メトロニダゾール脳症・セフェピム脳症
★メトロニダゾール脳症は投与1ヶ月以降(中央値約50日)に発症し、末梢神経障害や失調、意識障害などを呈する。診断にはMRIを。
★セフェピム脳症は平均5日(1-10日)と短期間で出現し、ミオクローヌスや痙攣が特徴的。診断には脳波を。
メトロニダゾール
●メトロニダゾール(フラジール錠)は長らくトリコモナス症だけが適応だったが、2007年にヘリコバクター・ピロリ(2次除菌)、2012年に赤痢アメーバ、ランブル鞭毛虫(ジアルジア症)、嫌気性菌、感染性腸炎(偽膜性腸炎含む)が追加。
●2014年に静注製剤(アネメトロ)が発売された。アネメトロの適応は嫌気性菌感染症、感染性腸炎(偽膜性腸炎含む)、赤痢アメーバ。添付文書上は1回500mg・1日3回、難治/重症感染症では1日4回まで。
●経口薬のバイオアベイラビリティはほぼ100%。髄液、骨、膿瘍などへの移行性も良好。髄液には45-89%移行。肝代謝なので腎機能による調節は不要。
適応・投与法
●トリコモナス:CDCでは2g 単回が1st。代替として1回500mg・1日2回・10日間。refractoryのケースでは、CDCでは500mg・1日2回・7日間追加。さらに2g/dayを7日間など。治癒しなければ感受性検査を推奨している。日本の添付文書では1回250mg・1日2回・10日間。
●アメーバ赤痢:1回500mg・1日3回・7-10日。成書(Kucers)には、1回750-800mg・8時間毎内服、または1回500mg・6時間毎静注・10日間と記載あり。肝膿瘍や脳膿瘍も腸炎と同様に治療する。日本の添付文書では1回500mg・1日3回・10日間、症状に応じて1回750mg・1日3回と記載。なおシストに対してメトロニダゾール終了後、パロモマイシン(アメパロモ)1回500mg・1日3回・10日間。
●ランブル鞭毛虫:1回250mg・1日3回・5-7日
●嫌気性菌:1回500mg・1日3-4回
●CD腸炎:IDSAガイドライン2017では、基本的には経口バンコマイシン125mg・1日4回・10日間、フィダキソマイシン200mg・1日2回・10日間。代替薬としてメトロニダゾール500mg・1日3回・10日間が記載されている。
メトロニダゾール脳症
●1980年のケースレポートでメトロニダゾールを750mg・6時間ごと・28日間投与された患者がconfusion、小脳失調、感覚障害を呈し、休薬で改善したものの、完全な症状の軽快まで4か月を要したという症例が紹介された。(Kucers)
●末梢神経障害が、長期間/大量に投与されているケースで見られやすい。感覚障害、autonomicの障害も起こりうる。他にataxia、dysarthria、seizures、意識障害、難聴、耳鳴り、optic neuritis、aseptic meningitis、drowsiness、headache、depression、psychosisなど。(Kucers)
●MRIでは特徴的な画像所見あり。headphone signは両側小脳半球の歯状核と橋背側部分の病変。(Kucers、総合診療2017;27:1101)
●症状出現までの累積投与量は0.25-1110gと様々。血中濃度が治療域でも発症する症例がある。死亡例も報告あり。(Kucers)
●症状出現までの投与量の平均は海外の報告で93 g、日本の報告で95 g。投与期間中央値は海外の報告で54 days、日本の報告で51 days。(総合診療2017;27:1101)
セフェピム
投与法
●max 2g・8時間毎。脳膿瘍、発熱性好中球減少症。
●2g・12時間毎は複雑/重症腹腔内感染症、皮膚軟部組織感染症、重症尿路感染症など。
●肺炎では1-2g・12時間毎が多い。
●軽症~中等症の尿路感染では0.5-1g 12時間毎。
●80%が腎排泄で、腎機能により用量調節が必要。
(総合診療2015;10)
セフェピム脳症
●頻度は使用者の3%(Neuら、1996)。平均5日(1-10日)で出現。Kucersでは「4-14日という報告が多い」。
●腎障害(GFR<15はGFR>30と比較しして脳症発症相対リスク74.5、実臨床ではGFR<60で注意)、高齢、中枢神経疾患既往はリスクになる。高い血中濃度、高い髄液濃度はリスクになるが、閾値を設定するのは難しい。
●初期症状は顔面や四肢のぴくつき。けいれんが多い。非痙攣性癲癇重積(NCSE)をとることも。42例のレビューでは、confusion、temporospatial disorientationが多く、myoclonus、seizuresが続いた。
●診断に脳波が有用。非痙攣性癲癇重積(NCSE)では全般性徐波、代謝性脳症では三相波。
●セフェピム中止2-7日で自然に改善する。透析は有効。
(総合診療2015;10、Kucers)