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医師の自学自習のためのブログ

抗結核薬の用量

【抗結核薬の組み合わせの基本的な考え方】

・イソニアジドとリファンピシンは抗結核作用が強力。必ず使用する。イソニアジドやリファンピシンに耐性の結核は治療が困難である。

・ピラジナミドも強力な作用を有する。イソニアジド、リファンピシン(代替薬のリファブチン)、ピラジナミドはfirst line drugs (a) である。

・first line drugs (a)に併用される薬剤がエサンブトールとストレプトマイシンで、これらがfirst line drugs (b) である。

 

・初期治療(最初の2ヶ月)は、①感受性が不明、②菌量が多い。

単剤治療にしないのが重要。感受性が分からない段階で2剤だけ投与すると、うち1剤に耐性だった場合に単剤治療になってしまう。したがって3剤以上が必要。日本では多剤耐性結核(イソニアジド、リファンピシン両方に耐性)はまれ(1%未満)。

②菌量が多いので、強力な抗結核薬を3剤以上使用する。

→初期治療はfirst line drugs (a) 全てとfirst line drugs (b) のうちの1剤、計4剤を使用するのがベスト。つまり、イソニアジド+リファンピシン+ピラジナミド+(エサンブトール or ストレプトマイシン)。

 


以下、頻用する抗結核薬の成人での用量にしぼって記載

参考:結核医療の基準」の改訂―2018年 Kekkaku 2018;93(1):61-68.

https://www.kekkaku.gr.jp/pub/vol93%282018%29/vol93no1p61-68.pdf

 

【メインとなる4剤(INH、RFP、EB、PZA)】

イソニアジド(イスコチン:INH)

100 mg/錠 標準量:5 mg/kg/day(max 300 mg)

※注射薬あり

→300 mg=3錠。体重が極端に軽い場合は200 mg=2錠もありうる。

 

リファンピシン(リファジン:RFP

150 mg/cap 標準量:10 mg/kg/day(max 600 mg)

→450 mg=3 cap、または600 mg=4 cap。50kg前後の人では難しいが3capだとイスコチンやエタンブトールと数が揃うので3capで出すことも。日本ではRFPの用量が少ないとの記載も読んだことがある。本来は4capのほうがいいだろう。

 

エタンブトール(エサンブトール:EB)

250 mg/錠 標準量15(20)mg/kg/day(max 750 (1000) mg)

※初期2ヶ月は20 mg/kg/dayとしてよいが、3ヶ月以降も継続する場合には15 mg/kg/day、最大量750 mgとする。

→750 mg=3錠。体重60kg前後より多い場合は15 mg/kg/dayよりも少なくなるが、原則3錠でいいだろう。

 

ピラジナミド(ピラマイド:PZA)

散剤 標準量25 mg/kg/day(max 1500 mg)

→40kgで1000 mg、50kg前後なら1200 mg、60 kg以上なら1500 mgで。

 


RFPの代替薬となるRBT】

リファブチン(ミコブティン:RBT)

150 mg/cap 標準量5 mg/kg/day(max 300 mg) 788.8円/cap

→300 mg=2 cap。相互作用等からRFPが使えないときの代替薬

※NTM症、HIV患者の播種性MAC症予防にも適応あり(300 mg/day)

※薬価はもちろん高い。リファジン600 mg/dayが約100円(後発品で約50円)。ミコブティン300 mg/dayは約1500円。

 


キノロンとアミノグリコシド

レボフロキサシン(クラビット:LVFX)

500 mg/錠 標準量8 mg/kg/day

※細粒、注射薬あり

→ふつうは500 mg/day。「体重40 kg未満では375 mgとする」。ATSガイドラインでは500-1000 mgとあるため、場合によっては増量して用いる。

※モキシフロキサシン(アベロックス)を用いることもできるが、結核への保険適応はない。なおクラビット結核への適応取得済。

 

ストレプトマイシン(SM)

カナマイシン(KM)

標準量15 mg/kg/day(max 750(1000)mg)

→750 mg/dayを毎日、もしくは1000 mgを週3回

ストレプトマイシン→カナマイシン→エンビオマイシンの順に選択する。なお,カナマイシンと同等の薬剤としてアミカシンがあり結核菌に有効であるが,カナマイシンと完全な交差耐性があり,また結核に対する保険適応はない。カプレオマイシンも結核に有効であるが,日本では販売されていない」(結核医療の基準」の改訂―2018年より引用)

 


【その他に保険適応となっている薬剤】

エチオナミド

エンビオマイシン

パラアミノサリチル酸

サイクロセリン

 

デラマニド(デルティバ:DLM)50 mg/錠 1回100 mg・1日2回 6230円/錠

ベダキリン(サチュロ:BDQ)100 mg/錠 1日1回400 mg 22277.5円/錠