ウイルスがコントロールされたHIV患者からHIVは伝播しない「U=U」
U=U taking off in 2017
Lancet HIV 2017;4(11):e475
Editorial
●ウイルス学的にコントロールされたHIV感染患者は、性的接触によって他人にHIVを感染させることはないらしい。
●2016年に「the Undetectable=Untranmissable (U=U) slogan」がPrevention Access Campaignから提唱され、2017年にはアメリカCDCもこれにならっている。
●HIV-positive患者と、HIV-negativeのパートナーとの間の伝播に関する3つの大規模な試験が行われている。
HPTN052 interim analysis
(N Engl J Med 2011;365:493)
・9ヶ国、1763のserodiscordantのカップル。54%はアフリカ。患者の50%が男性。
・CD4 350-550の患者を、early群(すぐにART開始)とdelayed群(CD4が2回連続250未満またはHIVに関する症状出現後(AIDS発症など)にART開始)にランダムに分けた。Primary prevention end pointを非患者への伝播、primary clinical end pointを肺結核発症・重症細菌感染症・WHO stage 4 event・死亡のいずれかとした。
・2011年2月時点で、非患者のうち39人がHIV-1に感染していた(発生率1.2/100人年)。このうち28人がパートナー(患者)からの伝播と考えられ(発生率0.9/100人年)、27人がdelayed群、1人がearly群であった。Early群ではclinical end point発生も少なかった(HR 0.59; 95% CI, 0.40-0.88)。
・試験打ち切り。
HPTN052 final results
(N Engl J Med 2016;375:830)
・HPTN052試験の中間解析後に、delayed群でもARTが開始され、2015年まで追跡された。
・非患者のうち計78人がHIV-positiveとなった。このうち遺伝子を解析できた72人において、46人がパートナーからの伝播と考えられ、3人がearly群、43人がdelayed群であった。46人のうち8人はパートナーがARTを開始してからの感染であった。この8人の中で、4人はパートナーのウイルス学的抑制の前に伝播が起きており、4人はパートナーのARTがウイルス学的抑制を達成できなかったカップルであった。
・パートナーからの伝播でなかった26人では、14人がearly群、12人がdelayed群だった。
PARTNER study
(JAMA 2016;316:171)
・前向き観察研究。14ヶ国75施設。HIV患者側はART中で、HIV-1 RNA<200コピー、コンドーム不使用の性交渉を行っていると自己申告したカップル1166組を登録した。888組(548がヘテロ、340がMSM)が1238 couple-years観察された(観察期間中央値1.3年)。
・パートナー以外とのコンドームなしセックスを申告した非患者側はMSMで108人(33%)、ヘテロで21人(4%)。観察期間中、カップルは中央値37回/年のコンドームなしセックスを申告し、MSMカップルで約22000セックス、ヘテロカップルで36000セックスが解析対象となった。
・11人の非患者がHIV-positiveとなったが(10人がMSM、1人はヘテロ;8人はパートナー以外とのコンドームなしセックスを申告)、遺伝子学的にパートナーからの伝播と考えられた例はゼロだった。95%信頼区間の上限は0.30/100 couple-yearsとなった。コンドームなし肛門性交のみで計算すると95%信頼区間の上限は0.71/100 couple-yearsとなった
Opposites Attract study
(2017年国際エイズ学会で報告)
(Lancet HIV 2018;5(8):e438)
・観察コホート研究。オーストラリアの13施設、ブラジルの1施設、タイの1施設からserodiscordantの男性ホモセクシャルカップルをリクルート。試験参加時にカップルには教育が行われた。Viral suppressionはウイルス量が200コピー/mLと定義。自己申告のコンドームなし肛門性交(condomless anal intercourse(CLAI))、dailyのPrEPは行われていない状況での伝播について検討した。
・358組のうち343組が1回以上フォローアップされ、計588.4 couple-years観察された。258人(75%)のHIV患者側で一貫してウイルス量が抑制され、115人(34%)のHIV非患者側がdaily PrEPを行った。258組(75%)がフォローアップ期間中のカップル間でのCLAIを申告し、計16800回CLAIが行われた。
・結果、HIV非患者のうち3人が新たにHIV陽性となったが、遺伝子学的にはリンクしていなかった。CLAIがあり、HIV患者側のウイルス量が抑制され、HIV非患者側でPrEPが行われていなかったもののみ検討すると、計232.2 couple-yearsあり、12447回CLAIが行われた。95%信頼区間の上限は1.59/100 couple-yearsと計算された。