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医師の自学自習のためのブログ

プレセデックス(デクスメデトミジン)の使用法

一般名:デクスメデトミジン塩酸塩

 

形状

200 µg/2 mL/瓶 →生食48 mLを加え200 μg/50 mLとして使用する

200 μg/50 mL/シリンジ

 

用法用量

初期負荷投与:6 µg/kg/hの投与速度で10分間投与(=1μg/kg)

維持量:0.2-0.7 µg/kg/hで持続投与

※維持投与から開始してもよい

 

通常は4 µg/mLにして使用する。

4 mL/hなら16 μg/h、5 mL/hなら20 µg/h。これを体重で割ればよい。

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(プレセデックス適正使用ガイドより) 

 

注意

循環血液量が低下している状態では血圧低下をきたしやすい

ボーラス投与、急速な静脈投与は避ける

徐脈が現れることがある

梅毒の検査

梅毒の診断は血清学的検査に頼っている。血清学的検査には、「非特異的な脂質抗原に関する検査」と、「梅毒トレポネーマ抗体に関する検査」がある。

非特異的な脂質抗原に関する検査は、非特異的だが(=生物学的偽陽性がある)治療効果判定に利用できる。梅毒トレポネーマ抗体に関する検査は特異的だが、治療によって変化しにくいので治療効果判定には利用できない。

様々な用語があり混乱してしまうが、梅毒診療ガイド(2018年)にならい、本記事中では「非特異的な脂質抗原に関する検査」を指して「RPR」、「梅毒トレポネーマ抗体に関する検査」を指して「梅毒トレポネーマ抗体」という言葉を主に使いたい。

 

RPR

●lecithin、cardiolipin、cholesterolなどのlipoidal antigensに対する生体の反応をみる検査。次のような用語は同義と考えてよい。

 nontreponemal test(NTT;非トレポネーマ検査)

 serologic test for syphilis:STS

 脂質抗原検査

 

●検査の手法として、RPR(rapid plasma reagin)、VDRL(Venereal Disease Reference Laboratory)などがある。日本で行われているのはRPRなので、非トレポネーマ検査=RPRと考えてよい。RPRは患者血清中の抗体様物質「レアギン」を検出する。

●RPRの偽陽性は、生物学的偽陽性(biological false positive)として有名である。一部の感染症HIVなど)、自己免疫疾患、高齢、などによって偽陽性となる(NEJM 2020;382:845)。

 

●従来RPRは用手的な手法を用いて、抗原抗体反応によって生じる凝集塊が肉眼的に見える検体の最低希釈濃度によって1:32(=32倍に希釈した検体では陽性だが、64倍に希釈した検体では陰性)などと表現されてきた。現在では自動分析機器によって16.0 R.U.などと連続する実測値で表現される場合が多い(Hospitalist 2017;5:553)。

●現在は、原則的に自動機器による測定が推奨される。陽性・陰性のカットオフについては、用手的な手法と自動機器による測定はおおむね同等と考えてよいらしい(梅毒診療ガイド)。

 

以下、用手的な手法である「RPRカードテスト」の添付文書を参照する。

・RPRカードテストは定性試験と定量試験の両方ができる。

・定性試験では凝集塊を肉眼で見て「陽性」か「陰性」かを判定する。反応の度合いによって結果が(+)、(2+)など半定量的に表現されていても、そこから定量的な値を推定しない。陽性であれば必ず定量試験を行う。

定量試験では検体を倍数希釈し、凝集塊が陽性となる最も薄い濃度の希釈値を結果とする。

・2期梅毒などで非常に強い反応がある場合に、RPRが逆説的に偽陰性となる現象(プロゾーン現象)が知られる。検体を希釈することで陽性となる。

 

梅毒トレポネーマ抗体

●検査全体を指して、NEJMの梅毒のレビュー(NEJM 2020;382:845)では「treponemal test:TT」、日本の梅毒診療ガイド(2018年)では「梅毒トレポネーマ抗体」と呼んでいる。

●様々な手法があるが、現在の日本では「T pallidumに対する特異抗体を凝集反応によって検出する検査」を用いる。用いる試薬によって、TPHA、TPPA、TPLAなどと呼ぶが、これらをまとめてTPHAと呼ぶこともあるようで、混乱のもとになっている(※)。

 赤血球凝集によるHA法=TPHA

 ゼラチンなどの感作粒子によるPA法=TPPA

 ラテックス粒子によるLA法=TPLA

このほかにFTA-ABS法がある。TPHAの偽陽性が疑われるようなケースでは、確認のためFTA-ABSを試してもよいだろう。

●梅毒トレポネーマ抗体は、原則的に「陽性」か「陰性」かが大事で、その定量値を重視する必要はほぼない(経過を追うときや、梅毒かどうか迷うケースでは有用かもしれないが)。治療効果判定にはRPRを用いる。

●梅毒トレポネーマ抗体の偽陽性もなくはないらしい(NEJM 2020;382:845)。

 

(※)SRLのページ(http://test-guide.srl.info/hachioji/test/list/33)では、

 梅毒定性TP抗体(LA)LA法 保険請求上は「梅毒トレポネーマ抗体定性」

 梅毒定量TP抗体(LA)LA法 保険請求上は「梅毒トレポネーマ抗体定量

 梅毒定量TPHA PA法 保険請求上は「梅毒トレポネーマ抗体半定量

と記載があり紛らわしい。PA法なのにTPHAといってよいのか?

ともかく梅毒定量TP抗体(LA)を出せばよいだろう。

 

RPRと梅毒トレポネーマ抗体の組み合わせ

●梅毒のスクリーニングではRPRと梅毒トレポネーマ抗体を組み合わせて考える。2つのアルゴリズムがある。

 traditional algorithm    まずRPR→梅毒トレポネーマ抗体

 reverse-sequence algorithm まず梅毒トレポネーマ抗体→RPR

traditionalでは、RPRで「梅毒」「生物学的偽陽性」含めて広くスクリーニングし、梅毒トレポネーマ抗体で梅毒かどうか確認する。reverse-sequenceでは、梅毒トレポネーマ抗体で梅毒かどうかをまずスクリーニングし、RPRで治療対象かどうか確認する、といった戦略。

とはいえ、現在の日本ではRPRと梅毒トレポネーマ抗体を同時に測定するのが普通だと思われるので、そこまで考える必要はない。

 

●梅毒の自然経過とRPR/梅毒トレポネーマ抗体の推移は以下の図を参照。

(図:NEJM 2020;382:845より)

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●感染超早期には、検査手法にもよるようだが、まず梅毒トレポネーマ抗体、次にRPRが上昇してくるらしい。

●1期ではRPRがそれほど高くない。個人的な経験では、RPRが陰性だったり1ケタだったりということも多い。1期梅毒っぽい症状があるのに検査陰性ということはありうる。そのときは時間をあけて再検査。

●2期の症状があるころには、RPRが2ケタから3ケタあるのはざらである。

●無症状でRPR陽性、梅毒トレポネーマ抗体陽性(=潜伏梅毒)という場合は、治療すべきかどうかの判断が難しい。病歴(過去に症状があったか、リスクのある性行為があったか、治療歴はあるか、他の性感染症はあるか、など)を詳しく聴取する。数値だけでは決めにくいところもあるが、RPRが16以上であればほぼ治療対象、RPRが8~16の場合は梅毒の可能性が高いと判断したときに治療、RPRが8未満であれば治療しない、といった考えでよいのではないか。RPRを経時的にフォローするというのも手だろう。

 

●治療によってRPRがおおむね2分の1以下(自動化法)、4分の1以下(用手法)になっていれば治癒と考える。梅毒トレポネーマ抗体の値も下がっていれば、治癒している可能性はさらに上がる。(梅毒診療ガイド2018)

●治療によってRPRが4分の1以下にならず、再感染も疑われなければ「serologic nonresponse」である。早期梅毒では、6ヶ月時点で20%、1年時点で11.5%がserologic nonresponseというデータがある。HIV患者では一般に反応は遅い。(NEJM 2020;382:845)

●serologic nonresponseの意義は定まっていない。再治療すべきか、神経梅毒の検査をすべきか、といった臨床的疑問がある。早期梅毒治療後であれば1年程度、後期梅毒治療後であれば2年程度待ってから、再治療や神経梅毒の検査を考慮したほうがよいかもしれない。(NEJM 2020;382:845)

 

●治癒後のフォローはどのくらいの期間すべき? 梅毒診療ガイド2018には1年程度フォローするように、と記載がある。

梅毒 自然経過とステージ

NEJM 2020;382:9

The Modern Epidemic of Syphilis(Review)

・Natural history and clinical recognition of syphilisの項をまとめた。

・用語の日本語などは「梅毒診療ガイド」(2018年)を参照。

 

感染早期

●梅毒トレポネーマ(Treponema pallidum)は感染後数日で離れた臓器・組織へ播種する。中枢神経や、妊婦であれば経胎盤的に胎児へも移行しうる。

●中枢神経への浸潤(CNS invasion)は感染者全体の40-50%に起きているという。

●通常1期、さらに2期梅毒へと進むが、ほとんど症状がないまま潜伏梅毒となる場合もある。

 

1期梅毒 primary syphilis

●感染から2-6週後にみられ、陰部の硬性下疳chancreが特徴的。硬く(indurated)、潰瘍性(ulcerative)。ヘルペスなどに似る。

●Chancrepainlessが多いが、painfulでもよい。外性器のほか、肛門、直腸、口腔内に見られることもある。

●鼠経などのリンパ節腫脹regional lymphadenopathyもみられる。

 

2期梅毒 secondary syphilis

●1期梅毒の後1-2ヶ月でみられる。nonpruritic rashが特徴的で、手掌・足底含め全身に見られる。梅毒性バラ診、丘疹性梅毒診、扁平コンジローマなど(※)。1期の病変(chancreなど)と2期の病変(rashなど)が同時にみられる例も9%あるという。

●他に様々な全身症状がみられる。発熱、全身のリンパ節腫脹、粘膜病変、脱毛、骨膜炎periostitis、肝炎、腎炎など。

●肝炎ではALPが高く、アミノトランスフェラーゼはminimally elevatedとされる。

 

早期潜伏梅毒 early latent syphilis

●1期と2期の間の時期や、2期の症状が自然軽快した後の無症状の状態。

●Early latent24%で、rashなどの症状が再燃することがある(recurrent secondary syphilis)

●1期や2期でも、症状が軽微なために患者自身や医療者が気付かなかったり、受診しても診断に至らなかったりすることも多い。CDCearly latent stageを感染から1年以内としているが、これは1年以内ではrelapseしやすいためである。

 

後期潜伏梅毒 late latent syphilis

●感染から1年以上経過して無症状な状態は後期潜伏梅毒(late latent syphilis)。1年以上経つと2期の症状が再燃することはまれになる。

70%は生涯無症状のままだが、30%2-50年の経過でtertiary syphilisへ進む。

 

3期梅毒 tertiary syphilis

●過去には「晩期梅毒」とも。

●下記のlate neurosyphilisのほか、ゴム腫gummatous disease、心血管病変、眼、耳病変をきたす。

 

神経梅毒 neurosyphilis

●1期、2期、潜伏梅毒、3期のいずれの病期に存在していてもよい。

●脳脊髄液の異常所見を伴う中枢神経へのトレポネーマ浸潤(CNS invasion)は、感染早期の50%の患者に起きている。症状がないことも多い(=asymptomatic neurosyphilis)。脳脊髄液の異常は通常の治療によって改善する。

early neurosyphilismeningeal syphilismeningovascular syphilisを呈しやすい。厳密にはCNSではないが、眼や耳の梅毒もみられることがある。

late neurosyphilisは感染から概ね5-12年ほどの経過で、血管meningovascular、実質parenchymatousが障害される。片麻痺hemiplegia、失語aphasia、痙攣など。脊髄の血管もよく障害され、脊髄炎、脊髄血管炎をきたす。実質の障害では、general paresisや脊髄癆tabes dorsalisを呈する。

結局マスクは付けたほうがいいんですか?

患者さんの質問。

普段なら「予防効果はないと言われてますけどね。風邪引いて咳がこんこん出ているときは、他の人に移さないように付けたらいいと思いますよ。でも喘息とかで咳出る人もいるしね」とでも答えるところですが、一連のコロナ騒動で、

 

★マスクの生産が追い付かない。

★町が住民にマスクを配る。とりあえず妊婦と高齢者優先で。

★どこどこの病院でマスクが盗まれた。

★マスクが高値で転売されている。

★元総理大臣「私はマスクをしないでオリンピック頑張る」

★マスクせずに咳してたら、公共交通機関でトラブルになった。

とかいうニュースを日々見聞きすると、少しは考えたくもなります。

 

まず前置きしたいのは、こういった社会の不安を掻き立てるような状況では、「科学的根拠」は人々の心に響きにくいということ。

「とにかく不安だ不安だ。マスクくらいしなきゃ」

「私はいいけど子供用のマスクは確保したい」

「高かったけど、お店にあるだけマスク買ってきたよ」

などと言っている人に「感染者はマスクをすることで人に移しにくくできるけど、非感染者がマスクをしても予防効果はないんだよ」などとドヤっても無意味です。

ここではあえて「仮に非感染者がマスクをして有用だとしたらどう有用なのか」を考えてみます。科学的根拠のない私見です。

 

あなたは感染者かもしれない

非感染者がと言っておきながらアレですが、まず第一はこれだと思います。

今回のコロナに限らず、多くの呼吸器感染症には不顕性感染や潜伏期があります。無症状にも関わらず病原体を持っていたり、発症する前に数日のタイムラグがあったりする。この期間に他人に病原体をばらまく可能性があります。

今は無症状でも、2日後に発熱していない保証がありますか? という話で、未来のことなど誰にもわからないわけです。「症状のない人」の中に、一定の割合で「感染者」がいるのであれば、全ての「症状のない人」がマスクをするのは理にかなっているようにも思います。

それに「無症状」というのも厄介な表現で、全く喉がいがらっぽくない、全く咳がない、全くだるくない、全く何もない、というのは相当な自信家では。症状は大事です。しかし所詮は自己申告でしかない。

 

湿度を保つ

自分の実家は冬に乾燥しやすい地域で、年末年始などに帰省すると顔も唇も喉もカピカピになります。長時間飛行機に乗るときもそう。それがきっかけで本格的に風邪をひいたりもします。

人間の息というのは湿っているので、マスクをして鼻や口の周りを覆ってあげれば、自分の呼気によって吸う息も多少湿る。湿度を保つことで鼻や喉の粘膜が「いくらか」守られ、病原体の侵入を「いくらか」緩和できるはずです。

 

鼻や口に手を持っていかない

コロナウイルスにしろインフルエンザウイルスにしろ、多くの病原体は空気中をふわふわ飛んで移動するわけではない。

咳やくしゃみによって飛び散ったしぶきの中に病原体がいて、その辺の机やコップやスマホにくっつく。それを触った人がまた別の机やコップやスマホを触る。そうやって移動していって、最終的に人の鼻や口に入った病原体が病気を起こす。飛沫感染接触感染です。

人間は無意識に鼻や口を触ります。それはもうしょうがない。

ではマスクをしていたら? マスクをしっかり付けていれば、触ろうとしてもそこにマスクがあるので鼻や口まで届かないでしょう。万が一手に病原体が付いていても、鼻や口に入ることを「いくらか」防げる。

 

 

さしあたり非感染者(正確には無症状者)がマスクを付けるメリットで思いついたのは上の3つくらいです。ただ単に安心するためとか、周囲の人に配慮していることをアピールするとか、そういうのは省いています。

 

ところでマスクは再利用してもいいのか。自分はいいと思う。マスク表面に病原体が付着していてもいずれ失活するはずで、どういう条件で何時間置いたらいいのかまでは分かりませんが、例えば洗剤で洗う、煮沸する、オートクレーブにかける、とかであれば、大抵の病原体は確実に死ぬでしょう。マスク自体の耐久性は知りませんけど。

病原体は乾燥・高温に弱いので、天日に干す、ドライヤーで乾かす、とかでもいけると思います。

 

 

電車に乗ったりすると、子供に無理やりマスクさせている親がけっこういる。

子供たちは車内の手すりやら扉にぺたぺたぺたぺた触りまくり、マスクは取ったり付けたり取ったり付けたり。何なら素手でお菓子をぼりぼりし、その手でスマホやゲームをピコピコ……お父さんお母さん、大変な道中お察しいたしますが、それ意味ないから! 

ウイルスは空気中ではなく、そこの手すりあたりにいるのですよ。

 

唯一信頼できるのはやはり手洗い/手指消毒です。家に帰ってきたらとかそういうのではなくて、ストイックな絶え間ない手洗い。

何かに触る前に手洗い。何かに触ったら手洗い。何も触ってなくても思い出したら手洗い。食べ物を手でつかむ前には手洗い。お店に入るとき、出るときには手洗い(最近出入口に消毒液を置いているお店が多い!)。

手洗いを十分に徹底した上で、さらにきちんとマスクをすれば、マスクの効果も実は証明できるんじゃないんでしょうか? 病原体のついた手でお菓子ぼりぼりしてたら、どれだけ普段マスクしていても、そりゃ意味ないでしょうよ。

MRSA菌血症に対するβラクタム上乗せ(原著)

JAMA 2020;323(6):527-37

 

MRSA菌血症において、バンコマイシンorダプトマイシン)にMSSA用βラクタム(フルクロキサシリンorクロキサシリンorセファゾリン)をランダム化後1週間併用する群が、併用しない群と比べて、複合エンドポイント(90日死亡、5日目の持続菌血症、relapsefailure)が改善するかランダム比較。オープンラベル。

★併用群でAKIが多く、試験は途中でリクルート中止。

★複合エンドポイントは併用群で59/170人(35%)、68/175人(39%)(p=.42)。ただしDay 5の持続菌血症は併用群で有意に低かった(11% vs 20%, p=.02

AKIは併用群34人(23%)、非併用群9人(6%)(p<.001)。

 

背景

MRSA菌血症の治療において、MRSA薬とβラクタムを併用するとアウトカムが改善するという仮説がある。菌血症持続期間や死亡率の低下につながったとする報告もある。

 

方法

●オープンラベル、パラレル、ランダム化、優越性試験。20158月~20187月にオーストラリア、シンガポールイスラエルニュージーランド27施設からリクルート

●対象は入院患者、血培でMRSA陽性、初回血培陽性の72時間以内にランダム化可能、18歳以上、ランダム化後少なくとも7日は入院が見込まれる、など。主な除外はβラクタムにtype 1の過敏症既往あり、血培で複数菌種検出(コンタミと判断される場合は除外せず)、過去に本研究に参加歴あり、妊娠、担当医が患者の参加を許可しない(?)、βラクタム系抗菌薬をすでに使用中でやめられない、48時間以内の死亡する見込みが高い、など。

 

バンコマイシンかダプトマイシンかは担当医が選ぶ。

●βラクタム併用群では、フルクロキサシリン(2g, q6h, オーストラリアとニュージーランド)またはクロキサシリン(2g, q6h, シンガポールイスラエル)を、ランダム化日をday 1としてday 7まで併用される。Non type 1ペニシリンアレルギー歴がある場合はセファゾリン2g, q8hが投与。透析患者ではセファゾリン2g/回・週3回透析後が投与。

 

●プライマリエンドポイント:90日間の以下の項目による複合エンドポイント(全死亡、day 5時点での菌血症持続、microbiological relapse(血培陰性化後の72時間以内に再度血培からMRSA検出)、microbiological treatment failure(ランダム化後14日以降に無菌検体から再度MRSA検出))。

●その他のエンドポイント:144290日時点での全死亡、day 2での菌血症の持続、day 5での菌血症の持続、7日以内のAKImodified RIFLE criteriastage 1以上:血清クレアチニン値が1.5倍以上。ただし尿量の基準は含めず)または1-90日時点での新規の腎代替療法microbiological relapsemicrobiological treatment failure、静注抗菌薬投与期間。

●プライマリエンドポイントがコントロール群で30%に発生すると推定。臨床的に意味のある絶対リスク差を12.5%と設定し、α=0.05、パワー80%の検出率としてサンプルサイズを440と計算した。

 

●中途打ち切り:342人が参加した時点でAKIが併用群で有意に高く、新たなリクルートは中止された。

 

結果

1431人がスクリーニングされ、356人がランダム化。174人が併用群、178人が単剤群に割付。170人、175人がprimary analysisに回った。

●年齢中央値は64歳。男性6-7割。バンコマイシンの投与を受けた患者は98%1回以上ダプトマイシンを投与された患者は4%いた。

 

Primary outcome:併用群で59/170人(35%)、68/175人(39%)(リスク差-4.2%, p=.42)。per-protocolstudy site、透析有無で見た場合でも傾向は変わらなかった。

Secondary outcomes:死亡率などに有意差はなし。Day 5persistent bacteremiaは併用群で有意に低かった(11% vs 20%, p=.02)。AKIについて(ベースで透析している患者は解析から除外)は併用群で有意に高かった(34人(23% vs 9人(6%, p<.001)。

 

●併用群でAKIが多かったことから、クレアチニンについてpost hoc解析を行った。併用群でAKIを発症した34人(23%)のうち、6人が腎代替療法を必要とした。90日時点で2人は腎代替療法を継続。7人は死亡していた。単剤群でAKIを発症した9人(6%)のうち、2人が腎代替療法を要した。90日時点では腎代替療法を行っている患者はゼロ。3人が死亡していた。

●併用群では、90人がフルクロキサシリンのみ、21人がクロキサシリンのみ、27人がセファゾリンのみ投与され、AKIを発症したのはそれぞれ25人(28%)、5人(24%)、1人(4%)だった。

 

考察

●本研究では、βラクタム併用による臨床アウトカムの改善には有意差がつかず、またAKIの発症が多いという結果になった。

●血培陰性化までの時間(duration of bacteremia)は、菌血症治療の代理エンドポイントとして有用とされるが、本研究ではday 5の血培陰性化に有意差が付いているにもかかわらず、プライマリアウトカム全体では差がつかなかった。

セファゾリンが、抗ブドウ球菌ペニシリンよりもAKIの発症が少ないという知見は、過去のMSSA菌血症に関する後方視的研究で示されている(Clin Microbiol Infect 2019;25:818)。本研究ではさらに、MRSA菌血症においてバンコマイシンと併用した場合でも同様であることが示された。セファゾリンと抗MRSA薬の併用が、AKIのリスクを減らしつつMRSA菌血症を治療するよい選択肢である可能性は残っている。

limitationMRSAの感受性の問題があることから、研究を実施した地域以外の地域で結果をそのまま当てはめることはできない。本研究の大部分の患者はバンコマイシン+フルクロキサシリン/クロキサシリンを投与されている。ランダム化前72時間の抗菌薬投与には介入していない。61%は事前にβラクタム投与を受けていた。オープンラベルである。