血小板機能・抗血小板薬機序(クイズ)
参考:Hospitalist 2019;7(3):431
血小板による止血の機序
・血小板は、血管内皮細胞で産生された●●と、血小板膜上の●●複合体を介して損傷部位に結合する。この結合は弱く、血小板は流速を落として損傷部位を転がるように移動する。*1
・損傷部位に露出した●●と血小板膜上の●●によって、血小板は損傷部位に強く結合する(血小板●●)。*2
・血小板は活性化し、
形態変化:偽足を伸ばしアメーバ状に変わる
細胞内顆粒の放出(●●、●●などが放出)
細胞膜リン脂質からの●●の産生・放出
●●結合部位である●●の構造変化が誘導される
などが起きる。*3
・損傷部位に露出した●●によって凝固因子活性化がトリガー・血小板膜で触媒され、●●が産生される。*4
・活性化した血小板は●●と●●を介して結合する(血小板●●)。血小板血栓が形成され(一次止血)、●●によって血栓が安定する(二次止血)。*5
血小板活性化因子
・血小板活性化因子を4つ挙げよ*6
トロンビン
・凝固カスケードの産物として●●から産生される。血小板膜上の●●(7回膜貫通型・Gタンパク共役型受容体)に結合し、ホスホリパーゼC活性化→イノシトールリン脂質系を介して細胞内●●濃度を上昇させることで血小板を活性化させる。*7
・未承認の*8はPAR-1阻害薬
ADP(アデノシン2リン酸)
・血小板内の顆粒に貯蔵され、血小板が活性化されると分泌される。血小板膜上の●●・●●(7回膜貫通型・Gタンパク共役型受容体)に結合し、カルシウム濃度を上昇させる。*9
・P2Y1はイノシトールリン脂質系を介して細胞内カルシウム濃度上昇。
・P2Y12はアデニル酸シクラーゼ(AC)阻害から●●を低下させ、細胞内カルシウム濃度を上昇させる。*10
・*11はチエノピリジン誘導体で、CYPで活性化されたのちにP2Y12を阻害
・*12は直接P2Y12を阻害する
TXA2
・●●カスケードによって、酵素の●●・●●・●●の働きでリン脂質から生成される。血小板膜上のTXA2受容体(7回膜貫通型・Gタンパク共役型受容体)に結合し、イノシトールリン脂質系を介して細胞内カルシウム濃度を上昇させる。*13
・COXにはCOX-1とCOX-2があるが、血小板に含まれるのはCOX-1のみ。
・*14はCOX-1を阻害する
セロトニン
・ 血小板内の顆粒に貯蔵され、血小板が活性化されると分泌される。血小板膜上の●●(7回膜貫通型・Gタンパク共役型受容体)に結合し、カルシウム濃度を上昇させる。*15
・この受容体の阻害薬が*16
血小板活性化抑制因子
・2つ挙げよ*17
PGI2(プロスタサイクリン)
・血管内皮細胞が産生する。
・血小板膜上のPGI2受容体(7回膜貫通型・Gタンパク共役型受容体)に結合し、アデニル酸シクラーゼ(AC)を介してcAMPを上昇させ、カルシウム濃度を低下させる。
・PGI2誘導体が*18
・cAMPを分解するPDE3の阻害薬が*19
NO
・グアニル酸シクラーゼ(GC)を介してcGMPを上昇させ、カルシウム濃度を低下させる。
・cGMPを分解するPDE5の阻害薬が*20
*1:vWF GP Ib/V/IX
*2:コラーゲン GP VI 粘着
*3:ADP セロトニン TXA2 フィブリノゲン GPIIb・IIIa
*4:組織因子 トロンビン
*5:GP IIb/IIIa フィブリノゲン 凝集 フィブリン
*7:プロトロンビン PAR-1 カルシウムイオン
*8:vorapaxar、atopaxar
*9:P2Y1 P2Y12
*10:cAMP
*11:チクロピジン(パナルジン) クロピドグレル(プラビックス) プラスグレル(エフィエント)
*12:チカグロレル(ブリリンタ)とcangrelor(静注薬;未承認)
*13:アラキドン酸 ホスホリパーゼA COX TX合成酵素
*15:5-HT 2A
*16:サルポグレラート(アンプラーグ)
*17:PGI2 NO
*19:シロスタゾール(プレタール)
*20:ジピリダモール(ペルサンチン)
意識障害の初期対応(Hospitalistより)
意識障害 Hospitalist 2019;7(4):743
●AIOUETIPSは網羅的で有用だが、順番に脈絡がなく、対応に時間がかかり不要な検査が増えることにつながる
●迅速に対応する実践的な考え方を紹介
初期対応
まずABCの評価。外傷であれば頸椎保護。
↓
バイタルチェックと身体診察
静脈路確保と血糖測定⇒血糖値≦70のときは50%ブドウ糖40mLを投与する
↓
「Do DONT」
Dextrose(ブドウ糖)
Oxygen
Naloxon(ナロキソン:麻薬拮抗薬)
Thiamine(ビタミンB1)
「coma cocktail」
フルマゼニル(ベンゾジアゼピン拮抗薬)
栄養異常が疑われる患者には全例にチアミン100 mg(アリナミンなど)を投与する
慢性アルコール中毒、低栄養、妊娠悪阻、肥満術後、吸収障害……
※気道確保するか?
外傷では「切迫するD」があるとき:GCS 8点以下、2点以上急に低下、瞳孔不同・片麻痺・Cushing現象のあるとき
嘔吐しているとき
バイタル
血圧
●低血圧
・敗血症、代謝性疾患、薬物(三環系抗うつ薬・鎮静薬など)
・ショックがあればショックとしての鑑別を進める。心筋梗塞、大動脈解離、肺塞栓など。
●高血圧
・頭蓋内病変かもしれない。sBP 140-149でOR 1.89、170-179でOR 6.09など。
・意識障害が軽く、高血圧があるときは、くも膜下出血と脳出血に注意。
脈拍
●徐脈
・頭蓋内圧亢進によるCushing現象(高血圧、徐脈、徐呼吸)
・外傷があれば神経原性ショックを考慮
●頻脈
・大動脈解離など痛みの強い疾患
・薬剤:抗精神病薬、アンフェタミンなど交感神経作動薬、抗ヒスタミン・抗コリン、セロトニン症候群、アルコール/ベンゾ/麻薬などの離脱症候群、カフェイン中毒
呼吸
徐呼吸
・麻薬、鎮静薬
頻呼吸
・敗血症(qSOFAの1項目)
・ほかにアシドーシスの代償によって生じる:糖尿病性ケトアシドーシス、高浸透圧高血糖症候群、尿毒症など
・Cheyne-Stokes呼吸に注意。無呼吸と漸増・漸減性の呼吸が周期的に繰り返される。脳卒中で頻度が高い。特に広範囲にmass effectを呈する病変など。心不全もありうる。
体温
●高体温
・感染症
・中枢性発熱:くも膜下出血など。中枢神経障害発症から3日以内、神経障害重度、解熱剤効果なし。
●低体温
・寒冷
・感染症
・薬物
病歴
薬剤:空包など
一酸化炭素中毒
発症様式
診察
●嘔吐物
・吐血なら頭蓋内病変+Cushing潰瘍など。
・青色ならフルニトラゼパムやパラコート。
・臭いもチェック。
●体表
・発汗→カフェイン、コカイン、アンフェタミン
・点状出血・紫斑→toxic shock、心内膜炎、髄膜炎菌、肺炎球菌、TTP、血管炎
●意識
・JCS、GCSはばらつきも大きい
・FOURスコア(Ann Neurol 2005;58:585)が考案された(Full Outline of Unresponsiveness):眼の反応、運動、脳幹反射、呼吸でスコアリング。
●瞳孔
・瞳孔径:5 mm以上で散大、2 mm以下は縮瞳、左右差1 mm以上で瞳孔不同。
・対光反射:直接と関節
・眼球運動:共同偏視+逆側の上下肢麻痺→共同偏視と同側のテント上脳病変
運動
血液・尿
●血糖、血液ガス、甲状腺考慮
●肝性脳症における高アンモニア血症の感度は37.5%、特異度66.7%。痙攣後、ウレアーゼ産生菌による尿路感染など。
●尿中薬物スクリーニング(トライエージなど)は有用ではない。あくまで臨床状況から推定する。アセトアミノフェン、サリチル酸、リチウム、抗てんかん薬などでは血中濃度測定検討。
画像
●頭部CT
・片麻痺の逆側の大脳皮質でearly CT signを探す。
●頭部MRI
・以下の疾患ではCTより得意
・脳血管障害(脳梗塞、RCVS、PRES、静脈洞血栓):椎骨脳底動脈系はCTで見にくい
・対光反射、瞳孔不動、呼吸などの脳幹機能異常があるのにCTで異常ないときは考慮。
・炎症(脳炎、血管炎):FLAIR、T2強調で海馬、偏桃体、皮質などに高信号がないか。
髄液
・発熱+意識障害では考慮
・腰椎穿刺では凝固異常、血小板減少がないかチェック。頭部CTが推奨されているのは、痙攣後、重度の免疫抑制、局所神経症状、GCS 10点以下
・髄膜炎であれば、抗菌薬は来院1時間以内に投与するのが目標。1時間遅れるごとに予後不良が30%増える。血液培養の陽性率は50-80%。抗菌薬投与に髄液培養の感度は20%下がる。
脳波
有用なのはNCSE(non-convulsive status epilepticus:非痙攣性てんかん重積状態)
COVID-19の臨床情報(原著)
Presenting Characteristics, Comorbiities, Outcomes Among 5700 Patients Hospitalize With COVID-19 in the New York City Area
JAMA. Published online April 22, 2020.
★米国で初の大規模なケースシリーズ(ニューヨークの5700人)
★やはり男性・高齢者で対象者数・死亡とも多いようだ
背景
●米国で最初のケースは2020年1月31日にワシントン州で報告
●その後ニューヨークで爆発的に増加し、4月20日時点で全米の3分の1の症例が集中している。
方法
●本研究はNorthwell Health(the largest academic health system in New York)の12の病院で行われた。期間は3月1日から4月4日で、PCRでCOVID-19の診断が付き、入院が必要な全ての連続症例がincludeされている。
結果
●5700人が対象となった。
●年齢は中央値63歳、IQR 52-75歳、範囲0-107歳。男性60.3%、女性39.7%。
●基礎疾患
癌 56%
高血圧56%、冠動脈疾患11%、うっ血性心不全6.9%
喘息9%、COPD 5%、閉塞性睡眠時無呼吸2.9%
HIV 0.8%、固形臓器移植後1%
CKD 5%、end-stage 3.5%
肝硬変0.4%
肥満 BMI≧30 41%、BMI≧35 19%、糖尿病33%
never smoker 84%
●バイタル
体温>38℃ 30% median 37.5(IQR, 36.9-38.3)
SpO2 <90% 20%
呼吸数>24 17%
心拍数≧100 43%
●データ median(IQR、範囲)
白血球 7000(5200-9500)
好中球 5300(3700-7700)
リンパ球 880(600-1200)
リンパ球<1000 60%
CRP 13.0(6.4-26.9)
AST 46(31-71)
ALT 33(21-55)
LDH 404(300-551)
フェリチン 798(411-1515)
●重症化・死亡 評価時点で退院済または死亡の2634人
ICU入室 14%
挿管による人工呼吸器 12%
腎代替療法 3%
死亡 21%
40歳未満は5%未満
男女でそれぞれ、
40代8.2%、2.5%、50代12%、6%、60代18%、12%
70代35%、27%、80代60%、48%
人工呼吸器装着者の死亡 88%(282/320人)
死亡退院者の在院日数 4.8(IQR, 2.3-7.4)
●リスクファクター 糖尿病と高血圧について検討
死亡した患者で見ると、糖尿病患者ではICU入室・人工呼吸器装着が多い
死亡した患者で診ると、高血圧患者ではICU入室・人工呼吸器装着が少ない
心原性失神
medicina 2020;57(5):642 「心原性失神を疑う場合」
★まずは失神かどうか評価
★いかにリスクの高い患者を抽出するか。胸痛、心電図でST変化など虚血が疑われる場合は早急にコンサルトを。
●失神とは……
一過性の意識消失によって姿勢が保持できなくなり、自然かつ完全に意識が改善するもの。「脳全体の一過性の低還流」が基本病態で、脳循環が6-8秒途絶し、収縮期血圧が60 mmHg以下となると失神するとされる。
●失神か非失神発作か……
非失神発作には、てんかん、中毒、脳震盪などがある
●失神の原因……
①神経調節性失神
②起立性低血圧による失神
③心原性失神
Soteriadesらの報告(NEJM 2002;347:878)では、心原性失神は失神のうち10%未満だが、死亡リスクは2倍。
●病歴……
失神直前にどんな症状があったか。呼吸困難(感度18%、特異度95%)、胸痛(感度6-19%、特異度95-98%)、動悸(感度13%、特異度93%)など。
家族歴
●身体所見……
心雑音重要。大動脈弁狭窄、肥大型心筋症などによる収縮期雑音。
●心電図
ESC(European Society of Cardioloty)ガイドライン(Eur Heart J 2018;39:1883)で①失神と診断可能なもの、②失神を示唆するものが記載されている。①には虚血、Mobitz IIまたは3度房室ブロック、徐脈(<40)、Brugada、QT延長などがある。
LRINECスコア
★有名なスコアなので知っておくに越したことはない。ライネック、ルリネックなどと読んでいる人がいる。
★「目の前の疑い患者」に有用かどうかは微妙。あくまで病歴、バイタル、身体所見を重視する。除外には使わない。かなり疑わしい患者に対して補助的に使用するのはありだろう。
元文献:
The LRINEC (Laboratory Risk Indicator for Necrotizing Fasciitis) score: A tool for distinguishing necrotizing fasciitis from other soft tissue infections.
Crit Care Med 2004;32(7):1535-1541
PMID 15241098
・development cohortは壊死性筋膜炎necrotizing fasciitisの連続89人と、同時期に入院したsevere cellulitisまたはabscesses患者からランダムに抽出した225人
・validation cohortは別の施設の壊死性筋膜炎の連続56人と、同時期に入院したsevere cellulitisまたはabscesses患者からランダムに抽出した84人
CRP(mg/dL)
<15 0点、≧15 4点
白血球(cells/µL)
<15000 0点、15000-25000 1点、>25000 2点
ヘモグロビン(g/dL)
>13.5 0点、11-13.5 1点、<11 2点
血清Na(mmol/L)
≧135 0点、<135 2点
血清クレアチニン(mg/dL)※元文献ではµmol/Lで表現(カットオフ141)
≦1.6 0点、>1.6 2点
血糖(mg/dL)※元文献ではmmol/Lで表現(カットオフ10)
≦180 0点、>180 1点
Validation cohort Low(≦5点) Moderate(6-7点) High(≧8点)
necrotizing fasciitis 4(7.1) 9(16.1) 43(76.8)
control 77(91.6) 5(6.0) 2(2.4) n(%)
→5点以下と6点以上で分けたときに、陽性的中率92%、陰性的中率96%
問題点:
・CRPのデータが14%で欠けている
・先行する抗菌薬投与の解釈
・壊死性筋膜炎の検査前確立が28%と高い
・後ろ向き研究であり、早期診断や予後改善に役立つかは不明