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医師の自学自習のためのブログ

腸球菌による感染性心内膜炎

AHAガイドライン(Circulation 2015;132:1435-1486)

 

 

PCG 18-30 million U/day 持続または1日6回

ABPC 12 g/day 1日6回

VCM トラフ値で調整

CTRX 4 g/day 1日2回

GM 3 mg/kg/day 1日2-3回または1日1回

 

総論

●腸球菌はnon-IDU IEの10%程度。97%がE faecalis、1-2%がE faecium。その他1%。

ペニシリン、アンピシリン、バンコマイシンの感受性、ゲンタマイシンのhigh-level resistanceをルーチンに調べなければならない。βラクタマーゼ産生の株はまれだが存在する。βラクタマーゼ産生をみるルーチンの試験は感度が高くない。

 

●他のグラム陽性球菌と比較すると、ペニシリン、アンピシリン、バンコマイシンへの耐性傾向は強い。単剤では十分な殺菌効果がないため、ゲンタマイシン、ストレプトマイシンと併用することによるシナジー効果を利用する。

●多くのE faecalisはペニシリン(MIC 2-4 µg/mL)やアンピシリン(MIC 1-2)でinhibitされるがkillはされない。セファロスポリンはin vitroでは効果なし。カルバペネムはvariableだが、イミペネムが最もactiveである。

ペニシリン、アンピシリン、バンコマイシンによって、アミノグリコシドの腸球菌へのpermeabilityが上昇し、比較的低い濃度でも効果がみられるようになる。ペニシリン、アンピシリン、バンコマイシンに耐性の場合、あるいはアミノグリコシドに高度の耐性がある場合(ゲンタマイシン500 µg/mL、ストレプトマイシン1000 µg/mL)でなければ、両者の併用が有用である。

 

標準的な投与期間は(4-)6週である。全期間アミノグリコシドを使うのが難しい場合も多い。腎機能、併存症、高齢など。

●アミノグリコシドを1日1回投与にするか、分割して投与するべきか、結論は出ていない。標準的には3 mg/kg/dayを8時間おきに投与する。(ヨーロッパ、日本のガイドラインでは1回でよいとされている)

●8時間おきに投与した際のゲンタマイシンの血中濃度の目標は、投与1時間後3 µg/mL、トラフが<1 µg/mLである。

 

ペニシリン感受性、アミノグリコシド非高度耐性

ペニシリン/アンピシリン+ゲンタマイシンがよい。

アンピシリン+セフトリアキソンでもよい。ペニシリン/アンピシリン+ゲンタマイシンに劣らないかもしれない。

 

ペニシリン/アンピシリン+ゲンタマイシンを選んだ場合、症状出現3ヶ月未満の症例では4週間、症状出現3ヶ月以上の症例では6週間の治療がよい。人工弁の場合も6週間がよい。

●アンピシリン+セフトリアキソンを選んだ場合は6週がよい。 

 

クレアチニンリアランス30-50、30未満の患者では、4ないし6週間のゲンタマイシン併用が難しいかもしれない。このようなケースでは、①ストレプトマイシンを用いる、②ゲンタマイシンの投与期間を短縮する(2-3週)、③アミノグリコシドを併用しないレジメンにする、などの方法がある。

●アミノグリコシドを併用しないレジメンがいくつか研究され、アンピシリン+セフトリアキソンの効果が示されている。ダブルβラクタムによって、ペニシリン結合タンパク(PBP)が飽和されるからとも言われる。

●アンピシリン+セフトリアキソンの研究にはいくつかのlimitationもあるが、腎機能への影響が少なく、効果もほぼ劣っていないようであった。

 

ペニシリン感受性、アミノグリコシド(高度)耐性

アンピシリン+セフトリアキソン、6週間の投与がよい。

●ゲンタマイシン耐性だがストレプトマイシン感受性の株もある。そのような株でもアンピシリン+セフトリアキソンでよい。

 

ペニシリン耐性あるいはペニシリン忍容性なし

バンコマイシン+ゲンタマイシンがよい。バンコマイシンは、ペニシリンが使えないときにだけ使用する。

バンコマイシン+ゲンタマイシンの投与期間は、自己弁なら6週、人工弁ならat least 6週。

(??バンコマイシン感受性、アミノグリコシド(高度)耐性では??)

 

バンコマイシン耐性

●大半のバンコマイシン腸球菌はE faeciumであり、E faeciumによるIEはまれである。腸球菌はバンコマイシンのMIC >4 µg/mLで耐性と判断される。

●βラクタム、バンコマイシン、アミノグリコシドに耐性の株では、ダプトマイシン、リネゾリドへの感受性を調べる。ダプトマイシンは殺菌性、リネゾリドは静菌性。

●リネゾリド600 mg 12時間おき、またはダプトマイシン10-12 mg/kg、6週間が用いられる。