MED INFO

医師の自学自習のためのブログ

結局マスクは付けたほうがいいんですか?

患者さんの質問。

普段なら「予防効果はないと言われてますけどね。風邪引いて咳がこんこん出ているときは、他の人に移さないように付けたらいいと思いますよ。でも喘息とかで咳出る人もいるしね」とでも答えるところですが、一連のコロナ騒動で、

 

★マスクの生産が追い付かない。

★町が住民にマスクを配る。とりあえず妊婦と高齢者優先で。

★どこどこの病院でマスクが盗まれた。

★マスクが高値で転売されている。

★元総理大臣「私はマスクをしないでオリンピック頑張る」

★マスクせずに咳してたら、公共交通機関でトラブルになった。

とかいうニュースを日々見聞きすると、少しは考えたくもなります。

 

まず前置きしたいのは、こういった社会の不安を掻き立てるような状況では、「科学的根拠」は人々の心に響きにくいということ。

「とにかく不安だ不安だ。マスクくらいしなきゃ」

「私はいいけど子供用のマスクは確保したい」

「高かったけど、お店にあるだけマスク買ってきたよ」

などと言っている人に「感染者はマスクをすることで人に移しにくくできるけど、非感染者がマスクをしても予防効果はないんだよ」などとドヤっても無意味です。

ここではあえて「仮に非感染者がマスクをして有用だとしたらどう有用なのか」を考えてみます。科学的根拠のない私見です。

 

あなたは感染者かもしれない

非感染者がと言っておきながらアレですが、まず第一はこれだと思います。

今回のコロナに限らず、多くの呼吸器感染症には不顕性感染や潜伏期があります。無症状にも関わらず病原体を持っていたり、発症する前に数日のタイムラグがあったりする。この期間に他人に病原体をばらまく可能性があります。

今は無症状でも、2日後に発熱していない保証がありますか? という話で、未来のことなど誰にもわからないわけです。「症状のない人」の中に、一定の割合で「感染者」がいるのであれば、全ての「症状のない人」がマスクをするのは理にかなっているようにも思います。

それに「無症状」というのも厄介な表現で、全く喉がいがらっぽくない、全く咳がない、全くだるくない、全く何もない、というのは相当な自信家では。症状は大事です。しかし所詮は自己申告でしかない。

 

湿度を保つ

自分の実家は冬に乾燥しやすい地域で、年末年始などに帰省すると顔も唇も喉もカピカピになります。長時間飛行機に乗るときもそう。それがきっかけで本格的に風邪をひいたりもします。

人間の息というのは湿っているので、マスクをして鼻や口の周りを覆ってあげれば、自分の呼気によって吸う息も多少湿る。湿度を保つことで鼻や喉の粘膜が「いくらか」守られ、病原体の侵入を「いくらか」緩和できるはずです。

 

鼻や口に手を持っていかない

コロナウイルスにしろインフルエンザウイルスにしろ、多くの病原体は空気中をふわふわ飛んで移動するわけではない。

咳やくしゃみによって飛び散ったしぶきの中に病原体がいて、その辺の机やコップやスマホにくっつく。それを触った人がまた別の机やコップやスマホを触る。そうやって移動していって、最終的に人の鼻や口に入った病原体が病気を起こす。飛沫感染接触感染です。

人間は無意識に鼻や口を触ります。それはもうしょうがない。

ではマスクをしていたら? マスクをしっかり付けていれば、触ろうとしてもそこにマスクがあるので鼻や口まで届かないでしょう。万が一手に病原体が付いていても、鼻や口に入ることを「いくらか」防げる。

 

 

さしあたり非感染者(正確には無症状者)がマスクを付けるメリットで思いついたのは上の3つくらいです。ただ単に安心するためとか、周囲の人に配慮していることをアピールするとか、そういうのは省いています。

 

ところでマスクは再利用してもいいのか。自分はいいと思う。マスク表面に病原体が付着していてもいずれ失活するはずで、どういう条件で何時間置いたらいいのかまでは分かりませんが、例えば洗剤で洗う、煮沸する、オートクレーブにかける、とかであれば、大抵の病原体は確実に死ぬでしょう。マスク自体の耐久性は知りませんけど。

病原体は乾燥・高温に弱いので、天日に干す、ドライヤーで乾かす、とかでもいけると思います。

 

 

電車に乗ったりすると、子供に無理やりマスクさせている親がけっこういる。

子供たちは車内の手すりやら扉にぺたぺたぺたぺた触りまくり、マスクは取ったり付けたり取ったり付けたり。何なら素手でお菓子をぼりぼりし、その手でスマホやゲームをピコピコ……お父さんお母さん、大変な道中お察しいたしますが、それ意味ないから! 

ウイルスは空気中ではなく、そこの手すりあたりにいるのですよ。

 

唯一信頼できるのはやはり手洗い/手指消毒です。家に帰ってきたらとかそういうのではなくて、ストイックな絶え間ない手洗い。

何かに触る前に手洗い。何かに触ったら手洗い。何も触ってなくても思い出したら手洗い。食べ物を手でつかむ前には手洗い。お店に入るとき、出るときには手洗い(最近出入口に消毒液を置いているお店が多い!)。

手洗いを十分に徹底した上で、さらにきちんとマスクをすれば、マスクの効果も実は証明できるんじゃないんでしょうか? 病原体のついた手でお菓子ぼりぼりしてたら、どれだけ普段マスクしていても、そりゃ意味ないでしょうよ。