免疫チェックポイント阻害薬使用中のインフルエンザワクチン(原著)
免疫チェックポイント阻害薬使用中にインフルエンザワクチンを接種しても免疫関連副作用(IRAE)は増えない
(Clin Infect Dis 2020;70:193)
★後方視的で比較研究でもなく質は高くない。
★免疫チェックポイント阻害薬使用中でも、少なくともインフルエンザワクチンは接種しても大丈夫そうという根拠にはなりそう。
背景
●担癌患者はインフルエンザ感染による合併症のリスクが高い。
●最近の研究で、PD-1阻害薬使用中の患者にインフルエンザワクチンを接種したところ免疫関連副作用(IRAE)の頻度が高かった(52%)という報告があった(J Immunother Cancer 2018;6:40)。
●本研究では、免疫チェックポイント阻害薬使用者におけるインフルエンザワクチン接種がIRAEを増加させるのか調査する。
方法
●連続する3シーズン(2014-2015、2015-2016、2016-2017)にインフルエンザワクチンを接種された、免疫チェックポイント阻害薬使用中の進行癌患者を後方視的に調査。
●ニューヨークシティの3次の単施設のデータを使用。
●免疫チェックポイント阻害薬はイピリムマブ、ペムブロリズマブ、ニボルマブ。
●免疫チェックポイント阻害薬使用(any dose)の前後65日以内にインフルエンザワクチンを接種された患者。
●Primary outcomeはインフルエンザワクチン接種後のnew onsetのIRAE。
結果
●対象は370人。肺癌46%、メラノーマ19%など。
●全てのグレードのIRAEは75人(20%)に発症。グレード3-4のみでは8%だった。グレード5はなし。
●新規に抗PD-1薬(ペムブロリズマブ、ニボルマブ)を投与された170人で見ると、全グレードでは18%、グレード3-4では7.6%だった。
?IRAEの発症時期は?
結論
●今回の結果は、過去のIRAEの発症率の報告と変わらないものであった。
●免疫チェックポイント阻害薬使用中の担癌患者にインフルエンザワクチンを接種しても、IRAEは増えないようである。
結核の入院・退院基準、就業制限について
健感発第0907001号 平成19年9月7日(平成26年1月29日一部改正後全文)より
原文をそのまま記載している箇所はその旨明記しています
入院に関する基準
●喀痰塗抹検査が陽性
または、
●喀痰塗抹検査が陰性でも、喀痰・胃液・気管支鏡検体の塗抹・培養・核酸増幅法のいずれかが陽性で、かつ、以下のいずれかの項目にあたる
・(入院が必要と判断される)呼吸器等の症状がある
・外来治療中に排菌量の増加あり
・不規則治療や治療中断による再発あり
筆者注)ややあいまいな基準……
退院に関する基準
●症状(咳、発熱など)が消失している。かつ、異なった日の喀痰の培養が3回連続陰性。
※ただし、「3回目の検査は、核酸増幅法の検査とすることもできる。その場合、核酸増幅法の検査の結果が陽性であっても、その後の培養検査又は核酸増幅法の検査の結果が陰性であった場合、連続して3回の陰性とみなすものとする(原文のまま)」
筆者注)培養陰性を何週間の時点で判断するのか記載はない
筆者注)但し書きの要項を用いることはどのくらいある? 退院が早まる可能性はあるが、毎回毎回PCRを提出するわけではないから……
または、
●以下3項目すべてを満たすとき
・2週間以上の標準的化学療法が実施され、臨床症状が消失している
・2週間以上の治療後の、異なった日の喀痰塗抹又は培養が3回連続陰性。
・患者が疾患・治療の重要性を理解している
筆者注)この要件を適用して退院させることが多いか……
就業制限に関する基準
●喀痰塗抹、培養、核酸増幅法のいずれかが陽性であるときは、就業制限について考慮する。
●治療開始時に入院を要しない状態で就業制限がなされた場合は、
2週間以上の標準的化学療法が実施され治療経過が良好
異なった日に実施した培養または核酸増幅法が2回連続陰性
筆者注)就業制限がかかった状態で外来通院する場合は、就業制限解除のために、毎回喀痰の塗抹とPCRを提出したほうがよさそうだ
メラノーマに対するニボルマブ+イピリムマブ(原著)
進行メラノーマに対するニボルマブ+イピリムマブ:5年生存率
(N Engl J Med 2019;381:1535-46)
CheckMate 067 trial
★ニボルマブ+イピリムマブ群でmedian PFS:not reached、5年生存率は52%。
背景
●進行メラノーマに対するCheckMate 067試験(ニボルマブ+イピリムマブ、ニボルマブ単剤、イピリムマブ単剤の比較)では、ニボルマブ+イピリムマブ、ニボルマブ単剤が、イピリムマブ単剤に比較してresponse rate、PFS、OSが優れていることがすでに示されている(NEJM 2015;373:23、NEJM 2017;377:1345、Lancet Oncol 2018;19:1480)。
●本論文では5年生存率を報告する。
方法
●無治療の進行メラノーマ患者をランダムに以下の通り割付
・ニボルマブ(1 mg/kg)+イピリムマブ(3 mg/kg)3週毎に4回
→ニボルマブ(3 mg/kg)2週毎
・ニボルマブ(3 mg/kg)2週毎+イピリムマブのプラセボ
・イピリムマブ(3 mg/kg)3週毎に4回+ニボルマブのプラセボ
●primary end pointはPFS、OS。
結果
●5年(60ヶ月)の観察においてmedian OS、5年生存率、median PFSは、
ニボルマブ+イピリムマブ:
not reached(more than 60 m)、52%、11.5 m(95%CI 8.7-19.3)
ニボルマブ:36.9 m、44%、6.9 m(95%CI 5.1-10.2)
イピリムマブ:19.9 m、26%、2.9 m(95%CI 2.8-3.2
●新たな副作用報告などはなし
結論
●ニボルマブ+イピリムマブ、ニボルマブ単剤は、イピリムマブ単剤よりも優れている。5年以上フォローしてもこれまでの報告と同様の結果であった。
IPF以外のfibrosing ILDでもニンテダニブは有効(原著)
IPF以外のfibrosing ILDでもニンテダニブは有効
(N Engl J Med 2019;381:1718-27)
INBUILD trial
★IPFではなさそうなILDでも「IPF」の診断名をつけてニンテダニブ(またはピルフェニドン)を投与することがある。
★これまでの試験と同様、52週のFVC低下をend pointとしてニンテダニブの有効性を示す。FVC低下はおよそ-80 mL vs -180 mL/52週。
背景
●ニンテダニブはチロシンキナーゼ阻害薬で、特発性肺線維症、全身性強皮症関連間質性肺疾患において、FVCの低下を和らげる効果が示されている。
●本研究では、progressive fibrosing interstitial lung diseases全般におけるニンテダニブの効果を検討する。
方法
●ランダム化、二重盲検、プラセボ対照、phase 3、15ヶ国。2017年2月~2018年4月。
●18歳以上、physician-diagnosed fibrosing interstitial lung disease。IPFは極力排除。HRCTで肺全体の10%以上に線維化のみられる患者(central review)。詳細はAppendixで。
●悪化傾向のある間質性肺疾患が条件。スクリーニングの過去24ヶ月に、「FVCが相対量で10%の低下」または「5-10%の低下があり、症状or画像の悪化あり」または「FVC低下に関係なく、症状and画像の悪化」。ニンテダニブ・ピルフェニドンの使用はなし。
●登録時点で、FVCは予測値の45%以上、DLCOは予測値の30-80%。
●ニンテダニブ150 mg/日・1日2回かプラセボに割付。
●アザチオプリン、シクロスポリン、ミコフェノール酸モフェチル、タクロリムス、リツキシマブ、シクロフォスファミド、20 mg以上の経口ステロイドで治療された患者は除外。
●Primary end pointは52週のFVCの低下。
結果
●663人がランダム化。ニンテダニブ群332人(うち314人が52週の治療完遂)、プラセボ群331人(うち311人が52週の治療完遂)。
●患者全体では、52週のFVC低下はニンテダニブ群では-80.8 mL、プラセボ群では-187.8 mL。差は107.0 mLで有意差あり(95%CI 65.4-148.5 mL)。
●UIP-likeパターン(患者全体の約6割)では、52週のFVC低下はニンテダニブ群では-82.9 mL、プラセボ群では-211.1 mL。差は128.2 mLで有意差あり(95%CI 70.8-185.6 mL)。
●下痢は最もコモンで、ニンテダニブ群で66.9%、プラセボ群では23.9%。ニンテダニブ群では肝障害も多くみられた。
結論
IPF以外のprogressive fibrosing interstitial lung diseasesでも、ニンテダニブ投与によってFVCの低下が和らぐ。
気管支喘息の治療(黒人)(原著)
黒人の小児で吸入ステロイド増量とLABAアドオンは同等
(N Engl J Med 2019;381:1227-39)
BARD trial
★黒人(祖父母の1人以上が黒人)で検討。
★吸入ステロイド増量、LABAアドオンなどいくつかの治療法を1対1で比較するやり方で検討。
★小児では吸入ステロイド増量とLABAアドオンが引き分け。
★12歳以上ではLABAアドオンのほうがよさそう。
背景
●黒人は白人よりも喘息のmorbidityが高いが、喘息治療に関する臨床試験の参加者としては、白人よりも割合が低い。
●これまでの研究では、コントロール不良の喘息では、吸入ステロイドの量を増やすよりも、LABAを併用したほうがよいとするデータが示されているが、人種別のデータは不足している。
方法
●ランダム化、二重盲検の試験2本。1つは小児(5-11歳)、もう1つは青年~成人(12歳以上)。
●参加者は少なくとも祖父母の1人以上が黒人で、吸入ステロイドまたは吸入ステロイド/LABAでコントロールが不良の患者。High-doseステロイド/LABAでコントロール不良の患者は除外。
●Run-in period 2-10週の間にコントロール不良が確認されたらランダム化可能。
小児では、フルチカゾンの初期量は50 µg/回・1日2回
・フルチカゾン100 µg/回・1日2回
・フルチカゾン100 µg+サルメテロール50 µg/回・1日2回
・フルチカゾン250 µg/回・1日2回
・フルチカゾン250 µg+サルメテロール50 µg/回・1日2回
青年~成人では、フルチカゾンの初期量は100 µg・1日2回。
・フルチカゾン100 µg+サルメテロール50 µg/回・1日2回
・フルチカゾン250 µg/回・1日2回
・フルチカゾン250 µg+サルメテロール50 µg/回・1日2回
・フルチカゾン500 µg/回・1日2回
●それぞれの治療を1対1で比較。まず「喘息増悪がない治療が優れている」とする。増悪がなければ「コントロールのよかった日数」を比較。それも同じであれば「14週時点での予測FEV1との比(5%刻み)」を比較。
結果
●小児では、
・FP250 vs FP100/SM50は差なし(46% vs 46%, p=0.99)
●青年~成人では、
・FP250 vs FP100/SM50は差あり(28% vs 49%, p=0.003)
・FP500 vs FP250/SM50は差あり(31% vs 49%, p=0.02)
●アフリカ系祖先、治療開始前のバイオマーカーでは、治療反応の予測できず。
結論
●喘息コントロール不良な黒人の小児では、「吸入ステロイドを増やす」と「LABAのアドオン」のどちらが優れているか直接比較すると、ちょうど半々という結果であった。