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医師の自学自習のためのブログ

デノシン・バリキサ・ホスカビル 腎障害時の用量

ガンシクロビル

商品名:デノシン

 1V=500mg(12079円)

 

通常用量

 1回5mg/kg・1日2回

 

腎障害時の用量(添付文書)

CCr

 50~69 1回2.5mg/kg・1日2回

 25~49 1回2.5mg/kg・1日1回

 10~24 1回1.25mg/kg・1日1回

 透析 1回1.25mg/kg・週3回

 

バルガンシクロビル

商品名:バリキサ

 1錠=450mg(3016円) ※ドライシロップ製剤あり

 

通常用量

 初期治療 1回900mg・1日2回

 維持治療 1回900mg・1日1回

 

腎障害時の用量

CCr

 40~69 1回450mg・1日2回

 25~39 1回450mg・1日1回

 10~24 1回450mg・2日に1回

 透析 1回1.25mg・週3回

 

ホスカルネット

商品名:ホスカビル

 1A=24mg/mL(9130円)

 

通常用量

 HIVのCMV網膜炎、造血幹細胞移植のCMV感染症

  初期治療 1回60mg/kg・1日3回 or 1回90mg/kg・1日2回     

  維持治療 1回90-120mg/kg・1日1回

  造血幹細胞移植のCMV血症

  初期治療 1回60mg/kg・1日2回

  維持治療 1回90-120mg/kg・1日1回

 造血幹細胞のヒトヘルペスウイルス6脳炎

  1回60mg/kg・1日3回

 

腎障害時の用量

 CCr 1.4mL/min/kg以下で段階的に減量基準あり

 (複雑なので省略:添付文書参照)

新型コロナウイルス感染症における嗅覚障害

COVID-19で嗅覚・味覚障害が出るのか?

昨今話題の嗅覚・味覚障害ですが、確かに他の疾患でも出現しうるとはいえ、注目すべき症状かと思います。

嗅覚障害の症例報告です。

 

Letters

Sudden and Complete Olfactory Loss Function as a Possible Symptom of COVID-19.

JAMA Otolaryngol Head Neck Surg. Published online April 8, 2020.

 

症例報告

●40歳女性。急性の嗅覚障害(acute loss of the olfactory function)を主訴に来院。鼻閉(nasal obstruction)はない。

味覚障害(dysgeusia)はない。塩味、甘味、酸味、苦味、すべて問題ない。

●嗅覚障害の出現する数日前に咳、頭痛、筋肉痛があった。発熱や鼻汁はなし。

●耳鏡、鼻鏡では所見なし。

 

●5つの香料を用いたテストでは、phenyl-ethyl-alchole(花)、cyclotene(キャラメル)、isovalenric acid(チーズ)、undecalactone(果物)、skatole(糞便)のいずれも匂いが分からなかった。

●CT、MRIで副鼻腔を撮影したところ、鼻裂に炎症性の肥厚、閉塞を認めた。嗅球には異常は見られなかった。

 

●夫が新型コロナ陽性となったためこの方も検査されたところ陽性であった。

 

discussion

●上気道感染症は嗅覚障害の最多の原因で、22-36%を占める。

●重症の鼻・咽頭感染において鼻裂の閉塞が見られるとされるが、今回の患者では鼻閉や鼻汁の症状はなく、重症の鼻・咽頭感染とは言えない。

●一般にコロナウイルスは篩骨を経て嗅球・嗅細胞に到達し、これを障害することがある。新型コロナウイルスでもそうなのかもしれない。

●Liggetらはcentral cortical neurons、血管平滑筋細胞、気道上皮細胞に発現するolfactory receptor familyを報告しているが、新型コロナウイルスはこの受容体を介して選択的に嗅細胞に感染するのかもしれない。

新型コロナ患者の入院に関する厚労省の通知

新型コロナウイルス感染症感染症法における位置づけ

前提として、新型コロナウイルス感染症の法的な位置づけを確認します。

 

新型コロナウイルス感染症新型コロナウイルス感染症を指定感染症として定める等の政令に基づき、令和2年2月1日より新型コロナウイルス感染症の名称で感染症法上の「指定感染症に指定されています。

「指定感染症」とは耳慣れないです。

 

感染症法より;

 

第六条 この法律において「感染症」とは、一類感染症、二類感染症、三類感染症、四類感染症、五類感染症新型インフルエンザ等感染症、指定感染症及び新感染症をいう。

 

第六条の8 この法律において「指定感染症」とは、既に知られている感染性の疾病(一類感染症、二類感染症、三類感染症及び新型インフルエンザ等感染症を除く。)であって、第三章から第七章までの規定の全部又は一部を準用しなければ、当該疾病のまん延により国民の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがあるものとして政令で定めるものをいう。

 

第七条 指定感染症については、一年以内の政令で定める期間に限り、政令で定めるところにより次条、第三章から第七章まで、第十章、第十二章及び第十三章の規定の全部又は一部を準用する。

 

今回の「新型コロナウイルス感染症」について、感染症法をどのように適用させるかは新型コロナウイルス感染症を指定感染症として定める等の政令に細かく規定されています。

入院に関わる条文(第十九条・第二十条)も「新型コロナウイルス感染症」に適応されます。第十九条は次のようにありますが、この中の「一類感染症」を「新型コロナウイルス感染症」に読み替えます。

 

感染症法より;

 

第十九条 都道府県知事は、一類感染症のまん延を防止するため必要があると認めるときは、当該感染症の患者に対し特定感染症指定医療機関若しくは第一種感染症指定医療機関に入院し、又はその保護者に対し当該患者を入院させるべきことを勧告することができる。ただし、緊急その他やむを得ない理由があるときは、特定感染症指定医療機関若しくは第一種感染症指定医療機関以外の病院若しくは診療所であって当該都道府県知事が適当と認めるものに入院し、又は当該患者を入院させるべきことを勧告することができる。

 

したがって法的には、

新型コロナウイルス感染症は指定医療機関へ入院させる

●ただし緊急時であれば指定医療機関以外の医療機関への入院も可能

「入院させなければならない」とは書いていないですが、基本的には入院を要するという理解でよいと思われます。

 

とはいえ指定医療機関への入院が望ましい

令和2年2月9日の結核感染症課長事務連絡新型コロナウイルス感染症患者等の入院病床の確保について(依頼) 」では、次の旨が記載されています。

 

●緊急時であれば指定医療機関でなくても入院させてよい(感染症法の確認)

●ただ基本的には指定医療機関に入院させる。感染症病床でなくてもよい。

 

患者が増えれば軽症・無症状は入院しないことも

令和2年3月1日の厚労省新型コロナウイルス感染症対策推進本部の事務連絡「地域で新型コロナウイルス感染症の患者が増加した場合の各対策 (サーベイランス、感染拡大防止策、医療提供体制)の移行について 」では次の通り。

 

患者が大幅に増加し、重症者の入院に支障が出るようになれば

・指定医療機関以外の医療機関でも積極的に受け入れる

・無症状・軽症状者は自宅で安静・療養する(高齢者、基礎疾患がある、免疫抑制剤抗がん剤等を用いている、 妊産婦は除く)。

 

宿泊施設・自宅療養における指針が提示

令和2年4月2日の事務連絡新型コロナウイルス感染症の軽症者等に係る宿泊療養及び自宅療養 の対象並びに自治体における対応に向けた準備について」および「「新型コロナウイルス感染症の軽症者等の宿泊療養マニュアル」について」で宿泊施設・自宅での療養についての指針が示されています。

 

●流行の拡大が前提(入院できるなら入院したほうがよい)

●患者が、感染防止にかかる留意点が遵守できて、無症状・軽症者であれば、入院勧告の対象とならない。

●高齢者、基礎疾患あり、免疫抑制剤抗がん剤等使用中、 妊産婦は除外。またこれらに該当する人と同居する患者もなるべく入院。

●基本的には都道府県の用意した宿泊施設で療養する。宿泊施設がムリなら自宅で療養するが、高齢者と同居している場合や、高齢者と頻繁に接する業務にあたる人(医療・介護従事者など)と同居している場合は優先して宿泊施設へ。

●療養の終了基準は、退院基準と同様(PCR2回陰性など)。

 

東京都で宿泊施設での療養開始

実際、4月7日に東京都で患者のホテルへの移動が始まりました。

以下、東京都、コロナ感染軽症者の療養ホテルを公開 - 社会 : 日刊スポーツより

東京都は7日、無症状や軽症の新型コロナウイルス感染者を入院先から移し、療養や健康観察を受ける都内のホテルを公開した。より症状の重い感染者に病床を優先し、医療崩壊を防ぐ狙いがある。軽症者らは同日から、都が借り上げたホテルに順次移り、最終的に100人程度が収容される。都は同様の取り組みを進め、宿泊施設の1000室確保を目指している。

 

ホテルは中央区の「東横イン東京駅新大橋前」。都は24時間以内に37・5度以上の発熱がない感染者を対象とし、移送や食事、滞在などの費用は公費で賄う。ホテルには都の職員や看護師が交代で常駐し、日中は医師も待機する。職員らと感染者は接触しないようにエレベーターや通路を使い分けるとしている。

 

7日朝、ホテルでは災害派遣要請を受けた陸上自衛隊員が、ビニール手袋など物資を運び込み、受け入れ準備を進めていた。

 

都内では6日までに感染者数が累計1100人を突破した。感染拡大のペースが速く、都は医療機関の協力を得て空き病床の確保を急ぐ。複数の入所者が感染した大田区特別養護老人ホームでは、入院先が決まらずに一時的に待機するケースも出ている。

 

小池百合子知事は6日の記者会見で「今後、宿泊療養施設を1000室まで準備し、重症者の病床を確保したい」と話した。

 

プレセデックス(デクスメデトミジン)の使用法

一般名:デクスメデトミジン塩酸塩

 

形状

200 µg/2 mL/瓶 →生食48 mLを加え200 μg/50 mLとして使用する

200 μg/50 mL/シリンジ

 

用法用量

初期負荷投与:6 µg/kg/hの投与速度で10分間投与(=1μg/kg)

維持量:0.2-0.7 µg/kg/hで持続投与

※維持投与から開始してもよい

 

通常は4 µg/mLにして使用する。

4 mL/hなら16 μg/h、5 mL/hなら20 µg/h。これを体重で割ればよい。

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(プレセデックス適正使用ガイドより) 

 

注意

循環血液量が低下している状態では血圧低下をきたしやすい

ボーラス投与、急速な静脈投与は避ける

徐脈が現れることがある

梅毒の検査

梅毒の診断は血清学的検査に頼っている。血清学的検査には、「非特異的な脂質抗原に関する検査」と、「梅毒トレポネーマ抗体に関する検査」がある。

非特異的な脂質抗原に関する検査は、非特異的だが(=生物学的偽陽性がある)治療効果判定に利用できる。梅毒トレポネーマ抗体に関する検査は特異的だが、治療によって変化しにくいので治療効果判定には利用できない。

様々な用語があり混乱してしまうが、梅毒診療ガイド(2018年)にならい、本記事中では「非特異的な脂質抗原に関する検査」を指して「RPR」、「梅毒トレポネーマ抗体に関する検査」を指して「梅毒トレポネーマ抗体」という言葉を主に使いたい。

 

RPR

●lecithin、cardiolipin、cholesterolなどのlipoidal antigensに対する生体の反応をみる検査。次のような用語は同義と考えてよい。

 nontreponemal test(NTT;非トレポネーマ検査)

 serologic test for syphilis:STS

 脂質抗原検査

 

●検査の手法として、RPR(rapid plasma reagin)、VDRL(Venereal Disease Reference Laboratory)などがある。日本で行われているのはRPRなので、非トレポネーマ検査=RPRと考えてよい。RPRは患者血清中の抗体様物質「レアギン」を検出する。

●RPRの偽陽性は、生物学的偽陽性(biological false positive)として有名である。一部の感染症HIVなど)、自己免疫疾患、高齢、などによって偽陽性となる(NEJM 2020;382:845)。

 

●従来RPRは用手的な手法を用いて、抗原抗体反応によって生じる凝集塊が肉眼的に見える検体の最低希釈濃度によって1:32(=32倍に希釈した検体では陽性だが、64倍に希釈した検体では陰性)などと表現されてきた。現在では自動分析機器によって16.0 R.U.などと連続する実測値で表現される場合が多い(Hospitalist 2017;5:553)。

●現在は、原則的に自動機器による測定が推奨される。陽性・陰性のカットオフについては、用手的な手法と自動機器による測定はおおむね同等と考えてよいらしい(梅毒診療ガイド)。

 

以下、用手的な手法である「RPRカードテスト」の添付文書を参照する。

・RPRカードテストは定性試験と定量試験の両方ができる。

・定性試験では凝集塊を肉眼で見て「陽性」か「陰性」かを判定する。反応の度合いによって結果が(+)、(2+)など半定量的に表現されていても、そこから定量的な値を推定しない。陽性であれば必ず定量試験を行う。

定量試験では検体を倍数希釈し、凝集塊が陽性となる最も薄い濃度の希釈値を結果とする。

・2期梅毒などで非常に強い反応がある場合に、RPRが逆説的に偽陰性となる現象(プロゾーン現象)が知られる。検体を希釈することで陽性となる。

 

梅毒トレポネーマ抗体

●検査全体を指して、NEJMの梅毒のレビュー(NEJM 2020;382:845)では「treponemal test:TT」、日本の梅毒診療ガイド(2018年)では「梅毒トレポネーマ抗体」と呼んでいる。

●様々な手法があるが、現在の日本では「T pallidumに対する特異抗体を凝集反応によって検出する検査」を用いる。用いる試薬によって、TPHA、TPPA、TPLAなどと呼ぶが、これらをまとめてTPHAと呼ぶこともあるようで、混乱のもとになっている(※)。

 赤血球凝集によるHA法=TPHA

 ゼラチンなどの感作粒子によるPA法=TPPA

 ラテックス粒子によるLA法=TPLA

このほかにFTA-ABS法がある。TPHAの偽陽性が疑われるようなケースでは、確認のためFTA-ABSを試してもよいだろう。

●梅毒トレポネーマ抗体は、原則的に「陽性」か「陰性」かが大事で、その定量値を重視する必要はほぼない(経過を追うときや、梅毒かどうか迷うケースでは有用かもしれないが)。治療効果判定にはRPRを用いる。

●梅毒トレポネーマ抗体の偽陽性もなくはないらしい(NEJM 2020;382:845)。

 

(※)SRLのページ(http://test-guide.srl.info/hachioji/test/list/33)では、

 梅毒定性TP抗体(LA)LA法 保険請求上は「梅毒トレポネーマ抗体定性」

 梅毒定量TP抗体(LA)LA法 保険請求上は「梅毒トレポネーマ抗体定量

 梅毒定量TPHA PA法 保険請求上は「梅毒トレポネーマ抗体半定量

と記載があり紛らわしい。PA法なのにTPHAといってよいのか?

ともかく梅毒定量TP抗体(LA)を出せばよいだろう。

 

RPRと梅毒トレポネーマ抗体の組み合わせ

●梅毒のスクリーニングではRPRと梅毒トレポネーマ抗体を組み合わせて考える。2つのアルゴリズムがある。

 traditional algorithm    まずRPR→梅毒トレポネーマ抗体

 reverse-sequence algorithm まず梅毒トレポネーマ抗体→RPR

traditionalでは、RPRで「梅毒」「生物学的偽陽性」含めて広くスクリーニングし、梅毒トレポネーマ抗体で梅毒かどうか確認する。reverse-sequenceでは、梅毒トレポネーマ抗体で梅毒かどうかをまずスクリーニングし、RPRで治療対象かどうか確認する、といった戦略。

とはいえ、現在の日本ではRPRと梅毒トレポネーマ抗体を同時に測定するのが普通だと思われるので、そこまで考える必要はない。

 

●梅毒の自然経過とRPR/梅毒トレポネーマ抗体の推移は以下の図を参照。

(図:NEJM 2020;382:845より)

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●感染超早期には、検査手法にもよるようだが、まず梅毒トレポネーマ抗体、次にRPRが上昇してくるらしい。

●1期ではRPRがそれほど高くない。個人的な経験では、RPRが陰性だったり1ケタだったりということも多い。1期梅毒っぽい症状があるのに検査陰性ということはありうる。そのときは時間をあけて再検査。

●2期の症状があるころには、RPRが2ケタから3ケタあるのはざらである。

●無症状でRPR陽性、梅毒トレポネーマ抗体陽性(=潜伏梅毒)という場合は、治療すべきかどうかの判断が難しい。病歴(過去に症状があったか、リスクのある性行為があったか、治療歴はあるか、他の性感染症はあるか、など)を詳しく聴取する。数値だけでは決めにくいところもあるが、RPRが16以上であればほぼ治療対象、RPRが8~16の場合は梅毒の可能性が高いと判断したときに治療、RPRが8未満であれば治療しない、といった考えでよいのではないか。RPRを経時的にフォローするというのも手だろう。

 

●治療によってRPRがおおむね2分の1以下(自動化法)、4分の1以下(用手法)になっていれば治癒と考える。梅毒トレポネーマ抗体の値も下がっていれば、治癒している可能性はさらに上がる。(梅毒診療ガイド2018)

●治療によってRPRが4分の1以下にならず、再感染も疑われなければ「serologic nonresponse」である。早期梅毒では、6ヶ月時点で20%、1年時点で11.5%がserologic nonresponseというデータがある。HIV患者では一般に反応は遅い。(NEJM 2020;382:845)

●serologic nonresponseの意義は定まっていない。再治療すべきか、神経梅毒の検査をすべきか、といった臨床的疑問がある。早期梅毒治療後であれば1年程度、後期梅毒治療後であれば2年程度待ってから、再治療や神経梅毒の検査を考慮したほうがよいかもしれない。(NEJM 2020;382:845)

 

●治癒後のフォローはどのくらいの期間すべき? 梅毒診療ガイド2018には1年程度フォローするように、と記載がある。