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医師の自学自習のためのブログ

胆管炎・胆嚢炎

Tokyo Guidelines 2018: antimicrobial therapy for acute cholangitis and cholecystitis. (J Hepatobiliary Pancreat Sci 2018;25:3)

 

Q 胆管炎・胆嚢炎で起因菌推定のために提出すべき検体は?

・胆汁を提出すべき。胆嚢炎の場合は胆嚢内胆汁を提出すべき(ただしgrade Iのときを除く)

・胆摘の際に穿孔、気腫、壊死が見られたら胆汁と組織を提出する。

・grade Iの際のルーチンの血培は推奨されない。

 

・急性胆管炎の胆汁培養の陽性率は28-93%。急性胆嚢炎の胆汁or胆嚢培養の陽性率は29-54%。

・急性胆道炎で胆汁から培養された微生物:大腸菌31-44%、クレブシエラ9-20%、Pseudomonas 0.5-19%、Enterobacter 5-9%、Enterococcus 3-34%、Streptococcus 2-10%、Staphylococcus 0%(血培陽性例では3.6%の報告も)、Anaerobes 4-20%

・血培陽性は急性胆管炎で21-71%。grade 1, 2, 3でそれぞれ15.2%、21%、25%。

・胆嚢炎では7.7-15.8%。

・胆道感染+血培陽性の微生物:大腸菌35-62、23、クレブシエラ12-28、16、Pseudomonas 4-14、17、Enterobacter 3、7、Acinetobacter 3、7、Citrobacter 2-6、5、Enterococcus 10-23、20、・・・

・血培採取のメリットは議論の余地がある。軽症患者では不要かもしれない。

 

Q 抗菌薬選択で考慮すべき点は?

・ターゲットとする菌、PK/PD、アンチバイオグラム、抗菌薬使用歴、腎・肝機能、アレルギー歴。

・胆道腸管瘻があるときは嫌気性菌をカバーすべき。

・敗血症のときは1時間以内に抗菌薬を投与する。他の患者でも6時間以内には投与する。

・ドレナージが最も重要

・ESBLが増えている。カルバパネム、PIPC/TAZ、チゲサイクリン、アミカシン、セフタジジム/アビバクタムなどが必要かもしれない。

・grade3では広域カバーも考慮。緑膿菌は20%程度とする報告あるが、血培から1.1-3.1%、胆汁培養から2.5-3.6%とする報告もある。

・腸球菌は重要。grade3ではバンコマイシンがまず必要だろう。VREはダプトマイシンorリネゾリド使う。

・クリンダマイシン耐性のBacteroidesが増えており、他の腹腔内感染症ではもはや推奨されていない。セフォキシチン、セフメタゾール、フロモキセフ、セフペラゾン・スルバクタムはBacteroidesオーケー。

・腸内細菌科細菌の耐性も進んでいる。アンピシリン/スルバクタムは経験的治療としては推奨しない。

・フロオロキノロンは感受性があれば選択肢。βラクタムアレルギーでは有用だろう。

ブドウ球菌の頻度は高くない。黄色ブドウ球菌が培養で認められるのは1%未満。

・歴史的に、胆汁移行性が考慮されてきたが、閉塞が生じると抗菌薬の胆汁への分泌が止まるとされ、あまり意味はないかもしれない。

・耐性菌の割合が10-20%を超えればカバーすべきと考える。多剤耐性のグラム陰性桿菌にはコリスチンを使用することがある。

 

Q 急性胆管炎における適切な治療期間は?

・適切にドレナージされていれば4-7日

 ・多くの試験で短期間の治療が30日死亡や3か月以内の再発を増加させず、入院期間を短縮させると示されている。3日でもよいとする意見もある。

・グラム陽性球菌が血培で認められた場合は最低2週間が必要だろう。胆管炎でIEを併発したのは0.3%(6147人中17人)とのデータがある。

 

Q 急性胆嚢炎における適切な治療期間は?

・grade1,2は周術期のみ。grade3ではドレナージされていれば4-7日

・軽症の胆嚢炎では術後に抗菌薬を投与し続けるメリットは示されていない。

・grade3の胆嚢炎におけるデータは少ない。血培陽性なら長く。

・穿孔など重症の胆嚢炎の際に使用する抗菌薬に関するRCTなど良質なデータはなかった。他の腹腔内感染症を参照して使用する。

 

ドレナージできている胆道感染症では菌血症事例でも5日間の抗菌薬投与で十分ってホント? medicina 2015;52(6):918

・胆嚢炎では中等、重症の場合に感染源コントロール(胆嚢摘出)までの治療として意味がある。(解釈:周囲にも炎症が及んでいるかもしれないから?)

・胆管炎ではグラム陰性桿菌が多い。血培陽性では、陽性球菌なら2週間以上必要だろうが、陰性桿菌ではいらないかもしれない。

・急性胆管炎・胆嚢炎ガイドラインの「適切にドレナージできていれば4-7日」は胆管炎・胆嚢炎についてのエビデンスに基づくものではない。

(解釈:菌種、重症度、患者背景から考えるしかない)

 

急性胆嚢炎重症度判定基準

grade3 下記どれか

 循環不全あり ドパミン≧5γ、ノルアド使用

 意識障害

 呼吸不全 P/F<300

 腎障害 乏尿orCr>2.0

 肝障害 PT-INR>1.5

 血液凝固 血小板<10万

grade2

 白血球>18000

 右季肋部に有痛性腫瘤触知

 症状が72時間以上持続

 局所の強い炎症 壊疽性、周囲膿瘍、腹膜炎、気腫性

grade1

 上記以外