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CT肺癌検診によって肺癌死亡率は低下するか(原著)

NEJM 2020, January 29

 

★喫煙歴のある男性(50-74歳)は、低線量CTによる肺癌スクリーニングによって肺癌の死亡率が低下する。

★非スクリーニング群とランダム比較し、10年のフォローアップによる肺癌死亡率のrate ratio 0.76。1000人年あたり、肺癌の発見は5.58件 vs 4.91件、肺癌による死亡は2.50件 vs 3.30件。

★CTスクリーニング4回(0、1年後、3年後、5.5年後)、合わせて22600回のCTのうち、「positive」が約2%、癌の診断に至るのが約1%。

 

背景

●肺癌全体では5年生存率は15%。診断時70%が進行癌である。

●米国の研究ではCT検診は単純写真のみの検診と比較して、5-6年のフォローアップ期間における肺癌死亡率を約20%低下させた。

●本研究はオランダ、ベルギーにおける肺癌検診(NELSON trial:population-based、ランダム化比較試験。volume-based, low-dose CTによって10年のフォローアップ期間中に肺癌死亡率が25%低下するという見立てで2000年に開始された試験)の結果の一部である。喫煙者(current/formerとも)を対象としている。

 

方法

●対象は50-74歳。男性13195人(primary analysis)、女性2594人(subgroup)。

●CTスクリーニングをT0(開始時)、1年後、3年後、5年半後に受ける群(それぞれRound 1, 2, 3, 4)と受けない群で比較。

●結節影はコンピューターを用いて半自動的に検出。volumeやvolume-doubling timeから「negative」「indeterminate」「positive」に判定する。

●癌の診断、および死亡に関するデータを収集し、committeeが「肺癌による死亡であったか」を判定。最短10年のフォローアップ期間を全員が完遂した。

 

結果

●男性のみで見ると、CT群6583人、コントロール群6612人。喫煙歴の中央値は38 pack-year。currentが55%、formerが45%。

●CT群では、4回のRound合わせて22600回のCTが施行され(ランダム化された6583人×4=26332回の85%相当)、「positive」となったのは467回(2.1%)。癌の診断に至ったのが203回(0.9%)だった。陽性的中率(癌の診断/「positive」)は43%。

●10年のフォローアップ期間において、肺癌の発生率はCT群5.58件/1000人年、コントロール群4.91件/1000人年。肺癌の死亡率はCT群2.50件/1000人年、コントロール群3.30件/1000人年。

●発見された肺癌:CT群では、CTスクリーニングで発見された肺癌が203件(うちIAが46%、IBが11%、IVが9%など)、スクリーニングと関係なく発見された肺癌が141件(うちIAが7%、IBが7%、IVが51%など)。コントロール群で発見された肺癌は304件で、うちIAが6%、IBが6%、IVが45%など。

●全死亡のうち、肺癌での死亡はCT群で18%、コントロール群で24%で有意差あり(cumulative rate ratioは0.76(95%CI, 0.61-0.94))。ほかの死因を見ると、肺癌以外の癌が36%、33%、心血管疾患が21%、21%など。全死亡は13.9/1000人年、13.7/1000人年(有意差なし)。

 

●女性でみると、死亡に関するrate ratioは0.67(95%CI, 0.38-1.14)。

 

結論

●肺癌リスクの高い集団において、CTスクリーニングは肺癌の死亡率を低下させた。