巨赤芽球性貧血とビタミンB12欠乏
定義
●巨赤芽球性貧血とは、ビタミンB12もしくは葉酸の欠乏・利用障害による貧血のことで、多くがビタミンB12関連。数%が葉酸関連である。
巨赤芽球性貧血の原因
●ビタミンB12欠乏
・菜食主義
・悪性貧血:抗内因子抗体
・胃切除:ふつうは全摘。まれに部分切除でも。
・加齢による慢性萎縮性胃炎
・慢性膵炎
●葉酸欠乏
・アルコール多飲、偏食
・小腸手術後
・吸収不良症候群
・妊娠
・薬剤:メトトレキセート、抗けいれん薬、ST合剤、アルコール
血球の形態異常
●巨赤芽球性貧血の骨髄では、巨赤芽球、巨大後骨髄球、巨大桿状核好中球がみられる。末梢血では、大型卵型赤血球、破砕赤血球、Howell-Jolly小体、Cabot環、巨大桿状核好中球、過分葉好中球(5分葉、6分葉など)などがみられる。
●巨赤芽球性貧血と骨髄異形成症候群はときに鑑別が難しい。
・MDSでも大球性になる。ただしMCVは100-110 fL程度。MCVが120、あるいは130 fLとなるケースはほぼ巨赤芽球性貧血(あるいは薬剤や自己免疫性溶血性貧血)。巨赤芽球性貧血でも、たとえば鉄欠乏が合併すればMCVはやや低めになるので注意。
・MDSでの骨髄でも巨赤芽球様変化や、異常に大きい顆粒球、過分葉好中球がみられることがある。
・MDSでみられる低分葉好中球や脱顆粒好中球は、巨赤芽球性貧血ではまずみられないので鑑別の参考になる。
ビタミンB12欠乏の確認
●ビタミンB12欠乏巨赤芽球性貧血でも、血清ビタミンB12が下がっていないことがある。「血清ビタミンB12<200」の「臨床的ビタミンB12欠乏症」における感度65-95%、特異度50-60%。特に、特異度は高くなく、除外には使えない。
●CLEIA法では内因子を検査に用いる。抗内因子抗体があると(悪性貧血)、ビタミンB12が高いという結果が出てしまう(偽正常、偽高値)。
●ビタミンB12欠乏では、血中ホモシステイン高値、尿中メチルマロン酸高値が有用。葉酸欠乏でも血中ホモシステイン高値がみられる(尿中メチルマロン酸は正常)。ただし尿中メチルマロン酸は保険未収載。