MED INFO

医師の自学自習のためのブログ

バンコマイシン投与方法 ガイドライン2022から

抗菌薬TDM臨床実践ガイドライン2022を参考にする。

 

トラフ値⇒AUCによる調整に変更

・これまではトラフ値がAUCの代替として用いられていたが、ガイドラインには「トラフ値はAUCの代替指標とはいえない」と明記。なお安全性についてはAUCによる調整がトラフ値のみによる調整よりも優れていることが確認されているが、有効性については確認されていない。

・トラフ値1ポイントでもAUCの計算は可能だが、できればトラフ値(投与の前30分以内)とピーク値(投与終了の1時間~2時間後)を測定する。特に、重症・複雑性のMRSA感染症、腎機能低下例、利尿薬使用やTAZ/PIPC使用例などでは2点取る。

 

TDMのタイミング

・軽症例やソフトウェアを使用しない場合は4回目または5回目の投与の際に。

・重症例やソフトウェアを使用する場合は3回目の際に。

・以降は週1回。

 

AUCの目標値

・AUC/MIC≧400が目標である。

MRSA株のMICを1と想定して、AUC≧400が目標となる。

・腎障害を考慮し、上限はAUC≦600とする。

MRSA以外の菌種にどこまで適応できるかは不明。上限は600としつつ、400以下の場合の調整は臨床的判断。

・トラフ値そのものは参考程度だが、10-20が現実的。

 

初期投与量

・実測体重を使用する。

・初回は25-30 mg/kg(上限3 g)。

・以降、20 mg/kgを12時間ごと。eGFR>130では8時間ごとを考慮。基本的に1日4 gを超えない。

 

小児

ガイドラインに表あり。

・基本的に15 mg/kg、1日3回または4回(年齢による)

 

 

肥満者

・初回は20-25 mg/kg (実測体重、上限3 g)。

・以降、10-15 mg/kg(上限2 g)、12時間ごと。

・ソフトウェアを用いる場合、補正体重を用いた腎機能の調整が必要(補正体重=理想体重+0.4×(実測体重-理想体重))。

 

腎障害

・eGFR<30では代替薬を考慮するが、禁忌ではない。

クレアチニンリアランス・実測体重に応じて投与設計する。

ガイドラインに表あり。

・例 体重50 kgの人では、初回は1.5 g。CCr 80-90→1 g・2回、CCr 60-70→0.75 g・2回、CCr 40-50m→0.5 g・2回。

 

HD

・使用可能なソフトはない。

・初回25-30 mg/kg(ドライウェイト)

・以降、HD後に7.5-10 mg/kg(ドライウェイト)

血中濃度HD実施前濃度 15-25を目標とする。

 

CHDF

・初回20-30 mg/kg(実測体重)

・以降、7.5-10 mg/kg(実測体重)、24時間ごと。

血中濃度測定は3日目に。ただし濃度が安定しないため短期間での再検を考慮。2回目は初回の72時間後、など。

・重症例ではトラフ値15-20が目標、AUCは400-600が目標。