高齢者でもスタチンは有用か―Lancet 2019
「高齢者におけるスタチンの効果と安全性:28のRCTのメタアナラシス」
・75歳超の高齢者でもスタチンを使用したほうがよさそうというデータ。
・スタチンによるLDLコレステロール低下は75歳超の患者においても、major vascular events (冠動脈疾患、冠動脈再灌流、脳卒中)を有意に減らすとのこと。
・心血管疾患既往のある人には有用。既往のない人には微妙。
・重症心不全や透析患者では若年・高齢に関わらず、そもそもLDL低下による効果は乏しい(どうしようもないくらい血管がぼろぼろだから?)
・日本では75歳で高齢者と言われても……という感じ。80歳、85歳でも区切ってほしい。「何歳までスタチンを?」という疑問は依然残る。
Efficacy and safety of statin therapy in older people: a meta-analysis of individual participant data from 28 randomised controlled trials.
Cholesterol Treatment Trialists’ Collaboration
Lancet 2019; 393: 407–15
●過去の筆者らの報告(27件のRCTのメタアナ:Lancet 2015)によれば、スタチンによってLDLコレステロールを1.0 mmol/L (注:約39mg/dL) 下げると、major vascular eventsを約20%減らし、この効果は男女、様々な絶対リスクを有する集団でもほぼ同様にみられた。
●高齢者(75歳以上)ではこのエビデンスを適応してよいか懸念があり、また併存疾患やアドヒアランスの問題などからスタチン治療を受ける割合が減るのが現状。
●高齢者でもスタチンは有効か?
●スタチンによるLDLコレステロール低下の効果をみた28のRCTのメタアナ。今回、major vascular eventsには、major coronary events、coronary revascularization、strokeを含む。55歳、60歳、65歳、70歳、75歳で区切った6つのグループで検討。
●患者背景はTable
●年齢毎の6つのサブグループにおける、LDLコレステロールが1 mmol/L低下したときのmajor vascular eventsのRRはFigure 1
・どの年齢群でもLDLコレステロール低下の効果は有意
・Figure1 Bは心不全・透析患者を抜いたデータ。効果は同じくらい。
●心不全と透析患者における検討はFigure 2
・心不全と透析患者では、75歳以下でも75歳超でもLDL低下の効果なさそう
・心不全と透析がなければ、75歳超でもLDL低下の効果ありそう
●冠動脈疾患、再灌流、脳卒中のリスクと各年齢サブグループ Figure 3
・75歳超でも冠動脈疾患は有意に低下。再灌流、脳卒中のリスクは有意な低下なし。
●vascular diseaseの既往の有無での、LDL低下の効果と各年齢サブグループ Figure 4
・既往なしでは、高齢者(71-75歳、75歳超)ではLDL低下による有意な改善なし
・既往ありでは、高齢者でも有意に改善
●スタチンは比較的高齢な患者でも、有意にmajor vascular eventsを抑制する。
●primary preventionの効果(既往がない患者での効果)は乏しいようだが、全体としてはスタチン使用を支持するエビデンスである。