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心房細動患者の禁酒(原著)

N Engl J Med 2020;382:20

 

★ベースが洞調律の心房細動、かつregular drinker(平均飲酒量約16 drinks/week)の患者を禁酒群70人vsコントロール群70人にランダム割付。6ヶ月フォローし心房細動の再発などを比較。

★禁酒群は2 drinks/週、コントロール群は13 drinks/週の飲酒あり。

★心房細動再発は禁酒群53%、コントロール群は73%で有意に減少。

★ちなみに日本酒1合やビール500mLで2 drinks相当。1日1合程度の飲酒でも、心房細動には悪影響がありそうだ。 

 

背景

●観察研究では、アルコール摂取と心房細動、左房拡大、左房線維化、アブレーション後の不整脈再発などとの関連が示されている。

●7-14 drinks/週の摂取でも悪影響が報告されている。

注)1 drink=アルコール約12 g。日本の「1単位」は20 g(≒日本酒1合、ビール500mL)。

●本研究では禁酒による心房細動の二次予防について調査する。

 

方法

●前向き、オープンラベル、ランダム化試験。オーストラリアの6施設。

●18-85歳。週に10 drinks以上を摂取するregular drinker。

●過去に有症状の発作性(paroxysmal:過去6ヶ月に2回以上のエピソード)または永続性(persistent)の心房細動があり、ベースライン時点で洞調律の患者。アブレーションの予定はなく、それまで行われていた治療はそのまま実施される。

●除外:アルコール依存・乱用、精神疾患、心機能悪い(EF<35%)など。

 

●run-in periodにアルコール日記をつけさせ、試験参加の意思を確認。

●1:1で禁酒群(abstinence)かコントロール群に割付。禁酒群では6ヶ月間の完全な禁酒を指示する。アドヒアランスを保つための方策がいくつかあり。コントロール群ではそれまでの飲酒を続けてもらう。

●心リズムはペースメーカー、非植え込みのloop recorder、AliveCor mobile phone applicationなどでモニタリングされる。患者は日に2回、30秒の心電図記録を送信する。アドヒアランスが悪い場合は7日間のホルター心電図を装着するなどする。

●primary end pointは、

 ・心房細動のrecurrence:30秒以上持続する心房細動

 ・6ヶ月間の心房細動burden:心房細動のあるproportion of time(?)

 

結果

●140人がランダム化。85%男性、平均62歳。発作性が約6割。アブレーション後の患者が約3割。抗不整脈薬は6-7割で使用。

●70人が禁酒群。70人がコントロール群。アルコール摂取量は禁酒群で平均16.8 drinks/週→2.1 drinks/週に減少(87.5%の減少)、コントロール群では平均16.4 drinks/週→13.2 drinks/週に減少(19.5%の減少)。

●心房細動のrecurrenceは禁酒群 37人/70人(53%)vs コントロール群 51人/70人(73%)

●心房細動のburdenは禁酒群 0.5%(IQR 0.0-3.0)vs コントロール群 1.2%(IQR 0.0-10.3)

●その他のアウトカム

 ・心房細動による入院:9% vs 20%

 ・体重は6ヶ月で禁酒群vsコントロール:-3.7kg

 ・EHRAの心房細動症状スコアのmoderate/severeの割合:10% vs 32%

●post hoc解析で、1-9 drinks/週、≧10 drinks/週をcomplete abstinenceと比較

 ・1-9 drinks vs 禁酒:HR 2.1

 ・≧10 drinks vs 禁酒:HR 2.3

 

結論

禁酒は心房細動のrecurrenceを減少させる。