ベンゾジアゼピンはγ-aminobutyric-acid type A receptorアゴニストで、spasmコントロールの第一選択である。安価で手に入りやすい。コクランレビュー(CD003954)によると、ベンゾについて検討した研究は2つしかない。ベンゾの代謝物の半減期は長く、paralysisや人工換気なしにspasmをコントロールできる薬剤があるとよい。
  • バクロフェンはselective γ-aminobutyric-acid type B receptorアゴニストで、代用薬として検討されている。血液脳関門通過割合が小さく、内服では有用性は小さい。RCTは行われていないが、バクロフェンの髄腔内投与についてはいくつか報告がある。
  • 硫酸マグネシウムはカルシウムのアンタゴニストとして働き、spasmの軽減や自律神経症状を改善させる可能性がある。3つのRCTが行われている。ベトナムの195患者の検討では、人工呼吸を要する患者を減らしはしないものの、ミダゾラムや神経筋のblocking agentsの必要量が減った。ナイジェリアの42患者では、ジアゼパム硫酸マグネシウムを比較し、死亡率やspasmの頻度・持続時間には差がなく、マグネシウムでは入院期間が短くなる傾向があった。パキスタンの36患者では、マグネシウムジアゼパムが検討され、マグネシウムで人工換気の減少、コントロール不能のspasmの割合が減った。
  • 気道の確保は重要で、気管切開tracheostomyが行われることが多い。破傷風における人工呼吸器関連肺炎は全体の死亡率には影響がないが、入院期間、ICU滞在期間に影響したというデータがある。

 

Prognosis

  • 新生児の長期の予後をみた研究があり、頭径、hand-eye coordination scores、neurodevelopmental delayに影響する。
  • フランスのICUに入室した70の成人破傷風患者では、年齢中央値は80歳だったが、ICU退室時の死亡率は13%、1年後は16%、5年後は61%だった。
  • 平均1385日のフォローアップで、61%はfunctional statusに影響はなく、17%はlong-term care facilityに入った。
  • 途上国のデータは乏しいため、多くの患者の長期予後は不明である。

 

 

結核―Review

Tuberculosis

Seminar

Lancet 2019;393:1642

 

Epidemiology, pathogenesis, and risk factors

WHOの推計では2017年の新規発症は1000万人、うち870万人は結核high-burden30ヶ国に住んでいる。640万人で診断および届出がなされており、130万人は死亡している。

●多くの高所得国ではincidence10万人あたり10人以下。high-burden30ヶ国はほとんどがlow-incomeおよびmiddle-incomeで、発生率は10万人あたり183人。上位8ヶ国で計算すると400人を超える。

※日本(2016年)は13.9。大阪22大阪市32)、東京17

 

●世界全体のincidenceは毎年1.6%ずつ低下傾向にあると推定されているが、これはWHOEnd TB Strategyの目標である年4-5%の低下には程遠い。一方mortalityは毎年4.1%ずつ低下している。Global Burden of Diseasesによる1990-2016年のデータ(Lancet Infect Dis 2018;18:1329)によると、現在の傾向がこのまま続いた場合、UN Sustainable Development Goalの掲げる目標(2030年までに結核epidemicを終わらせる)が達せられる国々はほとんどない。

 

●耐性結核は増えている。毎年世界で50万人以上がリファンピシン耐性結核を発症しており、2017年のデータでは160684人がdiagnoseまたはnotifyされ、うち139114人だけが治療を開始された。リファンピシン耐性結核を速やかに診断・治療しなければ、今後結核の発生率が増加するという推計がある。ロシア、ミャンマー、中国、南アメリカなどでは特に重要である。

●現在全世界で17億人の人が結核菌にinfectedと推計されるが、このうちactive tuberculosisを発症するのは一部である。classicalなモデルであるlatentactiveかだけでなく、ホストと病原体の複雑なdynamicsによりスペクトラムを示すのが結核の特徴である。

●患者個々人でも結核に対する免疫反応は変動する。Granulomasなどでの局所の免疫反応も、systemicな反応と同じくらい重要ということもわかっている。大量の結核菌に暴露されても感染が成立しない人がいる一方で、少量の暴露でも簡単に感染が成立する人もいる。

●耐性結核の患者は、多くが初めから耐性株に感染している。アドヒアランス不良は、他の要素(血中濃度が不十分、肺組織でのdrug gradients、細菌表面におけるefflux pumpsなど)に比較すると、菌の耐性化の原因としては弱い。

結核菌に新規に感染した患者は、感染後最初の数年several yearsが、発症するリスクの最も高いタイミングだと考えられてきたが、historical dataの検討によれば結核発症のincubation24ヶ月程度であった。つまり、結核暴露を受けた人に早期に介入することで、発症をより効果的に予防することができるかもしれない。

socioeconomic-statusが低い人たちは結核発症リスクが高い。結核low-burdenな国では、生活の質の向上に伴って結核morbidity/mortalityが低下したケースもある。

 

Diagnosis

●胸部X線検査において、computer-aided結核検索の手法が注目されている。

結核菌が分裂する際にshedされるタンパクやbyproductsのうち、lipoarabinomannanLAM)があり、尿中LAMpoint-of-careでみることが期待されている。最初の臨床応用(BMC Infect Dis 2012;12:103)では感度が低く期待されたほどではなかったが、CD4<200HIV患者で播種性結核の検索のために用いたところmortality改善に有用であった(Lancet 2016;387:1187)。コストの点でも有用であったとの報告もある(Lancet 2018;392:292)。WHOの推奨では、HIVCD4<100、重症例、入院例での使用が記載されている。

●その他さまざまなバイオマーカーが開発中だが、商用化される予定のものはない。

 

●分子的な検査手法が結核菌の存在および耐性の確認のために用いられている。

Xpert MTB/RIFCepheid, CA, USA)はリファンピシン耐性の原因となる変異を確認できる。Xpert MTB/RIF Ultraは培養と同様の感度で結核菌を検出できるほか、リソースが少なくて済み、結果も早く出る。ただし特異度はやや低い。Xpert XDRはイソニアジド、注射薬、フルオロキノロンの耐性を検出することができ、2019年には商用化される見込みである。近年、Cepheid社はポータブルのGeneXpert Edgeなどを開発し商用化を目指している。

●その他のgenotypic testsにはRealTime MTBAbbott)、FluoroType MTBDRHain Lifescience)、BD MAX MDR-TBBeckton)、Truenat MTBなどがある。

whole-genome sequencingは耐性の検索にもよく用いられるようになっている。Genotypephenotypeの理解が進み、今後の有用性が期待される。またアウトブレイクの検討にも用いられ始めている。

Latent tuberculosis infectionには主な検査2つが用いられている(tuberculin skin testTST)とinterferon-γ releases assayIGRA))。どちらもlatentactiveの区別はできない。Immunocompromisedなホストでは感度が低いことが問題である。またどちらもactive感染症の発症のpredictive valueは低い。Online TST/IGRA Interpreterなどは有用かもしれない。

C-TbStatens Serum Institut)はより結核菌特異的なESAT-6CFP10抗原を利用した皮膚テストで、TSTと同様に安全で、IGRAと同様のaccuracyがあるとされている。

 

Treatment

bedaquilinedelamanidの登場により(特に耐性の)結核治療に変化がみられている。

pansusceptible結核の治療は大きな変化はない。4剤を2ヶ月、2剤を4ヶ月。ただし、2014年の研究では、hard-to-treat phenotype(塗抹菌量が多い、空洞ありなど)では6ヶ月では不十分かもしれないと結果が出ている。

dailyの治療は週3回の治療よりも治療効果が高そう。

high-doseリファンピシンやフルオロキノロンを使用することで治療期間を短縮する試みがある。High-doseリファンピシンは有望だが、フルオロキノロンはいまいち。治療期間短縮のために、リファペンチン、クロファジミン、新規薬のPA-824pretomanid)も検討されている。

 

●イソニアジド耐性結核は最も頻度の高い耐性結核で、様々な治療が試みられている。2017年のメタアナによると、治療レジメンは非常に多様であったが、フルオロキノロンを含むレジメンのアウトカムがよかった(Lancet Infect Dis 2017;17:259)。WHOINH耐性結核ではフルオロキノロンの使用を勧めているが、最適な治療方法は検討の余地があるとしている。

 

●リファンピシン耐性の結核も徐々に増えているようである。bedaquilinedelamanidの登場や、linezolidclofazimineの再検討によって、リファンピシン耐性結核の治療は変化している。WHOは、大部分のリファンピシン耐性結核all-oralの治療が推奨されるとしており、また治療期間を従来の18-24ヶ月から9-12ヶ月とするレジメンがroll outされている。

bedaquiline2013年に初めてWHOに推奨された薬剤で、これまでのデータでは治療成功は75%を上回る。通常bedaquilineが投与されるのは多剤耐性結核の患者であり、この治療成功率は特筆に値する。南アフリカの大規模なレトロの研究では、高い治療成功率と死亡率低下が示された(Lancet Respir Med 2018;6:669)。Bedaquilineinjectable drugの比較では、bedaquiline群で治療成功が有意に多く、またbedaquiline投与の遅れが死亡率と関連していた(Clin Infect Dis 2018; online Aug 28)。これら試験ではbedaquiline24週の投与がなされていたが(エンドポイント判定を早めるため)、ふつうの臨床では長期間投与されることが見込まれる。フランスでの長期間の投与の検討では安全性に問題はなかった(Eur Respir J 2016;49:1601799)。BedaquilineWHOもリファンピシン耐性結核治療のcore drugとして推奨されている。感受性の結核の治療でも試験が行われている(SimpliciTB trial)。

delamanid2014年にWHOで推奨された新規薬剤である。多剤耐性結核治療において、従来治療にdelamanidプラセボを上乗せして比較したRCTphase 3 trialでは、24週間の治療で喀痰培養陰性化までの時間は有意差はつかなかった(missing dataを除外すると差はついた)(Lancet Respir Med 2019; online Jan 7)。

pretomanidはニトロイミダゾール系の新規薬剤である。SimpliciTB trialNiX-TB trialが行われている。後者はシングルアームで高度の耐性結核において、高用量リネゾリド(1200mg)、bedaquilinepretomanidが併用され、75例中89%cureを達成した。

●他にも新規薬剤はいくつか開発されているが、資金不足、試験に時間がかかるなどの理由で研究の進行は遅い。

●リネゾリドは二つのランダム化試験で効果が示されており(NEJM 2012;367:1508Eur Respir J 2015;45:161)、また多剤との併用での試験も行われている。骨髄抑制、視神経炎、末梢神経炎などの副作用は懸念されるが、例えば投与間隔を毎日から隔日にしたり、2-3ヶ月経ったところで終了したりといった投与方法が検討されている。Oxazolidinoneとしてsutezolidも開発されている。

clofazimineRCTでリファンピシン耐性結核への有効性が示されている。また感受性のよい結核の、治療期間を短縮する目的でも検討されている。

Lancet 2018;392:82112500例のRFP耐性結核のデータを集めたメタアナで、いくつかの予想されなかったアウトカムが得られた。一つはよく用いられる薬剤、カナマイシン、カプレオマイシン、ピラジナミド、イチオナミド、パラアミノサリチル酸は治療アウトカムを悪化させるという結果であった。もしかすると毒性の問題かもしれない。またbedaquilinelinezolid、第3世代フルオロキノロンを含むレジメンは死亡率がよかった。各薬剤について、耐性がドキュメントされたものは、投与してもベネフィットがないということも示された。

WHOの耐性結核治療2018 updateでは、RFP耐性結核の患者のmajorityall-oralで治療されるべきで、使用薬剤にはbedaquilinelinezolid、第3世代フルオロキノロンclofaziminecycloserineが含まれるとした。これまでcore drugとされていた注射薬の優性順位は下がった。

RFP耐性結核の治療期間を短縮する試みもある。Bangladesh regimenAJRCCM 2010;182:684)は9-12ヶ月のレジメンであるが、複数の観察コホート研究で有用性が示されている。Phase 3試験(STREAM 1試験:カナマイシン、イソニアジド、ピラジナミド、エタンブトール、モキシフロキサシン、クロファジミン、エチオナミド併用)は、18-24ヶ月の治療と比較し、primary outcome132週時点での培養陰性)については非劣性であったが、死亡率や再発リスクは高かった(NEJM 2019;380:1201)。WHOはこのレジメンを2016年のupdateで推奨し、2018年のupdateでも推奨を維持したが、各薬剤に耐性がないこと、bedaquilienlinezolidを含むレジメンより効果が劣る可能性をコメントしている。また、カナマイシンは長期使用による聴力障害が問題となる。注射薬をbedaquilineに置き換えたSTREAM 2試験が行われている。

 

●現在の結核治療は感受性を基に行われているが、疾患の重症度や様々な背景により、薬剤の種類や投与期間は変更させたほうがよい場合がある。小児の非重症RFP耐性結核での9-12ヶ月の治療や、感受性のよい肺外結核での12ヶ月の治療などはすでに標準治療である。また感受性のよい結核では、空洞病変のある例や塗抹陽性が2ヶ月以上遷延する例では再発リスクが高く(Thorax 2019;74:291)、耐性結核でも同様のデータが報告されている(Int J Infect Dis 2018;3:65)。小児、HIV、糖尿病、その他合併症を有する患者でも治療方法や期間を調整する必要がある。

 

Support for successful outcomes

directly observed therapyDOT)は歴史的によく用いられている。異なるサポートアプローチをまとめてDOTと呼ぶことがあるため、DOTの有効性自体には研究によって様々な報告がある。最近は電話やスマートフォンを用いた手法が用いられている。

WHOEnd TB Strategyの最初のpillarpatient-centred careであるが、明確な定義や手法は定まっていない。社会・経済的サポートは重要で、近年conditional cash transfer programmes(条件付現金給付)が結核の死亡率低下に寄与したとの報告もある。

 

Prevention

BCGワクチンは小児の重症・播種性結核を防ぎ、感染を30%減少させ、成人についてもいくらか予防効果がある。長期の予防効果はないと考えられている。最近ではBCGワクチンの肺内投与が注目されている。

●新規ワクチンM72/AS01E結核感染のある成人において活動性結核発症を50%減らしたと報告され、より大規模な試験の実施が検討されている(NEJM 2018;379:1621)。

結核感染に対する治療としては、4ヶ月のRFP9ヶ月のINHと比較して同等で(NEJM 2018;379:440)、安全性にも問題なかった(同号454)。耐性への懸念は残る。

12週間の高用量INH+高用量rifapentine1回は安全性が示され、2歳以上の小児で用量がestablishされている。またHIV患者では9ヶ月INHと比較して1ヶ月INH+rifapentinemight be as effectiveであるとpreliminary dataで示されている。WHOINH6-9ヶ月、daily RFP 4ヶ月、daily RFP+INH 3ヶ月、weekly INH+rifapentine 12週のいずれかを推奨している。

RFP耐性結核に暴露された人においては選択肢が少ない。フルオロキノロンをベースとした複数の薬剤を使用する方法がある。メタアナラシスでは90%の発症予防の報告があり、コスト的にも有効であったとの報告もある。現在、レボフロキサシンやdelamanidを使用したレジメンが検討されている。

黄色ブドウ球菌菌血症

 

参考:

INTENSIVIST 2019;11:3 「重症ブドウ球菌菌血症に対する治療」

Hospitalist 2013;1:241 「フォーカス不明の菌血症・敗血症」

AHA 感染性心内膜炎ガイドライン2015

循環器学会 感染性心内膜炎ガイドライン

 

黄色ブドウ球菌菌血症(SAB)の90日死亡率は15-50%Clin Microbiol Rev 2015;28:603)。

MRSAではさらに死亡率は上がる。

 

【検査】

SABは血培1セットで感度93%2セットで97%3セットで100%J Clin Microbiol 2007;45:3546)。

●血液培養から検出された場合には1セットでも原則コンタミネーションとは判断しない。コンタミは起きうるが、コンタミと判断して後に真の菌血症と判明したときの不利益が大きすぎるため。

persistent bacteremia:具体的な定義はない。7日を超えて持続するものなど。治療後おおむね72時間を超えたものは危ないと考えてよいだろう→播種病変を積極的に検索する。

 

【治療―抗菌薬の選択】

MSSA菌血症をVCM単剤で治療すると、βラクタム(MSSAペニシリンCEZなど)で治療した場合よりもアウトカムが悪い。初期治療ではCEZ+VCMを考慮。

CID2015;61:361:レトロの観察研究でMSSAMSSAペニシリンまたはセファゾリンで治療した場合、VCM単剤で治療した場合よりも死亡のHR 0.5795%CI 0.46-0.71)とよかった

 

【治療―期間】

●ふつうは4週間以上。

●2週間が許容されるのは、明らかな侵入門戸がコントロールされている、血管内異物は速やかに除去されている、播種病変がない、治療反応性がよい、免疫不全がないなどの場合。

CID 1992;14:75:55人のカテ関連SABを観察し、IEまたは骨髄炎を発症した9人を除く46人を3ヶ月追跡したところ、静注抗菌薬を10日未満だけ投与された18人中3人が再発、10日以上投与された28人では再発はなかった。3日以上菌血症・発熱が続く場合はcomplicatedとしての対応を要する。10日未満の治療は勧められないが、14日を超える治療は不要かもしれない。

 

●心内膜炎では、

・循環器学会ガイドライン:自己弁4-6週、人工弁6-8週(8週を目安と記載あり)

AHAガイドライン6週(uncomplicated自己弁)、6週以上(complicated自己弁、人工弁)

●骨・関節では、

・一般的に骨髄炎では4-6週とされるがエビデンスは乏しい(NEJM1997;336:999)。

IDSA椎骨骨髄炎ガイドラインには6週間:Lancet 2015;385:875において6週が12週に対して非劣性であった。

IDSA MRSAガイドラインにはMRSA骨髄炎では8週以上。エキスパートオピニオンとして1-3ヶ月、あるいはさらに長期の抑制療法。特にデブリできなかったときなどの記載あり。関節炎では3-4週。

カテーテル関連では、

 ・黄色ブドウ球菌での明確な治療期間は定説がない。播種病変を考慮すれば4-6週。カテはすべて抜去。条件によっては2週間でもよいかもしれない(IEがない、人工弁がない、免疫不全がない、72時間の治療で菌血症が消失)。

 

 

【フォーカス】

●心内膜炎

●脊椎(骨髄炎、傍脊柱膿瘍)

腸腰筋膿瘍

●関節炎

髄膜炎、脳膿瘍、感染性脳動脈瘤

●感染性血栓

●その他深部膿瘍

 

 

感染性心内膜炎における補足

黄色ブドウ球菌によるIEは増加傾向でMRSAは全体の7.5%。医療関連、院内(透析、血管内カテーテル、手術など)、人工物、高齢者、IV drug user、慢性皮膚炎、ピアシングなど(循環器学会ガイドライン

黄色ブドウ球菌IEの死亡率は20%以上。人工弁では47.5%など。

●経胸壁心エコーは積極的に行う。

SAB全例に経食道心エコーは難しいだろう。Clin Infect Dis 20122;53:1ではIEリスクをprolonged bacteremia >4 days、心植え込み物、血液透析患者、脊椎・脊髄感染症として2つのコホートを観察したところ、3ヶ月の観察期間でdocumented IEを発症した13/13人、39/40人でいずれかの項目が当てはまったと報告。

 

治療:

循環器学会ガイドライン

MSSA

CEZ2g q8hを第一選択とする。治療期間は血培陰性化後4-6週間。人工弁では8週を目安とする。

ペニシリンアレルギーではダプトマイシン(ホスホマイシンを4-6週併用)、バンコマイシン、テイコプラニン。

●自己弁ではβラクタム+GMは推奨しない。腎機能の観点から。

CEZは中枢神経移行がよくないためパニペネム・ベタミプロン(カルベニン)、MEPMVCMなど。

●人工弁ではβラクタム+GM+RFPを推奨する意見あり。GM2-3mg/kg11回・2週、RFP450-600mg/day・分1-26-8週。

 

MRSA

VCMまたはDAPが第一選択。治療期間は血培陰性化後4-6週間。人工弁では8週を目安とする。

VCMはローディングとして30mg/kg15mg/kg 12時間毎 目標トラフ15-20µg/mL

DAP8-10mg/kgで開始する。≧10mg/kgを推奨する意見もある。

DAPにβラクタム・アミノグリコシドRFP、ホスホマイシン、STの合剤が有用とする検討あり。人工弁IEでは推奨される。カルベニン2-3g/daySBT/ABPC9g/dayABPC6g/dayGM2-3mg/kg/dayRFP450-600mg/day、ホスホマイシン6g/dayST5-8mg/dayなど。

VCMGMの併用は自己弁では推奨されない。

●人工弁ではVCM+GM2+RFP6週を推奨する。量は上記MSSAと同様。RFP600-1200mg/dayとする意見があるが、CNSにおける後ろ向き研究や整形外科領域の研究に基づくもの。

 

AHAガイドライン2015

自己弁

IDUの右心系IE

●略

non-IDUs

MSSA/MRSAの自己弁IEではGMshould not be used

MSSAで脳膿瘍がある場合はCEZでなくナフシリンがshould be used

MSSAMRSAかわかるまでVCMと抗MSSAβラクタムを併用する有用性はuncertain

MSSAによるuncomplicatedの左心系自己弁IEでは6週のナフシリンがrecommendedComplicatedではat least 6週がrecommendedComplicatedは例えば弁輪周囲膿瘍、敗血症性塞栓など。

MRSAではVCMが伝統的に使用されrecommendedDAPreasonable alternative。量は8mg/kg以上がよいという研究があるが明確にされていない。

 

βラクタムにintolerant

ペニシリンに対してnonanaphylactoidな反応がある場合にはCEZreasonable

MSSA IEVCMを用いる場合はβラクタムアレルギーの評価を行うべきである。DAPを用いることもreasonableである。

CLDMは推奨されない。

 

併用

MSSA/MRSA IERFPをルーチンに使用することはnot recommended

hVISAVISAVRSAの治療ではDAPLZD、キヌプリスチン・ダルホプリスチン、セフタロリンなど。

 

人工弁

MSSAではナフシリン/オキサシリンとRFP併用、MRSAではVCM+RFPが推奨。治療期間は6週以上。

GMを始めの2週追加すべき。GM耐性があればキノロンmay be used

●手術推奨。特に心不全あるとき。

RFP900mg/dayを分1または分36週以上。GM3mg/kg/day1-3回に分けて、2週。