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医師の自学自習のためのブログ

肺非結核性抗酸菌症(MAC以外)の概要・治療

参考:呼吸器ジャーナル2018;66


Runyon分類が有名。

固形培地におけるコロニー形成に7日を超える遅速発育菌(I、II、III群)と7日以内の迅速発育菌(IV群)がある。

迅速発育菌で有名なのがM abscessus complex、M fortuitum、M chelonae。

遅速ではszulgai、xenopi、terrae、gordonae、heckeshornense、marinum。 

 

M abscessus

●M abscessus(M abscessus complex:MABC)にはsubspにabscessus、massiliense、bolletiiがある。Subspは質量分析やDDH(DDHマイコバクテリア、極東製薬)では同定できない。

●subsp. abscessus、subsp. bolletiiはマクロライドに暴露されると耐性遺伝子(erm遺伝子)が誘導される。erm遺伝子はマクロライドリボソームの結合を阻害する。例えば治療3日目の感受性検査で感受性、14日目の感受性検査で耐性になっていればermが活性化したとの判断根拠になる。

●subsp. massilienseではerm遺伝子が欠損している。subsp. abscessusも点突然変異C28 sequevar(T28C)の株ではerm遺伝子が活性化しない(subsp. abscessusの10-20%)。ただし、massiliense、abscessus(C28 sequevar)でも、MACと同様、23SrRNA(rrl)の変異によりマクロライドへの獲得耐性を持ちうる。

●subspの同定が望ましいが、一部専門機関でのみ可能。

 

●初期治療(initiation phase)は、マクロライド経口+アミカシン+イミペネム。CAMよりAZMのほうがermを誘導しにくいという報告があるが定説はない。チゲサイクリンを加えてもよい。4-12週程度。

●維持治療(continuation phase)ではマクロライドにクロファジミン、リネゾリド、モキシフロキサシン、ミノサイクリンなどを加え、AMK吸入を考慮。AMKはマクロライドとともにキードラッグとなる。

MACを合併していた場合は、EBやRFPを加えないことになり単剤治療となりうる。逆にMACの治療のみを考えると、MABCに対しては単剤治療となりうる。

 

M kansasii

●喫煙や粉塵吸入がきっかけとなり、若年者にも発症しやすい。右肺尖部、空洞影を呈する。

●IGRAが陽性となりうる(日本からの報告では20%程度)。

●DDHではkansasiiとszulgaiを誤同定することがある。

●空洞を呈しやすく進行性の場合が多いため、治療開始は積極的に考慮する。

●INH 5mg/kg、RFP 10mg/kg、EB 15mg/kg(日本の治療指針:結核2012;87:83)

●海外からの報告(CID2003;37:1178)ではCAM 500-1000mg、EB 25mg/kg、RFP 600mgの週3回投与も報告されている。INHの代わりにCAMでもよいかもしれない。

RFPの使用が特に重要。RFPを含むレジメンでは6ヶ月での菌陰性化率が100%であった。再発、治療抵抗例ではRFP耐性をチェックする。

 

M xenopi

●カナダや欧州の一部ではMACに次ぐ頻度。日本では少ない。TB、COPDなどによる既存の空洞に感染しやすいが、近年は基礎疾患のない症例も報告が増えている。

●DDHでxenopiとされた例で、遺伝子解析ではheckeshornenseと同定された報告も。

BTSガイドラインではMACのメニュー(AZM or CAM)+RFP+EB+(MFLX or INH)の4剤。重症例ではAMKをadd-onするとある。

RFPの感受性をチェック。

 

M szulgai

●環境からの検出は少なく、患者から検出された場合には臨床的意義が大きい。

●IGRAが陽性となりうる。

●DDHではkansasiiとszulgaiを誤同定することがある。

RFP+EB+(マクロライドorキノロン)の3(-4)剤治療。治療反応性はよい。

 

M gordonae, M fortuitum

●分離頻度は高いが、ほとんどが混入・定着。

●gordonaeではCAM+RFP+EB、fortuitumではキノロンをキーとしてCAP+RFP+キノロンなど。

 

M chelonae

●CAM+1剤

肺高血圧治療薬一覧

肺高血圧の薬剤一覧

 

プロスタサイクリン アナログ

 エポプロステロール フローラン 注

 トレプロスチニル トレプロスト 注

 ベラプロスト ドルナー/プロサイリン 錠

 セレキシパグ ウプトラビ 錠

 イロプロスト ベンテイビス 吸入液

 

エンドセリン受容体拮抗薬

 ボセンタン トラクリア シクロスポリン、タクロリムス、グリベンクラミド禁忌

 アンブリセンタン ヴォリブリス 

 マシテンタン オプスミット RFPカルバマゼピン、フェニトイン、フェノバルビタール禁忌

 

PDE5阻害薬

 シルデナフィル レバチオ

 タダラフィル アドシルカ

 

sGCsoluble guanylate cyclase刺激薬

 リオシグアト アデムパス ※CTEPHに唯一適応。硝酸薬などは禁忌。

 

・プロスタサイクリン=プロスタグランジI2PGI2)→アデニル酸シクラーゼATPからcAMP→血管収縮の阻害

・エンドセリンは血管を収縮させる

eNOSNOsGCGTPからcGMPプロテインキナーゼG→血管収縮の阻害

PDE5cGMPを分解するので、PDE5阻害薬によりcGMPが増える

sGC刺激薬はNOを介さず血管を拡張する

PDE5阻害薬とsGC刺激薬の併用は禁忌

 

閉塞性睡眠時無呼吸の症状・質問票

閉塞性睡眠時無呼吸(obstructive sleep apneaOSA)の自覚/他覚症状

●日中の眠気、睡眠中のいびき/窒息(choking)。窒息や喘ぎ(gasping)は特異度が高い(JAMA 2013;310:731)。OSAの眠気はただの疲労とは異なり、起きていられない眠さ。

●重症例では夜間頻尿、GERD、睡眠中の咽頭乾燥感、せき込み、寝返り、頸部や肩の痛みなど。

●ベッドパートナーによるいびき、喘ぎ、呼吸中断の指摘。

●居眠り、うっかりミス、運転中の事故。

 

質問票/スコア表

STOP-Bang questionnaireChest 2016;149:631

 全身麻酔対象者のOSA存在を評価するもの。

 

0-2点:low 3-4点:moderate 5-8点:high

 Snoring                      隣の部屋で聞こえる。ベッドパートナーに小突かれるような。

 Tired                          日中の眠気

 Observed                    呼吸が止まっていることを誰かに指摘される

 Pressure                     高血圧があるか

 Body Mass Index         35以上

 Age                            50歳以上

 Neck size                    喉ぼとけの高さで周囲径が40cm16インチ)以上

 Gender                       男性

 

●エプワース眠気尺度(Epworth Sleeping ScaleESS

(日本語版 日呼吸会誌2006;44:896

 0-24点で表される。11点以上は高いスコアと見なされる。ナルコレプシーなどにも。

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閉塞性睡眠時呼吸の診断・ポリソムノグラフィー

閉塞性睡眠時無呼吸(obstructive sleep apnea:OSA)について

 

診断基準

日本独自のものはない。以下のCPAPの保険適応基準があるのみ。

1-3のすべて。無呼吸低呼吸指数(AHI)40以上なら2だけでよい。

1 AHI20以上

2 日中の傾眠・起床時頭痛など自覚症状が強く、日常生活に支障あり

3 ポリソムノグラフィー(PSG)で頻回の睡眠時無呼吸のため睡眠の分断化や深睡眠の減少がみられ、CPAPにより改善する

 

ICSD-3の基準(AかつB、またはC単独)

A ①眠気・疲労等の症状、②呼吸停止や喘ぎとともに覚醒、③いびきや呼吸中断を指摘される、④高血圧・気分障害・認知機能障害・冠動脈疾患・脳卒中・鬱血性心不全・心房細動・2型糖尿病のいずれかがある、の4項目のうち1つ以上。

B ポリソムノグラフィーまたは簡易モニターで、1時間あたり5回以上の閉塞性優位な呼吸イベント

C ポリソムノグラフィーまたは簡易モニターで、1時間あたり15回以上の閉塞性優位な呼吸イベント

※閉塞性優位な呼吸イベント:閉塞性あるいは混合性無呼吸・低呼吸、呼吸努力関連覚醒(RERA)

 

重症度

 AHI 5以上 OSAあり

 AHI 5以上15未満 軽症

 AHI 15以上30未満 中等症

 AHI 30以上 重症

CPAPの保険適応とはずれがある。上記の診断基準参照。

 

検査について

●ポリソムノグラフィー(polysomnographyPSG)と簡易モニターがある

PSGOSA、中枢性無呼吸症候群、睡眠関連低換気症候群の診断の標準検査。

●簡易モニターはOSAの疑いが強い患者について、簡易的に行う検査。簡易モニターを指して在宅睡眠時無呼吸検査(home sleep apnea testHSAT)、検査施設外睡眠検査(out of center sleep testingOCST)などとも呼ぶ。

PSGでは脳波を測定するため睡眠時間の計測が正確である。簡易モニターでは検査記録時間を睡眠時間と推定して無呼吸・低呼吸をカウントするため、過小評価されやすい。

 

PSGで判定できる項目

●覚醒、ノンレム睡眠N1N2N3)、レム睡眠

●無呼吸、低呼吸、呼吸努力関連覚醒(respiratory effort related arousalRERA

無呼吸の定義

・口鼻温度センサーで最大信号の振れがイベント前のベースラインから90%以上低下した状態が10秒以上持続

・無呼吸時間すべてで呼吸努力が継続していれば閉塞性、呼吸努力がなければ中枢性、最初は努力がなく後半にあれば混合性。

低呼吸の定義

・鼻圧で最大信号の振れがイベント前のベースラインから30%以上低下した状態が10秒以上持続

・酸素飽和度がベースラインより3%以上低下または覚醒反応あり。(標準)

・酸素飽和度がベースラインより4%以上低下。覚醒反応問わず。(代替)

・イベント中のいびき、吸気時の鼻圧の気流信号の平坦化、胸腹の奇異性運動のいずれかがあれば閉塞性低呼吸。なければ中枢性低呼吸。

RERAの定義

・呼吸努力の増加または鼻圧による吸気部分の平坦化が10秒以上あり、無呼吸/低呼吸には該当せず、睡眠から覚醒反応を生じたもの。

 

●無呼吸低呼吸指数(AHI) =(無呼吸+低呼吸)/睡眠時間 [/h]

●呼吸障害指数(RDI) =(無呼吸+低呼吸+RERA/睡眠時間 [/h]

抗リウマチ薬(生物学的製剤)一覧

【】内は標的

【TNFα】

 インフリキシマブ レミケード キメラ

   適:RA、クローン、ベーチェットによる網膜ぶどう膜炎

      尋常性乾癬、関節症性乾癬、膿疱性乾癬、強直性脊椎炎

      潰瘍性大腸炎川崎病

エタネルセプト エンブレル TNFα受容体とIgGFcの融合タンパク

  適:RA、若年性特発性関節炎

アダリムマブ ヒュミラ ヒト抗体

  適:RA、若年性特発性関節炎、強直性脊椎炎

    尋常性乾癬、関節症性乾癬、膿疱性乾癬、クローン病潰瘍性大腸炎ぶどう膜炎

ゴリムマブ シンポニー ヒト抗体

  適:RA潰瘍性大腸炎

セルトリズマブペゴル シムジア ヒト化Fab

  適:RA

 

【IL-6】

トシリズマブ アクテムラ ヒト化抗体

  適:RA、高安、巨細胞性動脈炎、若年性特発性関節炎、キャッスルマン病

サリルマブ ケブザラ ヒト抗体

  適:RA

 

【CD80/CD86】

アバタセプト オレンシア CTLA-4T細胞のCD28の類似タンパク)製剤

  適:RA、若年性特発性関節炎

 

※関節リウマチ適応なし 

【IL-1】

 カナキヌマブ イラリス

   適:クリオピリン関連周期性症候群、抗IgD症候群

      TNF受容体関連周期性症候群、家族性地中海熱、若年性特発性関節炎

 

参考:今日の治療薬2019