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COPDの診断と外来での対応―Review

Diagnosis and Outpatient Management of Chronic Obstructive Pulmonary Disease

Review

Riley CM and Sciurba FC. JAMA 2019;321:786-797

 

  • COPDは完全には可逆性ではない気流閉塞に、持続性の呼吸器症状(呼吸困難、咳、喀痰の増加)を伴うものと定義される。米国では75%以上のCOPDがタバコ関連だが、ディーゼル排煙、室内での調理など職業的・環境的な微粒子・気体への暴露も原因となりうる。COPDはheterogeneousな症候群で、innateおよびadaptiveな、毒素、微生物、自己免疫に対するTH1タイプの免疫応答、持続的なTH2の炎症、antiproteaseの不足、その他の気道・肺胞に影響を与えるメカニズムが関連する。
  • 米国では自己申告ベースで6.4%の有病率。同じく自己申告データだが、スパイロメトリーで気流制限を呈する者の多くがCOPDの診断を受けていない。米国では死因の4番目にランクされる。

 

Methods

  • 2013-2018の文献を検索。計2680の文献をスクリーニングし、456の文献をフルテキストでレビュー。本論文では、26の臨床試験、21のメタアナラシス、25の観察研究、18のガイドラインの90文献を引用している。

 

Discussion

Presentation and Diagnostic Evaluation

  • COPDは1つ以上の症状を呈する。患者は活動レベルを抑えて症状が出ないようにすることが多いため、症状は過少申告されやすい。症状評価には、modified Medical Research Council (mMRC) dyspnea scale、COPD assessment test (CAT)が層別化、モニタリングに推奨されている。
  • タバコ、調理などの粒子・ヒューム吸入の病歴を聴取する。米国ではタバコが75%の症例に関与すると言われるが、調理や暖房のための木材・その他燃料の煙(OR 2.3)や、職業的粉塵・化学ヒューム暴露(OR 1.7)が残り25%の、never smokerのCOPDに関与すると言われる。Premature birth、幼児期の重症呼吸器感染症、コントロール不良の喘息は成人になった際の肺機能に影響し、COPDのリスクを12.5倍も上げる。
  • パイロメトリーで気流制限があれば、SABAを吸入し、15分後に再検。十分に改善しないことがCOPDのhallmarkである。GOLDガイドラインでは、FEV1/FVC 0.7を閉塞性障害診断の値としている。高齢者ではオーバーに、若年者ではアンダーに診断されやすい。0.7よりも低い値で「正常下限」を定める考えもあるが、実際にFEV1/FVCが0.7より低いと、死亡やCOPD関連入院が増えると報告あり。
  • 身体所見は、肺過膨張や肺以外の疾患の有無を確認するのに有用。StableなCOPDではwheezesやrhonchiはほぼ聴かれず、聴かれた場合は急性増悪らしい。Ralesは肺線維症や心不全を示唆する。努力呼気の時間が延長する所見も重要。95例のケースシリーズで、努力呼気に6秒以上有する症例は、FEV1/FVCが0.65未満であることについて、感度81%、特異度100%であった。
  • パルスオキシメトリで酸素化チェック。CTは必須ではないが、気管支拡張症や肺線維症が見つかることがある。α1アンチトリプシン欠損のスクリーニングは必要。
  • 低線量CTによる癌のスクリーニングは、全死亡を6.7%、肺癌死亡を20%減らす(55-80歳の30 pack-year以上の喫煙歴のある患者で、現喫煙または15年以内の禁煙、他の疾患で終末期にない患者。CT vs radiographic screeningで、1000人年における肺癌死亡が2.47 vs 3.09)。
  • COPDでは肺癌リスクが高い。X線で気腫のある患者では、年齢・喫煙状況でマッチさせたコントロールと比較し、偶発的に画像で発見された肺結節が肺癌であるRRが3.3倍であった。

 

Prognosis and Risk Stratification

  • 入院を要するCOPD増悪(severe exacerbation)が一回あると、将来のsevere exacerbationのリスクがRR 1.71。死亡リスクはage、dyspnea (mMRC scale)、airflow obstruction (FEV1)のADO indexで予想する。
  • body mass (BMI≦21)、obstruction (FEV1)、dyspnea (mMRC)、exercise (6分間歩行テスト)を利用したBODE indexも有用。

 

Approach to Treatment

  • COPDの治療によって、症状の改善と増悪リスクの減少が可能。治療内容は、症状、増悪リスク、肺機能の重症度による。
  • 行動療法、薬物治療による禁煙は効果的で、毎回の外来でencourageされるべき。毎年のインフルエンザワクチンはCOPD増悪を減らす。肺炎球菌ワクチンは、Centers for Disease Prevention and Control guidelinesでPPSV-23がすべてのCOPD患者とcurrent smokersに対してサポートされている。PCV-13は65歳以上のすべてのCOPD患者、若年でもfrailtyがあるか全身ステロイドを有する患者には推奨されている。

 

Bronchodilators

  • β2アゴニストは気道平滑筋細胞のβ2アドレナリン受容体に結合し、気管支拡張を促し、ciliary beat frequencyを増加させる。ムスカリンアンタゴニストはM1/M3ムスカリン受容体をブロックし、parasympatheticな気管支収縮を抑制し、goblet cellの粘液産生を抑える。内服薬もあるが、吸入薬が効果の面でも副作用の面でも優れている。
  • 短時間作用型β2アゴニスト(SABAs)のalbuterolとlevalbuterolと、短時間作用型ムスカリンアンタゴニスト(SAMA)のipratropiumは、症状やactivity-specific dyspneaの少ない患者にas-neededで用いられることがあるが、増悪の既往がある患者や、持続する症状のある患者では、定期使用は勧められない。週に2-3回以上、SABA/SAMAを使う患者では、長時間作用型の気管支拡張薬を用いるべきである。
  • symptom burdenが重い患者(mMRC≧2、CAT≧10)、増悪既往、FEV1が予測値の60%未満の患者では、長時間作用型気管支拡張薬を用いる。LABAのformoterol、vilanterol、olodaterol、indacaterol、arformoterol、LAMAのtiotropium、umeclidinium、glycopyrrolate、aclidinium、revefenacinは症状スコアを改善させ、増悪リスクを低下させる。
  • LAMAはLABAに対して増悪リスクRRが0.86と、単剤では最も効果的と考えられている。
  • LABA+LAMAの合剤は、単剤と比較し肺機能(80mL)、症状スコア改善(SGRQスコア2.3点低下)、増悪リスク13%低下など効果がある。症状が重い、または増悪リスクがある場合は合剤で開始するのがよいだろう。

 

Inhaled Corticosteroids

  • LABA/LAMAにICSを加えることで、肺機能の改善と増悪リスクの低下が得られる。3つの試験で、増悪リスクRRが0.75 (IMPACT)、0.85 (TRIBUTE)、0.48 (KRONOS)となった。ただしICSを加えると、細菌性肺炎のリスクが1.57倍になる。
  • 血中好酸球値をみると、ICS使用のベネフィットの大きい患者を選択できるかもしれない。上記3つの試験のサブグループ解析でも好酸球が多い(150cells/µLまたはWBCの2%以上)で区切ると、ICSの効果が優位によかった。
  • IMPACT trialでは、ICSを加えた群で、100人年あたり増悪が30減った。血中好酸球が150以上の群では、これが44の減少だったが、150未満群では12の減少だった。一方、肺炎は100人年あたり3.6増えた。
  • LABA/LAMAにICSを加えた場合の後方視的研究で、血中好酸球<100ではICSを加えても症状スコア、FEV1、増悪リスクは改善しなかったが、100以上では改善した。300以上でより改善した。
  • ICSの中止は、ICS開始後少なくとも2年経過し、この間moderateからsevereの増悪を起こしていない患者、もしくはそもそもICS使用が不適当な患者で考える。WISDOM trialでは重度の閉塞性障害(FEV1<予測値の50%)で過去1年に1回以上の増悪を起こしている患者において、3剤継続vs ICS中止群に分けて検討。増悪頻度は両者で有意差なし。Post hoc解析で、ICS中止群において、好酸球2%以上の患者では、それよりも低い患者よりも増悪リスクが22%高かった。この結果は前向き研究のSUNSET trialでも認められた。

 

Variety of Compounds and Devices Within Drug Classes

  • この2 decadesの間に、いくつもの薬理学的なcompoundsやユニークなデリバリーシステムが登場した。異なる製剤についてFEV1を比較したものはあるが、長期でhead-to-headで比較した研究はない。キットの形状、コスト、添加物、患者の希望などによって処方薬を考慮する。ある薬剤・デバイスでコントロールが付かなくても、他のものに変えてうまくいくこともある。
  • アドヒアランスを「正しい手法で」「決められた時刻に吸入できる」回数が全体の80%以上と定義すると、アドヒアランスを守れているのは6%という数値もある。良好なアドヒアランスは治療効果、増悪による入院の減少、サバイバルを改善する。
  • 吸入デバイスはpressurized metered dose inhalers、dry powder inhalers、soft mist inhalersの3つがある。臨床医は、吸入手技のアセスメントとトレーニングを提供する。ウェブによる手技のサポートや専用アプリケーションもある。
  • 定量式は、吸気と薬物の噴出ボタンを押すタイミングを合わせる必要がある。ドライパウダーは吸入気によって薬物が吸い込まれる。ソフトミスとはPMDIよりも作動させるのがless sensitiveだが、より熟練が必要。メタアナラシスでは、PMDIのエラー率が86.8%、ドライパウダーは60.9%。正しい吸入手技をマスターさせるのに、PMDIは8分、ドライパウダーは5分を要した。ドライパウダーはより速い吸入が必要(>40-60 L/min;PMDIは>20 L/min)。

 

酸素療法

  • 酸素療法は難治性の低酸素血症(SpO2 <89% or PaO2 ≦55 mm Hg)を有する患者において、サバイバルを改善させる。右心不全または赤血球増多を伴う患者では、PaO2 59以下でベネフィットがあるかもしれない。運動時のみ低酸素血症を有する患者は、酸素によって労作時呼吸困難が改善しうるが、サバイバルやその他のベネフィットは得られない。睡眠時無呼吸がなく、non-hypercapnicの患者においてisolated nocturnal hypoxemia (SpO2 ≦88が夜間に5分以上)の治療にベネフィットがあるかどうかは不明。