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医師の自学自習のためのブログ

結核治療中断時の対応

結核治療中に、副作用やアドヒアランスの問題で中断されてしまうケースがある。

(参考:IDSAガイドライン Clin Infect Dis 2016;63:e147)

 

初期治療時(例:INH+RFP+EB+PZA 2ヶ月)

・中断期間14日未満:3ヶ月以内に完了できるなら予定の内服回数になるまで

・中断期間14日以上:最初から

 

維持治療時(例:INH+RFP 4ヶ月)

・80%以上内服できている

 ・維持治療開始時の塗抹陰性:決められた日数で終了

 ・維持治療開始時の塗抹陽性:予定の内服回数になるまで

・80%未満の内服

 ・中断期間が3ヶ月未満:中断が2ヶ月連続していなければ予定の内服回数になるまで。ただし計6ヶ月のレジメンなら9ヶ月以内に完了する。できなければ最初から。

 ・中断期間が3ヶ月以上:最初から

 

抗凝固薬(クイズ)

 

ヘパリン

・ヘパリンは様々な分子量の多糖類が混ざった状態で存在する。

・未分画ヘパリンでは分子量3000-30000程度(平均15000)で、重要な5糖鎖(ペンタサッカライド)を含むのは1/3程度。

・●●と結合してトロンビンを阻害。他に●●因子を阻害する。*1

 

・どの因子を阻害するかは糖鎖の長さで違う。糖鎖が18より長いとトロンビンが不活化され(ATと結合)、18より短いと抗トロンビン作用はない(ATと結合しない)が、Xa因子を阻害することで抗凝固を示す。

・血管上皮やマクロファージ、血小板などにも非特異的に結合してしまう。

 

未分画ヘパリン(unfractionated heparin;UFH)

・抗トロンビン作用、抗Xa作用は概ね1:1。

半減期は40-60分と短い

 

低分子ヘパリン(low molecular weight heparin;LMWH)

・商品名●●

・分子量は2000-9000(平均4000)と未分画ヘパリンの1/3程度。

・UFHと比べて、●●作用が高い/低い。

(クレキサンは抗Xa:抗トロンビンが14:1)

・APTTが延長しない。

・ヘパリン起因性血小板減少症(HIT)をきたしにくい。

半減期3-4時間とUFHよりやや長い。

*2

 

ダナパロイドナトリウム

・商品名●● *3

・ヘパリンやLMWHを除去してヘパリン様物質を抽出したもの。

・へパラン硫酸84%、デルマタン硫酸12%、コンドロイチン硫酸4%など。

・抗Xa:抗トロンビンが22:1。

・APTTが延長しない。

・血小板への作用はほとんどなく、抗ヘパリン抗体への反応も低い。

 

フォンダパリヌクス

・商品名●●

・●●を化学的に合成したもの。非特異的な結合が少なく、94%がATに結合できる。

・抗Xa:抗トロンビンが7400:1。

・血小板への影響がない=出血リスクが低い。

半減期14-17時間と長く、1日1回の皮下注。

*4

 

ヘパリンの中和

・●●がよく用いられる。

・UFH、LMWH、ダナパロイド、フォンダパリヌクスには効果が●。

*5

 

 

ワルファリン

・ビタミンK拮抗薬(vitamin K antagonist;VKA)にはインダンジオン系と●●系があるが、日本で承認されているのは●●系のワルファリンのみ。

・ビタミンK依存性凝固因子の前駆体(=PIVKA;protein induced by vitamin K absence)は、そのグルタミン酸残基が酵素●●によってγカルボキシグルタミン酸残基に変換されることで成熟する。ビタミンKはこの酵素補酵素として働く。

・ワルファリンはビタミンKの還元酵素●●を阻害する。還元型ビタミンKがγカルボキシラーゼの補酵素になるため、還元されなければ凝固因子が成熟できない。

・ワルファリンは光学異性体(●体と●体)の混合物。

・●体のほうがビタミンK阻害効果が高く、主にCYP2C9で代謝される。●体はCYP1A2、CYP2C19、CYP3A4などで代謝される。

・ワルファリンはプロテインC、S、Zも阻害するため、投与初期3-4日ごろに一時的に過凝固状態を起こすことがある。

*6

 

ワルファリンの中和

・ワルファリンの投与を中止すれば3-4日で凝固能は回復する。

・ワルファリンはVKORを阻害する(=ビタミンKの還元を阻害する)が、γカルボキシラーゼは阻害しない(=還元型ビタミンKがたくさんあればOK)ため、ビタミンK製剤を投与することでワルファリンの効果を減弱できる。ただしPT-INRが回復してくるまで12-24時間要する

・急速に補正するには●●を用いる。近年ではII、VII、IX、Xの4因子含有プロトロンビン製剤(商品名●●)が保険収載された(Lancet 2015;385:2077)。

*7

 

DOAC(direct oral anticoagulant)

・ワルファリンと比較した特徴を3つ挙げろ

・抗トロンビン薬を1つ、抗Xa因子薬を3つ挙げろ

 *8

 

抗トロンビン薬:ダビガトラン(プラザキサ)

・生物学的利用能が6-7%と低い

・経口薬はプロドラッグであり代謝が必要

・80%が腎代謝であり、腎機能の影響を強く受ける

 

抗Xa因子薬

・肝臓のCYP3A4で代謝され、腎機能の影響を受けにくい

*1:アンチトロンビン(AT) IXa Xa XIa XIIa

*2:フラグミン、クレキサンなど 抗Xa作用が高く、抗トロンビン作用が低い

*3:オルガラン

*4:アリクストラ ペンタサッカライド

*5:プロタミン ある、弱い、ない、ない

*6:クマリン γカルボキシラーゼ VKOR(vtamin K12,3-epoxide reductase / vitamine K oxide reductase) R体とS体 S体 R体

*7:新鮮凍結血漿 ケイセントラ

*8:モニタリング方法がない 薬物・食物との相互作用が少ない 効果発現が早く、半減期が短い

ダビガトラン(プラザキサ)

リバロキサバン(イグザレルト) エドキサバン(エリキュース) アピキサバン(リクシアナ)

血小板機能・抗血小板薬機序(クイズ)

参考:Hospitalist 2019;7(3):431

 

血小板による止血の機序

・血小板は、血管内皮細胞で産生された●●と、血小板膜上の●●複合体を介して損傷部位に結合する。この結合は弱く、血小板は流速を落として損傷部位を転がるように移動する。*1

 

・損傷部位に露出した●●と血小板膜上の●●によって、血小板は損傷部位に強く結合する(血小板●●)。*2


・血小板は活性化し、
 形態変化:偽足を伸ばしアメーバ状に変わる
 細胞内顆粒の放出(●●、●●などが放出)
 細胞膜リン脂質からの●●の産生・放出
 ●●結合部位である●●の構造変化が誘導される
などが起きる。*3

 

・損傷部位に露出した●●によって凝固因子活性化がトリガー・血小板膜で触媒され、●●が産生される。*4

 

・活性化した血小板は●●と●●を介して結合する(血小板●●)。血小板血栓が形成され(一次止血)、●●によって血栓が安定する(二次止血)。*5

 

血小板活性化因子

・血小板活性化因子を4つ挙げよ*6

 

トロンビン

・凝固カスケードの産物として●●から産生される。血小板膜上の●●(7回膜貫通型・Gタンパク共役型受容体)に結合し、ホスホリパーゼC活性化→イノシトールリン脂質系を介して細胞内●●濃度を上昇させることで血小板を活性化させる。*7

・未承認の*8はPAR-1阻害薬

 

ADP(アデノシン2リン酸)

・血小板内の顆粒に貯蔵され、血小板が活性化されると分泌される。血小板膜上の●●・●●(7回膜貫通型・Gタンパク共役型受容体)に結合し、カルシウム濃度を上昇させる。*9

 

・P2Y1はイノシトールリン脂質系を介して細胞内カルシウム濃度上昇。

・P2Y12はアデニル酸シクラーゼ(AC)阻害から●●を低下させ、細胞内カルシウム濃度を上昇させる。*10

 

*11はチエノピリジン誘導体で、CYPで活性化されたのちにP2Y12を阻害

*12は直接P2Y12を阻害する

 

TXA2

・●●カスケードによって、酵素の●●・●●・●●の働きでリン脂質から生成される。血小板膜上のTXA2受容体(7回膜貫通型・Gタンパク共役型受容体)に結合し、イノシトールリン脂質系を介して細胞内カルシウム濃度を上昇させる。*13

 

・COXにはCOX-1とCOX-2があるが、血小板に含まれるのはCOX-1のみ。

*14はCOX-1を阻害する

 

セロトニン

・ 血小板内の顆粒に貯蔵され、血小板が活性化されると分泌される。血小板膜上の●●(7回膜貫通型・Gタンパク共役型受容体)に結合し、カルシウム濃度を上昇させる。*15

・この受容体の阻害薬が*16

 

血小板活性化抑制因子

・2つ挙げよ*17

 

PGI2(プロスタサイクリン)

・血管内皮細胞が産生する。

・血小板膜上のPGI2受容体(7回膜貫通型・Gタンパク共役型受容体)に結合し、アデニル酸シクラーゼ(AC)を介してcAMPを上昇させ、カルシウム濃度を低下させる。

・PGI2誘導体が*18

・cAMPを分解するPDE3の阻害薬が*19

 

NO

グアニル酸シクラーゼ(GC)を介してcGMPを上昇させ、カルシウム濃度を低下させる。

・cGMPを分解するPDE5の阻害薬が*20

 

*1:vWF GP Ib/V/IX

*2:コラーゲン GP VI 粘着

*3:ADP セロトニン TXA2 フィブリノゲン GPIIb・IIIa

*4:組織因子 トロンビン

*5:GP IIb/IIIa フィブリノゲン 凝集 フィブリン

*6:トロンビン ADP TXA2 セロトニン

*7:プロトロンビン PAR-1 カルシウムイオン

*8:vorapaxar、atopaxar

*9:P2Y1 P2Y12

*10:cAMP

*11:チクロピジン(パナルジン) クロピドグレル(プラビックス) プラスグレル(エフィエント)

*12:チカグロレル(ブリリンタ)とcangrelor(静注薬;未承認)

*13:アラキドン酸 ホスホリパーゼA COX TX合成酵素

*14:アスピリン

*15:5-HT 2A

*16:サルポグレラート(アンプラーグ)

*17:PGI2 NO

*18:ベラプロスト(プロサイリン)

*19:シロスタゾール(プレタール)

*20:ジピリダモール(ペルサンチン)

意識障害の初期対応(Hospitalistより)

意識障害 Hospitalist 2019;7(4):743

●AIOUETIPSは網羅的で有用だが、順番に脈絡がなく、対応に時間がかかり不要な検査が増えることにつながる

●迅速に対応する実践的な考え方を紹介

 

初期対応

まずABCの評価。外傷であれば頸椎保護。

バイタルチェックと身体診察

静脈路確保と血糖測定⇒血糖値≦70のときは50%ブドウ糖40mLを投与する

「Do DONT」

 Dextrose(ブドウ糖

 Oxygen

 Naloxon(ナロキソン:麻薬拮抗薬)

 Thiamine(ビタミンB1

「coma cocktail」

 フルマゼニル(ベンゾジアゼピン拮抗薬)

 

ビタミンB1

栄養異常が疑われる患者には全例にチアミン100 mg(アリナミンなど)を投与する

慢性アルコール中毒、低栄養、妊娠悪阻、肥満術後、吸収障害……

 

気道確保するか?

外傷では「切迫するD」があるとき:GCS 8点以下、2点以上急に低下、瞳孔不同・片麻痺・Cushing現象のあるとき

嘔吐しているとき

 

バイタル

血圧

●低血圧

・敗血症、代謝性疾患、薬物(三環系抗うつ薬・鎮静薬など)
・ショックがあればショックとしての鑑別を進める。心筋梗塞、大動脈解離、肺塞栓など。

●高血圧

・頭蓋内病変かもしれない。sBP 140-149でOR 1.89、170-179でOR 6.09など。

意識障害が軽く、高血圧があるときは、くも膜下出血脳出血に注意。

 

脈拍

●徐脈

オピオイド有機リン中毒

・頭蓋内圧亢進によるCushing現象(高血圧、徐脈、徐呼吸)

・外傷があれば神経原性ショックを考慮

●頻脈

・大動脈解離など痛みの強い疾患

・薬剤:抗精神病薬アンフェタミンなど交感神経作動薬、抗ヒスタミン・抗コリン、セロトニン症候群、アルコール/ベンゾ/麻薬などの離脱症候群、カフェイン中毒

 

呼吸

徐呼吸

・麻薬、鎮静薬

・延髄病変(脳梗塞脳出血など)

頻呼吸

・敗血症(qSOFAの1項目)

・ほかにアシドーシスの代償によって生じる:糖尿病性ケトアシドーシス、高浸透圧高血糖症候群、尿毒症など

・Cheyne-Stokes呼吸に注意。無呼吸と漸増・漸減性の呼吸が周期的に繰り返される。脳卒中で頻度が高い。特に広範囲にmass effectを呈する病変など。心不全もありうる。

 

体温

●高体温

感染症

・暑熱、サリチル酸中毒、悪性症候群セロトニン症候群

・中枢性発熱:くも膜下出血など。中枢神経障害発症から3日以内、神経障害重度、解熱剤効果なし。

●低体温

・寒冷

感染症

低血糖甲状腺機能低下、急性副腎不全

・薬物

 

病歴

薬剤:空包など

一酸化炭素中毒

発症様式

 

診察

●嘔吐物

・吐血なら頭蓋内病変+Cushing潰瘍など。

・青色ならフルニトラゼパムやパラコート。

・臭いもチェック。

●体表

・皮膚乾燥→抗精神病薬、三環系抗うつ薬

・発汗→カフェイン、コカイン、アンフェタミン

・点状出血・紫斑→toxic shock、心内膜炎、髄膜炎菌、肺炎球菌、TTP、血管炎

●意識

・JCS、GCSはばらつきも大きい

・FOURスコア(Ann Neurol 2005;58:585)が考案された(Full Outline of Unresponsiveness):眼の反応、運動、脳幹反射、呼吸でスコアリング。

●瞳孔

・瞳孔径:5 mm以上で散大、2 mm以下は縮瞳、左右差1 mm以上で瞳孔不同。

・対光反射:直接と関節

・眼球運動:共同偏視+逆側の上下肢麻痺→共同偏視と同側のテント上脳病変
運動

 

血液・尿

●血糖、血液ガス、甲状腺考慮

●肝性脳症における高アンモニア血症の感度は37.5%、特異度66.7%。痙攣後、ウレアーゼ産生菌による尿路感染など。

●尿中薬物スクリーニング(トライエージなど)は有用ではない。あくまで臨床状況から推定する。アセトアミノフェンサリチル酸、リチウム、抗てんかん薬などでは血中濃度測定検討。

 

画像

●頭部CT

・明らかな低血糖感染症などでなければほぼ全例に考慮。

片麻痺の逆側の大脳皮質でearly CT signを探す。

●頭部MRI

・以下の疾患ではCTより得意

・脳血管障害(脳梗塞、RCVS、PRES、静脈洞血栓):椎骨脳底動脈系はCTで見にくい

・対光反射、瞳孔不動、呼吸などの脳幹機能異常があるのにCTで異常ないときは考慮。

感染症(脳膿瘍、ヘルペス脳炎

・炎症(脳炎、血管炎):FLAIR、T2強調で海馬、偏桃体、皮質などに高信号がないか。

 

髄液

・発熱+意識障害では考慮

・腰椎穿刺では凝固異常、血小板減少がないかチェック。頭部CTが推奨されているのは、痙攣後、重度の免疫抑制、局所神経症状、GCS 10点以下

髄膜炎であれば、抗菌薬は来院1時間以内に投与するのが目標。1時間遅れるごとに予後不良が30%増える。血液培養の陽性率は50-80%。抗菌薬投与に髄液培養の感度は20%下がる。

 

脳波

有用なのはNCSE(non-convulsive status epilepticus:非痙攣性てんかん重積状態)

 

COVID-19の臨床情報(原著)

Presenting Characteristics, Comorbiities, Outcomes Among 5700 Patients Hospitalize With COVID-19 in the New York City Area

JAMA. Published online April 22, 2020.

 

★米国で初の大規模なケースシリーズ(ニューヨークの5700人)

★やはり男性・高齢者で対象者数・死亡とも多いようだ

 

背景

●米国で最初のケースは2020年1月31日にワシントン州で報告

●その後ニューヨークで爆発的に増加し、4月20日時点で全米の3分の1の症例が集中している。

 

方法

●本研究はNorthwell Health(the largest academic health system in New York)の12の病院で行われた。期間は3月1日から4月4日で、PCRでCOVID-19の診断が付き、入院が必要な全ての連続症例がincludeされている。

 

結果

●5700人が対象となった。

●年齢は中央値63歳、IQR 52-75歳、範囲0-107歳。男性60.3%、女性39.7%。

●基礎疾患

 癌 56%

 高血圧56%、冠動脈疾患11%、うっ血性心不全6.9%

 喘息9%、COPD 5%、閉塞性睡眠時無呼吸2.9%

 HIV 0.8%、固形臓器移植後1%

 CKD 5%、end-stage 3.5%

 肝硬変0.4%

 肥満 BMI≧30 41%、BMI≧35 19%、糖尿病33%

 never smoker 84%

 

●バイタル

 体温>38℃ 30% median 37.5(IQR, 36.9-38.3)

 SpO2 <90% 20%

 呼吸数>24 17%

 心拍数≧100 43%

 

●データ median(IQR、範囲)

 白血球 7000(5200-9500)

 好中球 5300(3700-7700)

 リンパ球 880(600-1200)

  リンパ球<1000 60%

 CRP 13.0(6.4-26.9)

 AST 46(31-71)

 ALT 33(21-55)

 LDH  404(300-551)

 フェリチン 798(411-1515)

 

●重症化・死亡 評価時点で退院済または死亡の2634人

 ICU入室 14%

 挿管による人工呼吸器 12%

 腎代替療法 3%

 死亡 21%

  40歳未満は5%未満

  男女でそれぞれ、

   40代8.2%、2.5%、50代12%、6%、60代18%、12%

   70代35%、27%、80代60%、48%

  人工呼吸器装着者の死亡 88%(282/320人)

  死亡退院者の在院日数 4.8(IQR, 2.3-7.4)

 

●リスクファクター 糖尿病と高血圧について検討

 死亡した患者で見ると、糖尿病患者ではICU入室・人工呼吸器装着が多い

 死亡した患者で診ると、高血圧患者ではICU入室・人工呼吸器装着が少ない